ショワルター安定指数(SSI)など

大気の安定判断

CAPEとは、対流有効位置エネルギーConvective Available Potencial Energy)のことで、大気の安定度合いを判断する指標である。この面積が大きいときに大気は不安定であると判断出来る。
実際の状態曲線で作図してみると、交点D(LFC)と交点E(LNB)が存在しない場合がある。交点DとEが存在しなければ、CAPEも存在しないので、大気は安定であると判断できる。


CINとは、対流抑制(Convective inhbition)のことで、大気の安定を示す指標である。CINの面積が大きい状態では、状態曲線が「湿潤断熱線」よりも安定側にあることを意味し、対流活動が起こりにくいことになる。

対流が発生しやすい指標であるCAPEと、対流を抑制する指標であるCINとの関係で、大気の状態を次のように表現する。
ゼロ < CAPE(CAPEが存在する) 潜在不安定
CAPE < CIN 偽潜在不安定
CIN < CAPE 真正潜在不安定
20150103f1
他に関連する用語を覚えておこう。
略号だけでは覚えにくいので、英語の原文を覚えてしまった方が後々楽だと思う。
英語と言っても大したことはない。
・対流=convection
・凝結=condensation
・高度=level
・浮力ゼロ=neutral bouyancy(浮力が中立という意味で)

LCL(交点C)は、持ち上げ凝結高度(Lifted Condensation Level)で、雲が出来始める最も低い高度であり、これより下に雲は出来ない。すなわち雲底高度の目安になる。
飽和点を調べるために、SSI(ショワルター安定指数)の作図などで多用するポイントである。
作図手順は、次の通り。
(1)点A(地上気温)から「乾燥断熱線」に沿って上方に線を引く。
(2)点B(地上の露点温度)から「等飽和混合比線」に沿って上方に線を引く。
(3)点Aと点Bからの交点が点C、すなわちLCLになる。


LFC(交点D)は、自由対流高度(Level of Free Convection)で、この点より上では、浮力を得て上昇する。作図手順は次の通り。
(1)交点Cから「湿潤断熱線」に沿って、上方に線を引く。
(2)この線と状態曲線の交点が点D、すなわちLFCになる。
(3)二つの線が交わらない場合は、LFCが存在しないことになる。(大気が安定している状態を示す)


LNB(交点E)は、浮力ゼロ高度(Level of Neutral bouyancy)で、雲頂の目安となる高度である。これより上層は安定層なので、雲は発生しない。作図手順は次の通り。
(1)交点Dから「湿潤断熱線」に沿って、更に上方に線を引く。交点D(LFC)が存在しなければ交点Eも存在しない。
(2)この線と状態曲線の交点が点E、すなわちLNBになる。
(3)交点が存在しない場合がある。

安定した大気の状態では、LFCもLNBも存在しない例を示しておく。
下の図は、今朝(2013年3月11日9時)の輪島エマグラムだ。
茶色のラインで「乾燥断熱線」を、ピンクのラインで「等飽和混合比線」を描いて、交点であるLCLが860hPa付近であるところまで、作図した。そこから、グリーンの「湿潤断熱線」に沿って線を引いたが、状態曲線とは離れるばかりで交点など出来やしない。大気が安定状態にあることをしめしている例だ。
事実、この日の輪島の天気は降水量ゼロの晴れだった。
20150103f2

SSIの作図手順

SSIとは、ショワルター安定指数(Showalter Stability Index)の略称で、850hPaの大気を500hPaまで持ち上げたときの気温と状態曲線の(現況の)気温を比較して、大気の安定度を知る指標にする。
作図法は次の通り。
20150103f3
図の中の説明を見たとおりで分かると思うが、蛇足の説明をすれば、
(1)850hPaに水平線を引く
(2)気温の点Aから、「乾燥断熱線」に沿って上方に線を引く
(3)露点温度の点Bから「等飽和混合比線」に沿って上方に線を引く
(4)二つの線の交点Cを求める
(5)交点Cから、「湿潤断熱線」に沿って上方に線を引いて、500hPaの温度T’を読み取ってSSIを計算する。


実際の作図では、「湿潤断熱線」に沿って線を引く動作は、しない。
次のように、比例関係で求めてしまう方が楽だし、おそらく正しい結果を得やすいだろう。
20150103f4
(1)通常の手順にしたがって、850hPaの気温と露点温度から、飽和点(点B)を求める。
(2)ここで、点Bが「湿潤断熱線」290K線と300K線の間にあることを確認して、10分割の位置を測定する。
(上の図の例では、10分の4にあるとみなした)
(3)500hPaの高さで、「湿潤断熱線」290K線と300K線の間の10分割の4の位置に印(点H)をマークする。
(4)点Hの気温(-7℃)を読み取りT’とする。
(5)状態曲線の気温T(-3℃)と比較して、SSI=T-T’=-3℃-(-7℃)=+4℃を算出する。

点Bから「湿潤断熱線」に沿って上方に実際に線を引く行為は、各気圧における比例配分点の連続になるはずなので、このように、いきなり500hPaで比例配分しても結果は同じことになる。
ただし、実技試験の作図問題で、「作図に使用した補助線を残せ」との指定があれば、「湿潤断熱線」に沿った線(薄い紫の線で示した)を描く必要がある。

ショワルター安定指数値 予想される気象現象
+3以上 雷雨の可能性は低い
+1~+3 弱い雷雨があるかもしれない激しい雷雨は予想されない
-3~0 激しい雷雨があるかもしれない
-6~ー4 激しい雷雨が予想される
-6以下 猛烈な雷雨が起こる可能性が高い

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