第46回気象予報士試験 実技2 問1

第46回気象予報士試験 実技2 問1(1)

天気図の穴埋め問題がなくて、通常の問1には見られない難しい問題から始まりましたね。

図2の強風軸の解析ですが、普通は最初に矢羽根を見ると思います。
50ノット以上、100ノット以上、150ノット以上で色分けしてみました。

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慣れた人ならこの図からある程度の判断ができるのでしょうが、慣れていないとなかなか難しいです。

この図には、矢羽根以外にも風の情報が表現されています。
それが、等速度線です。

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この色の分布を見ると、周辺とは明らかに異なって鋭角に目立つところがあります。

この等速度線を地形図の等高線に見立てて、山の絵を描いてみると添付図のようなイメージになります。
稜線が裏側にあると描きにくいので、北極側から見た図にしました。
また、わたしの絵画的技量の問題で湾曲した稜線が描けないので直線にしましたが、実際はカーブしているので想像してください。

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8520m付近と9120m付近に尾根があるので、それぞれを2本の強風軸とします。

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赤い点線で囲んだところです。
周辺よりも風速が大きい領域ですから、強風軸の基本になります。

強風軸は等高度線に沿うことが多いので、これを目安に線を引いてみると、こんなラインが描けました。

j46k2q01z02

南側の東西のラインは、課題の低気圧には関係ないので、強風軸に最も近い等高度線の値は「8520」mになります。

これに、地上低気圧の中心と前線位置を重ねるとこうなります。

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「3種類の前線および閉塞点と300hPa面の強風軸との位置関係を50字で述べよ」
と言う問題ですが、恥ずかしながら、わたしは何を書いたら良いのか見当がつきませんでした。

ただ、閉塞点を決める目安として、上空の強風軸との交点を決めることは知っていたので、それを書くのかなとは思いました。

しかし、3種類の前線との位置関係はどう表現するのだろう。

強風軸との位置関係だから、

  • 「内側と外側」・・・強風軸が円弧とは言っていないし
  • 「北西側と南東側」・・・強風軸は線状なので北西側ってどこだぁ?ってことになるな。
  • 「極側と赤道側」・・・ぼやっとしているなぁ。
  • 「北側と南側」・・・温暖前線は、南東側に見えてしまう。
  • 「高緯度側と低緯度側」・・・これかな。

これで書いてみた
「閉塞点は強風軸と重なり、閉塞前線は強風軸より高緯度側、寒冷前線と温暖前線は強風軸の低緯度側にある。」(49字)

模範解答は
「閉塞前線は強風軸の北側、温暖前線と寒冷前線は強風軸の南側にあり、閉塞点付近を強風軸が通っている。」(48字)

なあんだ、北側、南側でよかったんだ。

第46回気象予報士試験 実技2 問1(2)

正渦度移流ということもあまり試験に出たことがありません。

結構、難しい概念ですね。
正渦度の移流とは、正渦度の移動ではありません。

渦度が強まる方向のことです。
例えば、+50⇒+70、ゼロ⇒プラス、-20⇒-10などで、必ずしも現在が正渦度領域にあるとは限りません。

試験テクニック的に言ってしまえば、正渦度領域の南縁に沿って吹く強風軸に乗って移動します。

正渦度領域の南縁に凹凸があれば平滑化して、また付近の等高度線も参考にしてラインを引きます。

この問題について図示すれば、こんな感じになります。

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図の書き方によって、北でも良いような気もするのですが、あえて16方位と指定されているので「北北西」かなと思います。

案の定、模範解答は「北北西」でしたが、難しい問題でした。

第46回気象予報士試験 実技2 問1(3)

図1には閉塞前線が描かれていますから、ア:発生期やイ:発達期ではありません

ウ:最盛期かエ:衰退期のどちらかの判断になります。

衰退期となれば次のような現象が観察されます。

  • 中心気圧が高まる
  • 閉塞前線が長く伸びる
  • 寒気の侵入によりとドライスロットが形成される
  • 北側から暖気の回り込みが強く、最後は周辺から切り離された暖域ができる
  • 最盛期なら気圧の谷の軸がが西~鉛直

などです。

各項目について確認してみましょう。

  • 中心気圧については、初期時刻(図1)で990hPaから、12時間後(図5)で992hPaに高まっているので、発生期や発達期ではなさそう。
    6時間前あるいは12時間前の気圧は分かりません。
    ⇒判断できず。
  • 閉塞前線の長さは、印象としてはさほど長いとは感じられません。
    衰退期ではなさそう
  • 寒気侵入はまだ不十分で明確なドライスロットは観察されません(図3)
    衰退期ではなさそう
  •  北側からの暖気の回り込みも強くはありません。(図3)
    衰退期ではなさそう
  • 気圧の谷の軸は、やや西に傾いている(図1と図3より)
    まだ衰退期には至っておらず、最盛期の可能性あり

以上の要素を総合的に判断すると「ウ:最盛期」が妥当です。

第46回気象予報士試験 実技2 問1(4)

これは、当温泉の読み違いさえなければ、簡単ですね。

等温線を与えられて、暖気移流か寒気移流かの判断は、等温線をまたいで吹く風が、

高温側から低温側にまたいでいれば暖気移流で

低温側から高温側にまたいでいれば寒気移流です。

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「ア」は、-21℃の線を、-18℃側から-24℃側にまたいでいるので低温側に吹いています。

「イ」は、-27℃から-30℃に、低温側に向かっています。

「ウ」は、-12℃から-18℃、-21℃の低温画に吹いています。

「エ」は、-3℃から-6℃の低温側に吹いています。

以上の4つは、全て高温側から低温側に吹いているので、暖気移流なのです。

しかし「オ」は、0℃線をまたいで、マイナス側からプラス気温側に吹いているので、寒気移流です。

正解は「ア、イ、ウ、エ」です。

低気圧の北~西にある風を暖気移流と答えるのは、勇気が必要です。

だけど、しっかり勉強をして理論に基づいて暖気移流だと判断したら、勇気を持って解答しましょう。

この問題では低気圧が閉塞しているので、暖気が低気圧の東側から北側まで回り込んでいるために、このような現象が発生します。

「あ、この問題はヒッカケだな」
と思えるくらいの余裕があれば、きっと合格できるでしょう。

第46回気象予報士試験 実技2 問1(5)

丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。

やっとここで、定番の穴埋め問題が出てきました。
でも、難しい問題で出鼻をくじかれた恰好なので、単純な穴埋め問題でも、いつもよりも難しく感じるかもしれませんね。

[1]「低」。見た通り「白い」または「明るい」なんて書いてはいけませんよ。
輝度温度の指定があるので、「高い」か「低い」になります。
画像の明るいところは、温度が低いことを表しています。
[2]は逆で「高」ですね。

[3]は難しいですが、図1を見て、文脈から「閉塞」を絞り出して欲しい。

[4]は文脈の流れから自然に「低」と答えられるでしょう。

[5]は細長い形から前線を思い浮かべる程度の洞察力を期待します。
前線だと言われれば「寒冷前線」しかありませんね。

[6]は目をつぶって答えても「積乱雲」です。
どうしてって聞かれたら、前の2行に答えが書いてると言っておきましょう。

[7]は8方位であれば「南東」でしょうね。
時間が9時だから、朝日の当たる方向は「東」なんて決めつけないで、可視画像をしっかり観察してください。

[8]「寒気」です。
特に、[E]に見られる縦縞模様の流れは、冬型の日本海で観察される雪雲です。

[9]「強」です。
雲域[E]の離岸距離が短いことから、強い寒気であることが伺えます。
「大陸の海岸線に近い洋上から生じており」の記述は『離岸距離』を意味しています。

関連項目 ⇒ 離岸距離を眼で見よう

[10]は「縦縞」でも「直線」でも良いような気がしますが、予報士試験で好きな言葉があります。
それが「筋」状の雲なんです。
「縦縞状」や「直線状」で点数がもらえるかどうか定かではありませんが、このような形状は「筋状」と覚えておきましょう。

[11]は8方位だから「西」ですね。
筋状の雲の流れから風向を判断します。
ちなみに、隠岐の位置はここです。

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[12]「鉛直シアー」[13]「収束線」
が正解ですが、わたしはなんと答えたら良いか分かりませんでした。

[12]と[13]は用語選びが、難しいです。

調べてみると、この収束線には名前がついていました。

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)です。
Japan sea Polar air mass Convergence Zone

これが分かりやすいです。 ⇒ 広島気象台の解説

模範解答

j46k2q01ans

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