オゾンは赤外線を吸収するのか
KSさん(2013/06/18)
H24年度第2回一般、問1とH7年度第2回一般、問2の解答が矛盾していないかどうかの問い合わせです。
詳細は、大気の構造で、高温域の成因を問うものです。
H24年度第2回一般、問1では「その成因はオゾンによる太陽放射中の「b=紫外線」の吸収である」が正解で、「百万人の天気教室」のP5の中段にも同じ記述があります。
H7年度第2回一般、問2では、正解が誤っている文章となってます。
書籍、気象予報士過去問徹底攻略p20(新星出版社)で解答確認しました。
問2の文章で「オゾンには赤外放射を吸収する・・・」とありますが「赤外放射」は間違いで「紫外線」ではないですか。したがって、二つの選択肢の両方が間違い文章となりませんか。
何か勘違いしておりますでしょうか。
H7年度第2回一般、問2の正解は一つだけなのでしょうか。
結論を先に申し上げれば、オゾンは、紫外線も赤外線も吸収するので、選択肢ではどちらも正解になります。
地上オゾン(対流圏オゾン)が温室効果ガスとして作用することは周知のことですが、地上オゾンの作用に対する気象庁の見解がこの出題当時とは少し変わってきています。
赤外放射の吸収よりも、「大気中でOHラジカル発生源」として温暖化に寄与していることを重視しています。大変古い問題でもあり、このままの形で出題されることはないと思います。
手元にH7年度第2回(通算第5回)問2の問題がありましたので、調べてみました。
(5) オゾンは、主に成層圏に存在して太陽紫外線を吸収し、成層圏の温度形成に重要な役割を果たしている。また、オゾンには赤外放射を吸収する温室効果気体としての働きもある。 |
KSさんが疑問に思っているのは(5)の文章が、「正」ではなく「誤」であろうと言うことですね。
二つの文章に分かれていますが、前半には疑問はありませんね。
後半の、『赤外放射を吸収する温室効果気体としての働き』の表現が間違いではないかと指摘されているのだろうと思います。
「百万人の天気教室」のP3のをご覧ください。
『二酸化炭素と同じように、オゾンには熱を吸収する性質があるため』とあります。
ここで言う『熱』とは、『地球放射による赤外線』を指しているものと解釈できます。
また、『オゾンの大部分は10~50kmの高さにあり』と書いていますが、同じページの図1.1右には、対流圏にも少なからぬ『オゾン分子数』が存在することが示されています。
「百万人の天気教室」にはここまでしか書いていませんが、整理してみましょう。
- (a) オゾンには熱を吸収する性質がある(『熱』とは地球からの赤外放射と推測できる)
- (b) オゾンは対流圏にも存在する(これを『対流圏オゾン』、最近では「地上オゾン」と言います)
- (c) 温室効果ガスを論じるときには、対流圏での作用に注目するべきだ。
これらから「『対流圏オゾン』は温室効果ガスの作用をしているのではないだろうか」と推測できます。
まるで誘導尋問ですが、ここで、『対流圏オゾン(地上オゾン)』に着目してみましょう。
「それ自身が温室効果ガスでもあります、・・・」
これは、気象庁による『地上オゾン』の説明文の一部です。
以上の調査結果により、上記(5)の文章は、「誤」ではなく「正」と判断すべきです。