第46回気象予報士試験 実技2 問3(1)
シアラインと等圧線を描く問題です。
等圧線の情報(ヒント)が少ないので、先にシアラインを決めてから、それも気圧の谷を示す情報として利用しながら等圧線を引いたほうが良いと思います。
まずシアラインを決めます。
前問でシアラインのポイントになっていたのが風向、気温、上昇流でした。
風向をヒントにシアラインを描く
図9では風向しか与えられていませんから、これをヒントにします。
シアラインの北側に当たる北~東風をグリーンで、
シアラインの南側になる南~西風をオレンジで示してみました。
矢羽根には長さがありますが基準になるのは先端だけですから、先端に色を付けました。
このグリーンとオレンジの2色の境目にシアラインがあるはずです。
また、問題文で『帯状エコーの北縁に連なっている』と書いているので、こんな線を描いてみました。
一応、この赤い線をシアラインとして作業を進めます。
990hPaの等圧線を描く
与えられている数値情報は極めて少ないですが、ここで最も重要なヒントは992hPaのラインです。
特に、図の右上の角の992の数字が最大のポイントですね。
992hPaの等圧線がオホーツク海に広がっているのか、閉じた範囲を示すのかで判断が大きく異なります。
右上隅に992のラインがあるので、992hPaがひょうたん型の閉じたラインであることが分かります。
天気図に赤い文字で書かれている3桁の数字は、0.1hPa刻みの気圧値です。
例えば891であれば、989.1hPaを意味しています。
この程度のことは、知らなくても天気図をみれば自然に分かりますよね。
この赤い数値を按分して、990hPaが通りそうな点を4点プロットしました。
グリーンの4ポイントを目印にしながら、992hPa のひょうたん型をなぞって990hPaのラインを描いてみました。
988hPaの等圧線を描く
天気図には、877(987.7hPa)と872(987.2hPa)のデータが示されていますから、988hPaのラインを描きます。
877と872を内側にするように、かつシアラインを囲むように、988hPaのラインを描きました。
これが、北上大の解答です。
正解は、下の模範解答をご覧ください。
模範解答と比較してみると
シアラインはくねくねできなかった
シアラインをこれほどくねくねと曲げなければならないのか。
等圧線や等温線などの等値線を描画する場合は、細かい凹凸にこだわらずに、大局的に線を引くことが重要だと認識していたので、模範解答のようにくねくね曲がった線を引くのは難しいですね。
でも、基本的な考え方は間違っていないので、一定の点数はもらえるでしょう。
990hPaの等圧線はまずまずでしょう
情報が極端に少ない中で、描いたこのグリーンのラインは、合格点だと思いますよ。
988hPaの分割は超難題
模範解答との最大の違いは988hPaを2つの閉鎖系に分けられなかったことです。
わたしには到底思いつかなかったことですが、気象業務支援センター発行の「問題と正解」の解説によれば、風向を細かく観察すると下図のようにグリーンの風向とオレンジの風向に囲まれた2つの低気圧性循環が観察されるということです。
したがって、988hPaの等圧線は、この2つの小さな低気圧を表現して、2つの閉じた輪にするのが正解とのことです。
いやぁ~、これは予報士受験者のレベルには難しいでしょう。
仮に風の循環に気がついたとしても、実際の解答用紙に2つの輪を描画するのは、通常の解答では見られない等圧線の形なので、かなり勇気がいる決断になります。
正解した人がいるのだろうかと言うレベルの難問だと思います。
第46回気象予報士試験 実技2 問3(2)
図6中の予想図と図9の実況図のスケールを合わせて並べてみるとこうなります。
実況図のメソスケールの気圧場の特徴を35字で述べよ。
992hPaの等圧線はだいたい似たような感じですが、リッジがやや内陸に入り込んでいるかな。
そもそも、左側の予想図は総観規模なので、細かい凹凸は表現できないんですよね。
だから、こんな小さなリッジを問題にしているとは考えにくいです。
その外側の996hPaは、予想図には現れていないのであまり影響がなさそうです。
988hPaのラインは雰囲気がまるで違いますね。
メソスケールの違いってここかなという気がします。
35字で何を書けばよいのか、何を書かせたいのか、判断に迷いますね。
とにかく書いてみましたが・・・
『予想に対して実況の方が気圧の谷が明確になり集中して細長くなった。』(32字)
模範解答は、
『低気圧の中心が北海道の日本海側とオホーツク海側に分かれている。』(31字)
問3(1)で988hPaの等圧線を2つに分離できなかった時点で、この問題の正解への道は閉ざされたということです。
非常に厳しい問題です。
前問と同様、正解した人がいるのだろうかというレベルの難問です。
第46回気象予報士試験 実技2 問3(3)
丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。
[1]
帯状エコーの北縁の緯度を読み取り、距離(km)に変換してから、3時間で割って速度にします。
下図は、わたしが自分のプリンタ出力から読み取った数字です。
東経141.0°:「19km/h」(正解は「19km/h」)
44.00-43.48=0.52°(正解は「44.00-43.48」)
0.52×111=57.72km
57.72/3=19.24km/h⇒19km/h
これほどピッタリと正解と一致したのは、神がかり的な偶然です。
必ず一定読み取り誤差は生じるものです。
東経140.2°:「23km/h」(正解は「24km/h」)
44.16-43.53=0.63°(正解は「44.16-43.52」)
0.63X111=69.93km
69.93/3=23.31km/h⇒23km/h
こちらは、解答の数値がひとつずれましたが、かなり一致したほうだと思います。
しかし、これは厳しい問題ですね。
緯度を0.01°読み違えると、0.01×111/3=0.37km/hの誤差を生じます。
わたしは、東経140.2°で0.01°読み違えたために、切り上げ切り捨ての関係で1km/hの誤差に拡大されて、解答の数値が違ってしまったのです。
エコーの北縁の位置決めとモノサシの読み取り誤差を合わせて、0.01°(プリント上で0.27mm)のズレが許されないとしたら、確実な正解は困難です。
おそらく、一定の許容範囲を持って採点されるのだろうとは思いますが、実際の待遇がどうなっているのかは分かりません。
[2]
小樽は北緯43.2°、寿都は北緯42.8°が与えられているので、前問の答えを受けて、計算するだけです。
一応図示すると、こんな関係です。
小樽:
31.1kmを時速19キロで走れば、1.64時間=1時間38分かかります。
基準点が26日12時ですから、「13時40分」になります。(北上大の答えです)
正解は「13時50分」です。
正確に計算しているのに、この10分間の誤差の理由が分かりませんでした。
気象業務支援センター発行の「問題と正解」の解説によれば、スタートを寿都と同じ43.45°にしているようです。
小樽と寿都では、エコー北縁の位置が違うと思うのだけれど、なぜそうなっているのか分かりません。
寿都:
81.0kmを時速23キロで走れば、3.52時間=3時間31分かかります。
基準点が26日12時ですから、寿都通過は「15時30分」です。(北上大の答えです)
正解は「15時20分」でした。
これは、前問で、12時のエコー北縁を0.01°間違えて、正解の時速24kmを23kmと間違えているので、当然の誤差ですね。
もし、スタートの緯度が43.52°で、時速24kmだとすると
43.52-42.8=0.72°
0.72×111=79.92km
79.92/24=3時間20分
正解の15時20分が得られます。
しかし、問3(3)[1]のわずか0.01°の読み取り誤差のために、その後を全部台無しにされるのは、どうにも厳しすぎるような気がします。
実は、問題を読み進めて図11上を見ると、寿都の通過時刻が15:20であることが明らかになります。
15:30には通過完了して風向が北風に変化していますから、通過は15:20と判断できます。
時間があれば、目盛を読み直して強引に修正することも可能でしょう。
しかし、この実技2は相当な難問揃いなので、時間が足りないはずです。
通過が15:20だと分かっても、手の打ちようがないでしょうね。
パニックに陥って、答案を全部消してしまったところで時間切れ、などとなれば最悪です。
第46回気象予報士試験 実技2 問3(4)
丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。
[1]
これは単純作業で解答が導かれます。
勘違いさえなければ、全員正解でしょうね。
まず、問題で与えられた南側の風と北側の風の範囲を確認しておきましょう。
この色を、問題の図10で境界付近にマーキングしてみましょう。
はっきりと境界線が見えてきましたね。
高度2km以下で、この境界線を滑らかに結べば出来上がりです。
実際の試験会場で、こんなにバカ丁寧なことをする必要はありませんよ。
風向の差がはっきりしているので、目視確認だけで出来ると思います。
解答はこんな図になるはずです。
ラインが多少曲がっていても、基本的な考え方がしっかりと伝われば大丈夫です。
[2]
図10の方角が確認できれば、即、解答できますね。
前問の問3(3)で、シアラインは南下していることを確認しました。
ですから、図10では時刻が経過すると北側の空気が南側に通過することになります。
つまり、時刻が早い方が南側で、遅い時刻が北側を示す構造です。
図で言うと、左側が北で、右側が南になります。
すると、右側、つまり南側が高いことが一目瞭然なので、正解は「ウ」になります。
これは、全員正解でしょう。
こいつを落とすようでは、合格は無理かも!
第46回気象予報士試験 実技2 問3(5)
丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。
[1]「速」く
[2]「反時計」回り
下図の通り、西端部が東端部より速く、回転方向は反時計回りです。
[3]「北」
下図に示すように北風に変化しています。
[4]「最低値」(正解は「極小」)
下図に示すように、海面気圧は最低値を示すので、北上大の解答は間違いではないのですが、問題文を読み進めると、下から5~6行目に『19時40分に極小となった海面気圧』の表現があるので、これに準じた『極小』がより良いようです。
[5]「上昇」
図11上の気温ライン(赤い線)の15時付近を確認してください。
図は省略します。
[6]「南」(正解は「南南東」)
下図の矢印で示すように、低気圧の進行方向は南南東です。
わたしは、雑に「南」と書いてしまったので原点です。
[7]「スパイラル」(正解は「渦」状)
このエコーの形をなんというのが適切でしょうか。
模範解答では「渦状」としていますが、北上大の「スパイラル状」も悪くないと思います。
他には、「円弧状」「三日月状」なども考えられますが、曲率を持った表現になっていれば、おそらくどれも正解になると思います。
[8]「南西」
上図を確認してください。
[9]「南南西」
図示した通り、風向変化の前は「南南西」の風です。
[10]「4」℃
温度と時間を読み違えなければ、間違うことはないでしょう。
[11]「遅」かった。
下図に示したように、実況は予想よりも南下が「遅かった」ことが分かります。
図7中の予想「北緯37°」は、前問の問2(3)[4]で解答している値です。
この問題は一連の気象情報としてつながっているのです。
図の縮尺が違うので、図12下が南にあるように感じてしまいますが、数値をよく見てください。
図12下(北緯39.2°)が、図7中(北緯37°)よりも北に位置していますから、南下が遅いことになります。