第52回気象予報士試験 実技2 問2

第52回気象予報士試験 実技2 問2(1)

①低気圧の構造に関して

ⓐトラフA と地上の低気圧中⼼との位置関係

図6上に地上の低気圧中心を描くとこうなります。

緯線が斜めになっているので分かりにくいですが、低気圧とトラフを結んだ矢印は、斜めではなく東西方向です。
上下の北緯40°と北緯30°のラインとほぼ平行です。
その距離は、およそ600kmです。

この状態を20字でどう表現するか、国語の問題ですね。
20字と言われると何を書こうかと自由度があり悩むと思いますが、実は使うべき用語が2つ決まっています。
それは『トラフA』と問題文通りの『地上の低気圧中心』です。

すでに12文字が使われますので、追加できる文言は8文字しかありません。
距離情報も準備しましたが、文字数制限のために使う余裕はありません。

そこで北上大の答え
『トラフAは地上の低気圧中心の西側にある。』(20字)
与えられた余裕は、句点を含めてわずか8文字ですから、この程度しか書けません。

模範解答は
トラフAは地上の低気圧中心の西側にある。(20字)

まったく同じでしたね。
これは偶然ではなく、指定用語を使った文字数では、こうなるのが必然なのです。

ⓑ温度移流と鉛直流

この図は、発達中の低気圧の決まりパターンですね。
つまり、低気圧前面で上昇流と暖気移流後面で下降流と寒気移流です。
これを35字でどう表現するか。

ここで考えなければいけないのが、温度移流に『850hPa面の』と、鉛直流に『700hPa面の』という形容詞を入れるべきかどうか。
35字の文字数制限内に入れば入れるべきですが、実際に書いてみましょう。
『850hPa面の温度移流は、低気圧の前面で暖気移流、後面で寒気移流であり、700hPa面の鉛直流は、前面で上昇流、後面で下降流となっている。』(70字)

文字数が多すぎで話になりません。
大幅にカットします。
『温度移流は、低気圧の前面で暖気移流、後面で寒気移流、また鉛直流は前面で上昇流、後面で下降流となっている。』(52字)

こりゃ、字数が多すぎるので、温度移流と鉛直流の括りではなく、主語の括りを低気圧の前面と後面へと構成を変えないとダメですね。

北上大の答え
『低気圧の前面で暖気移流と上昇流、後面では寒気移流と下降流の分布である。』(35字)

模範解答は
『低気圧の進行前面には暖気移流と上昇流、後面には寒気移流と下降流がみられる。』(35字)

『低気圧の前面』は『低気圧の進行前面』としたほうが、ベターなようです。
しかし、まったく国語の問題になってしまいますが、ほぼ近い文章になりました。

ⓒ発達傾向か衰弱傾向か

これは、迷うことなく『発達傾向』です。

②気圧と高度

7日9時の数値は上図より(a)=1004と(c)=5700

8日9時の数値は(b)=996と(d)=(5520+5580)/2=5550

その結果、こうなりました。

③気柱の平均気温

下図のように、気柱の平均気温が高ければ500hPaの高度は高くなり、平均気温が低ければ高度は低くなります。

地上気圧が同じであれば、単純に高度を比較すればよいのですが、地上気圧が異なる場合はその差を補正しなければなりません。

問題文により、地表付近の1hPaは高度差8mに相当すると定義されています。
6日9時、7日9時、8日9時の地上気圧を1000hPa に統一して比較しましょう。

6日9時は、地表気圧が1006hPaなので6hPa相当の重さが加わっているのでその分を差し引いいて1000hPaに換算します。
つまり、5760-(6×8)=5712m

7日9時は、5700-(4×8)=5668m
8日9時は、1000hPaより低値なので逆に加算して1000hPaに補正します。
つまり、5550+(4×8)=5582m

図に描くとこんなイメージですね。

このように、日付の進行と共に層厚が小さくなっているので、気柱の平均気温は低下していると判断できるので、『ア:低下する』を選択することになります。

④トラフの位置

これは難しいですね。
図8上の実線を参考にして、西方向に移動して目安を付けます。
図8上の実線付近に+198の正渦度極大値があります。

図7上の北緯42°・東経119°付近に正渦度の極大値があるので、これを目安に等高度線の湾曲具合を見極めながら、ほぼ同じ等高度線の範囲(5520m~5640m)に線を引いてみました。

模範解答とほとんど同じ位置ですが、模範解答は長さが半分しかありません。
短い理由が分かりません。
実際の試験で、模範解答のような短いトラフを描くのは勇気が要りますね。

⑤相当温位線の値

低気圧の中心付近を見ると明瞭な低気圧性循環があります。
循環の中心に赤い星のマークをつけました。

この赤い星に連結する等相当温位集中帯の南縁付近の線を探すと、薄いブルーの着色をした『324K』のラインがはっきりと識別できます。

⑥ステージの変化

トラフとの対応関係の変化

10字ですから、ほとんど文章は書けません。

事象を確認すると、6日9時にはトラフAの東側にあった低気圧が、8日9時にはトラフBの東側に位置していることです。


この流れを文章で表現するなら『低気圧はトラフAの東に位置していたが、トラフBと結びつく。』でしょうか。
でも10字だから、もっと削らないと。

徹底的に削除して『トラフBと結びつく。』(10字)

相当温位分布の変化

う~む、困りました。
何を問われているのか分からない。
問題文をもう一度じっくり見てみよう。

 8⽇9時には,この低気圧は新たな発達のステージに⼊ると予想される。その根拠を,相当温位分布(850hPa ⾯)の変化に着⽬して25 字程度で述べよ。

相当温位分布の概況はこれ。(赤い星は地上低気圧の位置)

何を答えたら良いのかさっぱり分かりません。

『新たな発達のステージに⼊る』ってことは、
・西側のトラフと結びついて、
・東側に暖気移流と上昇流、西側に寒気移流と下降流が形成されて、
十分に条件が整ったことが、これまでの問題で整理されていると思う。

これ以上、何を書かせたいのか分からない。
仕方なく模範解答を見ました。
模範解答
『中心を通る新たな等相当温位線の集中帯が形成される。』(25字)

ふーん、そういうことを答えさせたかったのか。
これって、⑤の設問で答えた内容だよね。
状況は認識していたが、解答文として書けなかった。

第52回気象予報士試験 実技2 問2(2)

①トラフの位置と移動速度

トラフAの進行を追いかけるのですが、7日9時はともかく、8日9時は難題でしたね。

7日9時のトラフAの位置

周辺の状況から判断して、24時間で東経で10°ほど東に進んでいると判断しました。
5700mの高度線が南に湾曲している頂点付近に、+79の正渦度極大値がありますので、ここがトラフAの現在地と判断しました。
7日9時の位置は『東経122°』です。

8日9時のトラフAの位置

これは、ちょー難しい問題ですね。
トラフらしい湾曲もないし、渦度極大値も表示されていないし、問題でなければ、トラフAのは消滅したと判断するところです。

しかし、トラフAの位置を示せというのだから、探しましょう。

上の問題、問2(1)②で調べた低気圧の中心位置の移動や周辺の動きを考慮すると、7日9時から8日9時までの24時間で、大気の動きは東に東経で10°ほど進んだと見られます。

すると、7日9時のトラフAのの位置を122°と答えたのですから、8日9時には、東経132°付近に居るはずです。

また、全体的な大気の動きを考えたときに、トラフBが前方にいるトラフAを追い越すことも考えられせん。
そうすると、トラフBの少し東に位置する東経132°辺りが怪しいのです。

結局、大きく湾曲している5700m高度線の底付近で、正渦度域の中央付近を結んだ位置にラインを引きました。
これが『東経133°』です。

動画解説

実技2 問2(2)①『8日9時のトラフAの位置解析』の動画解説

トラフAの移動速度

6日9時の位置が東経112°、8日9時の位置が東経133°と決まれば、長さを測って48時間で割れば平均速度が計算できます。

北緯30°~北緯40°の距離が定義で決まっていて600海里です。
これを基準として、プリントされた用紙の長さを測ってみたら、トラフAの移動距離は980海里でした。
980NM/48hr=20.4KT

トラフAの6日9時から8日9時までの48時間の平均の移動の速さは『20ノット』です。

②四国付近の低気圧の相当温位場と湿数の場

相当温位場のどのような位置に予想されているか。
傾度に言及して30字で述べよ。

相当温位線集中帯とは傾度が大きいところ、その低温側あるいは西側

330K以上のエリアに着色してみました。
梅雨前線と絡むことでしばしば出てくるのが湿舌ですが、この高相当温位のかたまりを湿舌と呼んで良いのだろうか。

南西から伸びている形は湿舌だろうな。

さて、どう表現すべきか。
ここで使用すべき用語は『850hPa面の相当温位』『傾度』『低気圧の中心』かな。
これで20字だから、あと10字で書ける範囲で表現できるか。

『低気圧の中心は850hPa面の湿舌の西側で相当温位の傾度が大きい部分に位置する。』(40字)

だめだこりゃ。『850hPa面の』を削減する。

北上大の答え
『低気圧の中心は湿舌の西側で相当温位傾度が大きい部分に位置する。』(31字)

模範解答は
『相当温位の尾根の西縁で、相当温位傾度の大きいところ。』(26字)

『相当温位の尾根』って『湿舌』ではダメなのかな、ワカラン。
それにしても『相当温位』って2回も使って言葉の使用効率が悪い解答だな。
悪口を書くと点数が減りそうだから、ここらで止めとこう。

湿数の場

東に湿潤域が広がって、西が乾燥域。
両者の境界で傾度が大きいところに位置していますね。

上の相当温位の場よりも、簡単な構造かも。

北上大の答え
『低気圧の中心は東の湿潤域と西の乾燥域の境界で湿数傾度が大きいところに位置する。』(39字)

う~む、文字数が多すぎるので、どこを削るか。
『低気圧の中心は湿潤域の西端で湿数傾度が大きい部分に位置する。』(30字)
これでどうだろうか。

模範解答は
『東側の湿潤域と西側の乾燥域に挟まれ、湿数傾度の大きいところ。』(30字)

言いたいことはまったく同じだと思うのですが、国語の試験ですね。
『低気圧の中心は』って、主語を省略して良いのかな。

また文句を言ってしまった。
とにかく、模範解答が正解なのですから、これに合わせた思考をすることです。

③四国付近の低気圧のトラフAと暖湿空気との置関係

低気圧の中心が500hPa面のトラフA及び下層の暖湿空気のどのような位置に予想されているかを30字で

上の図の様子をそのまま書いてみる
『500hPa面のトラフAの南東側で、南から流入する暖湿空気塊(湿舌)の西縁付近に予想されている。』(48字)

文字数が多いので一部削除して詰める
北上大の答え
『トラフAの南東側で、南からの暖湿空気塊(湿舌)の西縁付近。』(29字)

模範解答は
『トラフAの進行前面で下層暖湿空気が北に突出するところの西縁。』(30字)

『トラフAの進行前面』は『トラフAの南東側』と同義ですが、点数がもらえるかどうか分かりません。

『下層暖湿空気が北に突出するところ』は『南からの暖湿空気塊(湿舌)』と同じことを言いたいのですが、これも点数がもらえるかは微妙ですね。

やっぱり、これは国語の問題ですね。

解説動画のご案内

実技2 問2(2)①『8日9時のトラフAの位置解析』に解説動画を付けていますが、他にも問1,問2、問3全部の解説動画があります。
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模範解答

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