トラフに対応する正渦度極大域の見つけ方

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    • #8155
      yasukun
      ゲスト

      第40回実技1問2(2)①;小さなトラフと対応する低気圧を追跡する設問ですが、「トラフを見つけるためには対応する正渦度極大域を探すと良い」と解説されているのですが、対応しそうな場所の正渦度極大域が沢山あってどれが本命なのか確信が持てません。この場合どのようにしたら良いのでしょうか。お教え下さい。

    • #8159
      古久根 敦
      ゲスト

      yasukunさん,こんばんは.

      トラフ②対応する正渦度極大値の見つけ方,どの正渦度極大値を追跡すればいいのかを判断するのは,非常に難しい場面が多く,いわば職人源の領域と言っても過言ではありません.ただし,気象予報士試験では,判断に迷いそうな状況の場合には必ずヒントが問題に隠されています.

      第40回実技1問2は,気象予報士試験でも珍しい「曖昧なトラフの追跡」になっており,とても難しい問題です.できなくても不安に思う必要はないくらいです.

      さて,この問題の場合においては,問題で「黄海北部から華中にのびるトラフ」という最大のヒントがあり,この付近での正渦度極大値を探してみると,候補として+98と+117が挙がります.このどちらがふさわしいか?

      選択の基準は2つです.
      1.正渦度極大値の大きい方を採用する(なぜならばトラフは気圧の谷であり,谷が深まれば正渦度は大きくなるためです)
      2.1の要因にもなりますが,曲率の大きな所か,もしくは等高度線の間隔が狭い方を採用する(なぜならば曲率が大きく等高度線間隔が狭いほど気圧の谷としては深いからです)

      この基準によって,問題では+117を採用します.

      次に,初期時刻以降(予想図)において,どうやって正渦度極大値を追跡するのか?

      上記の2つの基準に従えばいいのですが,そうはいえないほどにたくさんの正渦度極大値が解析・予想されていると思います.

      そもそも渦度は500hPa面の非発散面において保存される量ですので,南北方向に大きく移動しない限り500hPa面で解析される渦度は移動後もほぼ一定です.
       ※正確には摩擦なし・断熱過程において「絶対渦度」が保存されます(一定です),500hPa天気図の渦度は「相対渦度」ですので,南北方向の緯度が変わらない(惑星渦度が変わらない)ことを条件に500hPa天気図で解析される相対渦度が保存されるます.

      では,渦度はどうやって移動するのでしょうか?

      それは,その渦度が解析されている場所で吹いている風に沿って移動します.500hPa天気図では等高度線が描かれており,500hPaではほぼ等高度線に沿って風は吹く(地衡風)と近似していいので,等高度線に沿って渦度が移動します.

      では,どのくらい渦度が移動するのでしょうか?

      それは,上記の風の強さに従います.事例にもよりますが,寒冷渦のように閉じた等高度線になっていない限り,おおむね50ノットくらいで動きます(これはあくまで気象予報士試験では典型的な事例を扱うことが多く,追跡する渦度周辺に強風軸があることが多く,「おおむね」50ノットと言っているにすぎません).50ノットとは,12時間の間に緯度で10度くらい動くスピードです.

      これを渦度の移動速度として利用します.(この辺りが職人源の領域:等高度線を見ると,このくらい正渦度極大値が移動するだろうということが感じられる)

      以上の正渦度極大値の移動の姿に従って追跡すると,初期時刻以降で追跡している正渦度極大値はどれかの見当がつきやすいと思います.

      気象予報士試験レベルではこれが精一杯と考えてください.試験では時間との勝負ですから.上記以外で判断が求められるような出題であれば,他の受験生も正解できないと思います.心配無用!(^.^)

      (余談:予報士になってからトラフを見つめ直すネタ)
      渦度はトラフ解析として有効な物理量ですが,そもそも渦度は渦の強さを表している量であり,トラフとは無関係のはずです.しかし,トラフがある場合,その曲率によって風の水平シアが生まれており,その風の水平シアが低気圧性曲率にそっていれば正渦度が大きくなります.トラフはそもそも気圧の谷であり,等高度線に表されるように,まさに「谷」です.地図でいえば,くぼんだ場所です.このくぼみが寒気の下降につながってきます.くぼんだ場所を探せば本来トラフ解析できるのです.ただし,くぼみが不明瞭な場合,そのヒントとして渦度に着眼するのです.一方,渦度は風の水平シアがあれば大きくなりますが,それだけではなく,渦軸が傾斜したり,水平移流だけでなく鉛直移流によっても大きくなります.500hPa面天気図などで大きな正渦度を見つけた時,なぜ大きくなっているかに気をつかうと,500hPa面での渦度追跡のみならず,大気を立体的に把握することにつながっていきます.また,正渦度追跡は低気圧(擾乱)の発達もしくは上昇流強化の可能性を知りたいことが目的の一つですが,事例を重ねつつ,理論抜きにした経験だけにおぼれず,貪欲に大気を理解することに努めたいものです.

    • #8160
      若狭
      ゲスト

      古久根様、トラフについての考え、感謝いたします。48回実技1問2も記述された通リに(手引きと前の文章)解答できます。自信をもって。ありがとうございます。これでもやもやがなくなりました。正渦度極大域と低気圧の中心の関係、南側、直下、北側となり、低気圧の推移が判断できます。すばらしい。

    • #8161
      ウルトラゾーン
      ゲスト

      さすが古久根様ですね。
      私も古久根様のような説明ができるように頑張らないと。
      私はいつも最初にイメージから入る事が多いのですが、今、「一般気象学」を読み直していて新たに気づかされる事がたくさんあります。その中で昨日いいフレーズがありました(164ページ)
      「低気圧は巨視的な風の見地から見ると風が反時計回りに回転している渦であり、微視的な渦度の見地から見ると正の渦度がびっしり詰まった地域であり~」とあり、説明に使われている模式図には、西から東へ流れる偏西風(北が低圧)に反時計周りの低気圧(渦)をはめこむと、偏西風が蛇行している気圧配置になる事が描かれています。
      トラフを中心とした等高度線が南に凸の部分には正の渦度がたくさん詰まっており、地上の低気圧との対応で見れば、そのどれもが大なり小なり影響を及ぼしているが、その中で「対応」と問われれば、最も影響力の強い近くてかつ正渦度の大きいところを答える。
      といった認識でよろしいのでしょうか?
      渦度の移動速度も上空の風速がわからない場合は等圧線間隔からだいだいの値を推定できるという事を改めて最近認識(一般知識で勉強してるのに繋がっていなかったものが、少しづつ繋がり出した感じ(^_^;))してけど、試験中計算してる暇はないなぁと思ったり・・・正確さの度合いも天秤にかけて解答しなくてはいけないなと思っているところです。

    • #8176
      門前小僧
      ゲスト

      トラフの解析について盛り上がっているところに便乗させて下さい。
      きょう(1月10日)の午後に発表された「AXFE578 100000UTC」で、
      500hPaトラフは、どう線引きをしたらいいのでしょうか。

      同じ初期時刻を元にした「短期予報解説資料」では、
      「5100m付近に-45℃の寒気を伴うにトラフがあり・・・」と書かれています。

      確かに、その付近にトラフと思しき低気圧性曲率の等高度線が描かれており、
      5100mのN42度・E126度付近に、+130の正渦度極大域があります。
      このすぐ南の5100m線(N49.5度・E125度)が起点になったとして、
      トラフが伸びる方向が2つ考えられると思うのです。

      1つは、起点から南南西方向の伸ばし、
      N31度・E116度付近の+156正渦度極大域直近の5580mラインを目指す方向。

      2つめは、曲率のいちばん南に垂れ下がっている部分、
      N28度・E123度付近の5580mラインを目指す方向。

      つまり、「正渦度極大域」を結ぶラインか、
      「最大曲率」を追うラインか・・・。
      きょうのAXFE578を見て、このトピックがすぐに思い出されたもので。

      自分の考えとしては、
      朝鮮半島付近という位置も考慮すると、
      トラフが比較的、南北に立つ走向になりそうなことも含め、
      「最大曲率」の方向かなとは思うのですが、
      やはり、曲率も「あいまい」な感じで、全く自信はありません。

      実技対策としても、みなさまの御指南を頂ければ幸いです。

    • #8186
      ウルトラゾーン
      ゲスト

      おはようございます。
      私もやっとyasukunさんに追いついたようで、今第40回実技1の問2の答え合わせをしているところです。
      やはり①でつまづいてしまいました。この投稿をすっかり忘れておりました(^_^;)
      これの事だったのか!と今わかった次第です。
      私の場合、この問題を解いたのが12月だったので、ヘンテコな解答をしてまんまと罠にひっかかりお決まりの「トラフが深まりながら東へ移動」などと書いてしまっていました(^_^;)初期時刻と12時間後の正渦度極大値はなんとか把握できたものの、24時間後の正渦度極大値は見失ってしまっていました(それまで12時間で1マス=東へ10°しか移動してなかったものが、いきなり2マス=20°も移動するとは思い至らなかった)
      ただ目安として、同じ等高度線上の延長線を探していけばいいのかな(場合によると思うけど)といった認識です。

      門前小僧さん
      トラフというのは谷なので、実際の山地などの地形として考えると、低気圧が周囲よりも最も高度の低いところで、そこから伸びている同じく周囲よりも高度の低い線=まさに谷。実際の山では谷は一方向だけにあるとは限らず、何方向にも伸びている事もあります。
      なので、一つの正渦度極大値からトラフが2本あってもいいような気もします(理論的に正しいのかどうかわかりませんが)。
      でも試験的には最も大きいところという事で、まずは等高度線の曲率で見つつ、正渦度極大値も確認しておく。といったスタンスかなぁと思っています。
      そういう観点で、私には2つめの「曲率のいちばん南に垂れ下がっている部分、N28度・E123度付近の5580mラインを目指す方向。」が正しいような気がします。
      ただ、この場合、北緯35°付近に負渦度域が横たわっていますので、そこでトラフは一旦切れていると思います。

    • #8191
      門前小僧
      ゲスト

      ウルトラゾーン様

      ありがとうございます。
      やはり素直に「曲率の底」を追うのが王道ですね。
      私もその後、Team SABOTENの動画や、
      古久根さんの復習の手引きとか読み返して、
      いま一度、トラフ追跡を確認しています。
      なかなか、一筋縄では行かないですけれど…。

      本日も、AXFE578を眺めて、
      イメージトレーニングは続けております。

    • #8734
      とうり
      ゲスト

      6月申し込みが近づいてきました。3回目の挑戦、新幹線で博多にて当日行きます。ここで取り上げられた「トラフ」について。例題は40回実技1問2です。古久根様の書かれています「渦度はトラフ解析として有効な物理量ですが,そもそも渦度は渦の強さを表している量であり,トラフとは無関係のはずです.しかし,トラフがある場合,その曲率によって風の水平シアが生まれており,その風の水平シアが低気圧性曲率にそっていれば正渦度が大きくなります」。そこで、500hPaトラフが深まりながら、ということは、風の水平シアが強い(700hPa での西風を確認すればいいいのか)、あるいは正の渦度の大きさが増えることに対応するのか、を指標とすればいいいのですか?それとも他の指標か。浅いトラフは、その逆であるのか。ご教示いただければ幸いです。古久根様、よろしくお願いします。門前小僧様、電球様、yasukun様、ウルトラゾーン様、たっしょ様、よろしくお願いします。

    • #8741
      古久根 敦
      ゲスト

      とうりさん,こんばんは.

      500hPaトラフが深まるとはどういうことを言うのか,まずは確認していきましょう.

      トラフが深まるとは,500hPa等高度線の低気圧性曲率が大きくなるか,もしくは等高度線間隔が狭くなることです.地形図で山に囲まれた谷が深くなるってどういうことなんだろうか?とイメージするといいと思います.

      さて,ここからは実際に紙とペンを用意して,自分で図を描きながら確かめてみましょう(^.^)

      500hPa面にトラフがあります.500hPa面だよとイメージして,等高度線を描いてみて,図としてトラフを作ってみましょう.するとトラフの西側では北西風が吹いていて,東側では南西風が吹いています(500hPa面では地衡風近似が成り立つ,つまり等高度線に沿って風が吹くとします).

      トラフの西側で吹いている北西風と,トラフの東側で吹いている南西風の2つを,南北と東西の2つの方向に分解してみましょう.すると,トラフの東側と西側で東西方向の風は向きも大きさもほとんど変わらないけれど,南北方向の風は向きが逆で大きさが同じになるはずです.これが正渦度を作り出しています.学科一般で習った渦度は,まさにこの水平シアが関係しています.

      では,先に描いたトラフよりももっと大きな曲率をもったトラフを描いてみましょう.等高度線間隔だけは先と同じにしておいてください.

      先に描いたトラフよりももっと南側に尖った等高度線の中にあるトラフを描いたはずです.

      先と同じようにトラフの東側と西側の風を東西方向と南北方向に分解してみましょう.東西方向も南北方向も先と傾向は変わりません.

      しかし,明らかに異なっていることが1つあります.

      南北方向に風を分解した時,トラフが深まる前と後とでは,トラフが深まる時の方が南北方向の風が強くなるはずです.逆に東西方向の風は弱くなるはずです.

      南北方向の風はトラフの東側と西側では向きが逆で,さらにその風は強くなっているわけですから,トラフが深まると水平シアが大きくなるのです.その結果,正渦度が大きくなるのです.

      以上から,トラフが深まるとは,等高度線の尖り具合である曲率が大きくなるということであり,まずは500hPa等高度線に注目して,その曲率の大きさを確認することになります.そして,「その結果として」,曲率が大きくなっていれば水平シアが大きくなり正渦度が大きくなるので,500hPa渦度の正渦度の値が大きくなっていれば,トラフが深まっているのだなと「なんとなく」判断することができます.

      「なんとなく」が重要です.正渦度の値が大きくなっているから,トラフは深まっていると考えるのは早計なのです.500hPa面の風の水平シアが大きくなっていれば,トラフは深まっていると考えるのは正しいです!

      まとめると,
      ・トラフは低気圧性曲率が大きい場所.
      ・トラフが深まるとは,低気圧性曲率が大きくなるか,等高度線間隔が狭くなるということ.地形図の谷をイメージする.
      ・低気圧性曲率が大きくなったり,等高度線間隔が狭くなったりして,トラフの西側と東側との間の風の水平シアが大きくなっていればトラフが深まっていると判断していい.
      ・トラフに対応する正渦度(上の水平シアによって生まれた正渦度)が大きくなっていればトラフが深まっていると判断するのはちょっと待て!

      正渦度の大きさではトラフの深まりは正確には判断できないことの理由(ちょっと待て!の理由)

      トラフが南下するという説明を聞いたことがあるかもしれません.たしかにトラフは南下することがあります.ただ単に南下しただけではトラフが深まるとはいいません.

      トラフが南下すると嫌なことを考えなくてはいけなくなります(^0^;)

      絶対渦度=惑星渦度+相対渦度ということです.

      500hPa天気図に描かれている渦度は相対渦度です.一方,惑星渦度とはどの緯度にいるかが大切な渦度です.低緯度にいれば小さくなり,高緯度にいれば大きくなります.

      トラフの曲率が変わらなかったとしても,南下してしまえば,惑星渦度は小さくなってしまいます.絶対渦度は保存されるとすれば,相対渦度が大きくなります.南下しただけで相対渦度,つまり500hPa天気図に描かれている渦度が大きくなってしまうのです.

      これ以外にも,絶対渦度を大きくする要因がいろいろとあり,500hPa正渦度が大きくなっているからトラフが深まっているんだと判断するのは心許ないのです.

      以上から,トラフが深まっていることを確認するためには,曲率の大きさを重視する.正渦度の大きさはほんの参考程度としておいてください.また,トラフが南下することとトラフが深まることは全く別物です.気象予報士さんの中に,南下しているだけなのにトラフが深まっているなんていうことを言っている方がいらっしゃいますが,間違えないようにしましょう.

      トラフが浅まるとは,曲率が小さくなることを言います.深まりと同じく,正渦度が小さくなるからでは完全には判断できないし,また,北上するから浅まるでは決してないことも同様です.

    • #8742
      とうり
      ゲスト

      古久根様、低気圧性曲率の異なるトラフを書いてみました。そうしますと、「南北方向の風はトラフの東側と西側では向きが逆で,さらにその風は強くなっているわけですから,トラフが深まると水平シアが大きくなるのです.その結果,正渦度が大きくなるのです」ことが理解できました。水平シアの「水平」と「シア」も同時にわかりました。「南下しているだけなのにトラフが深まっている」という間違いを実技の解析で思っていましたが、実際図を書いてみてそうでないとわかりました。古久根様、ありがとうございました。ますます、気象予報が好きになりました。

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