第49回気象予報士試験 実技1 問3

丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。

第49回気象予報士試験 実技1 問3(1)

500hPaの高層天気図にトラフのラインを描けという問題ですが、等高度線の湾曲が明瞭なので、悩む要素は殆どないでしょう。

悩みがあるとすれば、どこからどこまでの線を描くかですが、図6を参考にするとよいです。

図6のサンプルでは、5160hPaから5400hPaの範囲にラインが描かれています。
ほぼ、これを踏襲すれば良いでしょう。

5400hPaは回答枠の外に外れているので、正渦度の極大値を意識しつつ、等高度線の湾曲部を結べば回答図になります。
(5160と5400の数字は、参考のために記入したものですから、解答用紙に記入してはいけませんよ)

第49回気象予報士試験 実技1 問3(2)

[1]
図7下で850hPaで与えられている条件は、気温と風ですね。
気温については[3]で問われているので、風に注目します。

そもそも、降水領域と風の関係を問われれば、最初に疑うべきは『風の収束』です。
図で確認してみましょう。

日本海中部をほぼ東西に伸びる降水域は、だいたい緑色で示した領域です。
ここで風に着目すると、この領域に対して北寄りの風が流入して、収束していることが分かります。

ですから、解答は『収束域』としましたが、模範解答は『シアーライン(収束帯)』となっていました。

問題文では、『東西に伸びる降水』って書いているから、『収束』にしたって言いたいのだろうけど、それはどうかな。

そもそも、これは日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の解析問題でしょう。
だったら、ちゃんと『収束帯』って書かなくちゃ。

まんざら間違いではないと思うんだけど、配点が1点だから
ALL or NOTHING だよね。
さて、点数がもらえるのでしょうか? ビミョー。

[2]
図7下で700hPaで与えられている条件は、鉛直流だけです。
降水域と鉛直流とくれば『上昇流』しかあリません。

改めて上の図を見るとこの領域の鉛直p速度の破線が混んでいて、-84と-134の極大値が予想されているので、間違いありません。

[3]
850hPaの温度条件は、等温線で与えられています。
上の図で、赤いラインで示した等温線が、降水領域で左に凸にカーブしています。
気温が高い右側(東側)の暖気が押し寄せている恰好なので、気温が『高く』なっています。

[4]
『九州付近とその北から西にかけての海上での降水域』は上の図で水色の領域です。
『下層の強い[4]に伴い』との問題文に対応して、図7下から与えられる情報で下層と言えば850hPaのことです。

850hPaで与えられている気象条件は、気温と風。
水色の領域で、気温と風に着目すると、ほぼ平行に並んだ等温線をまたいで、寒気側から暖気側に風が吹いています。

この状態を『寒気移流』といいます。

[5]
寒気移流に伴って日本海を吹走する寒気が海面で暖められて湿気を含む、冬の日本海で特徴的な気団変質のことを書いています。
その結果大気が『不安定』になるのです。

第49回気象予報士試験 実技1 問3(3)

問題文で求められている項目を整理しましょう。次の3項目ですね。

  • 鉛直p速度の変化(700hPa)
  • 湿数の変化(700hPa)
  • 温度移流の変化(850hPa)

それぞの変化を見てみましょう。

図6下の降水帯は、九州から東シナ海全域に広がっていますので、九州とその西側の海域に注目します。

鉛直p速度の変化(700hPa)

九州付近の鉛直p速度は、負数の上昇流域から正数の下降流域に変化します。

湿数の変化(700hPa)

九州付近の湿数は、3℃以下の湿潤領域から3℃を越える乾燥領域に変化します。

温度移流の変化(850hPa)

九州付近の温度移流は、強い寒気移流から寒気の極大域がある寒気場となり寒気移流は弱まります。

九州付近で12時間後は、-9℃から-18℃の4本の等温線が混み合っており、その等温線をまたいで西北西の強風が吹いており、寒気移流が強いことが分かります。

24時間後は、寒気の極大値が九州北部にあり、寒気移流は弱まります。

解答文

上の3つの情報の変化がつかめたので、これを45文字にまとめれば解答文になります。

  • 鉛直p速度は上昇流から下降流になる。
  • 700hPaの湿数は3℃以下の湿潤域から3℃を超える乾燥域になる。
  • 850hPaの温度移流は強い寒気移流が弱まる。

単純に並べてみると、
『700hPaの鉛直p速度は上昇流域から下降流域に変わり、700hPaの湿数は3℃以下の湿潤域から3℃を超える乾燥域となり、850hPaの温度移流は強い寒気移流が弱まる。』(84字)
文字数が多いので半分くらいに削減しなければなりません。
どこを削減してどれを残すかはセンスの問題か。

『上昇流域から下降流域に変わり、湿潤域から乾燥域となり、温度移流は強い寒気移流が弱まる。』(43字)
こんなもんでどうでしょうか。

模範解答は『700hPaでは下降流の場となって湿数が大きくなり、850hPaの寒気移流は弱まっている。』(45字)

この問題は6点の配点です。
模範解答とは表現が違うけれども、解答の要素はきちんと把握している文章なので0点ということはないと思いますが、何点もらえるかはわかりません。

湿数については、湿潤とか乾燥とか言わずに『大きくなる』としていますが、鉛直p速度は『負から正になる』とは言わずに、『下降流の場』と表現していますね。
ここら辺のセンスは、よく分かりません。

また、文字数が制限されている中で、『700hPa850hPa』(12文字)を残さなければならないのだろうか。問題文で与えられている条件であり自明のことだと思うのだが。

第49回気象予報士試験 実技1 問3(4)

[1]


(ア)の雲域の位置と面積、雲の形状の特徴を50字で書け。
まず、黄海(黄色)と東シナ海(水色)の位置関係確認しておきましょう。

この問題では、何を書かせたいのかを考えてみましょう。
冬の日本海の特徴である気団変質を書かせたいのだろう推測できますよね。
つまり、大陸から流れてきた寒気が日本海上で熱と水蒸気を与えられて対流性の雲をたくさん作る。
お椀の中の味噌汁の図で有名な、ベナール型対流で、最終的にオープンセルを作ります。

そう感じたら、そのような文章を作りましょう。

雲域の位置:大陸から離れている。離岸距離が大きいと言います。
雲域の面積:(イ)より小さい
雲の形状の特徴:ここが最大のポイントなのですが、ベナール型対流でオープンセルの対流雲が成長している様子を書かせたいはずなんです。
(イ)の雲は全体が均質でつぶつぶがありますが、(ア)の雲では、九州に近づくに連れて、オープンセルがはっきりしてきます。

これを50字にまとめみたらこうなりました。
『雲域の位置は離岸距離が大きく面積は小さい。雲の形状は筋状の雲が多いが九州付近ではオープンセルが目立つ。』(52字)

模範解答は『大陸からの離岸距離が大きく、筋状雲の占める面積がすくなく蜂の巣状の雲域が九州の西海上に広がる。』(47字)

『離岸距離』と言えば、大陸からの距離は自明のこととして、文字数の制限のために『大陸からの』を省略しましたが、これがどう判定されるか。

『蜂の巣状の雲』って!
これは『オープンセル』でも良いはずですよ。
おそらく、この文章題も配点が6点なのですが、この回答で何点もらえるでしょうかね。

[2]
24日9時と言えば12時間後です。
問3(3)で、この時間帯は寒気移流が強いことを解析していますネ。

寒気移流が強いときには、離岸距離が小さくなるので、『(イ)』が、該当します、

模範解答

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする