気温が0℃以下で降水があれば、ほぼ間違いなく雪になりますが、0℃~4℃の間の降水は、「雨」か「雪」かはたまた「みぞれ」か、予想が困難です。
「雨」や「雪」の区分を「降水の型」という表現をしますので、覚えておきましょう。
知らないで「降水の型」と聞くと、「土砂降り型」とか「しとしと型」などと、頓珍漢な答えをしてしまうかもしれません。
雲の中でも氷を作らない「暖かい雨」と呼ばれる、南方の雨は別にして、日本付近の雨の80%以上は雲の中では氷の粒になっています。
細かい氷の粒がそのまま地上まで落ちてくれば、「雪」ですが、途中で溶けてしまえば「雨」が降ります。
問題は、氷の粒が溶けるかどうかの判定ですね。
0℃以下であれば、溶けることはありませんから、「雪」と判定して間違いありません。
逆に、5℃以上であれば、融解して必ず「雨」に変わり、雪が降ることはありません。
では、0℃~4℃はどうなのでしょうか?
日本気象学界機関紙「天気」に掲載された、気象研究所、松尾敬世さんの「雨と雪を分けるもの」の図を見てください。
図の中の色つきの部分は、後の説明のために、わたしが書き込みました。
5℃以上は雨の領域ですが、0℃~4.2℃までは、雪と雨とみぞれの混合領域になっていることが分かります。
ここで、雨と雪の「降水の型」を分けているのは、相対湿度です。
氷の粒が落下してくる途中で、周囲の空気によって暖められて融解して雨になるのですが、粒子の表面から水分が昇華蒸発するさいに、昇華熱(潜熱)を奪っていきます。
空気が乾燥しているときには、昇華蒸発による冷却が強いので氷粒子は融解しにくくなり、雪のまま地上に落下するか、半分溶けてみぞれになります。
そんな様子が、上の図で表現されています。
風呂場のように湿気の多いところでは、皮膚が濡れてびしょ濡れになるというイメージで覚えておきましょう。
興味ある実際の写真を紹介しましょう。
上の図に、 青色の丸数字で書き込んだのは、2013年の2月5日の東京の時刻です。
午前2時:気温7.8℃、湿度55% → 午前3時:気温6.1℃、湿度67% →午前4時:気温4.6℃、湿度76%
という具合に進んでいきます。
図から分かるように、午前5時から14時までは気温が2℃前後まで下がり、そのまま推移したので、雪になってもおかしくないのですが、気温2℃、湿度90%付近で、みぞれの領域に入っています。
実際は、この日の都心はちょっとみぞれが降っただけで、ほぼ雨でした。
しかし、面白い写真があります。
3枚とも、この日の午前中の写真です。
まず、東京タワーと東京都庁の写真です。
両方とも、上のほうが見えませんが、高層階では窓の外では雪が降っていたとの証言がありました。
東京タワーの125mの大展望台と、150mの高さの都庁の二股は見えています。
しかし、東京タワー特別展望台(224m)と、都庁最上部(243m)は雪で隠れています。
この写真から判定すると、雪から雨に変わっているのは、200m付近だろうと推測できます。
計算しやすいように、気温減率を100mで0.5℃とすると、200mなら1℃低下するはずですね。
上の解析グラフで、気温が地上よりも1℃低下したら雪になるという理屈が、実際に目に見える写真です。
もう一つの有名な高層建築物ではどうでしょうか?
東京スカイツリーだって、この通りです。
展望台は350mの高さなので、完全に雪の中だったようです。
仮に、最低気温予報が9℃に対して、実際には8℃だったとしても、あまり苦情は来ないでしょう。
でも、同じく1℃の違いでも雨か雪かは大変な違いです。
東京付近の雪の予想は、大変難しいようです。
これは重要なテーマなので、一般知識、専門知識、実技試験のすべてに渡って出題されています。
では、実際の試験でどんな風に出題されるのか見てみましょう。
「4度以下、湿度が高けりゃびしょ濡れで、乾燥してれば雪が降る。」
新興宗教じゃないけれど、呪文を唱えましょう。
(d)が正しいことに自信がありますよね。そうすると(a)(b)(c)が分からなくても答えが決まります。
(a)(b)(c)の詳しい説明はしませんが、すべて誤りです。過去問研究のページで確認してください。
4択問題では、確信を持てる解答があることによって、他の選択肢が消えてしまうことがしばしばありますから、自信がある知識を増やすことがとても重要です。
「4度以下、湿度が高けりゃびしょ濡れで、乾燥してれば雪が降る。」
と、呪文を唱えれば、自信を持って、(d)が正しいと言えますね。
そうすると、自動的に(a)と(c)が決まってしまうので判断する必要がありません。
(b)の正誤判断だけの問題に簡略化されました。
ここでも、一般知識で書いたことを繰り返します。
4択問題では、確信を持てる解答があることによって、他の選択肢が消えてしまうことがしばしばありますから、自信がある知識を増やすことがとても重要です。
別の機会に動画で解説する予定ですが、(b)の「離岸距離」については分かりますよね。
まさに、本日のメールマガジンの解説文そのままの問題ですね。
このメールをきちんと読んで理解した人なら、答えは分かっていますから、文章力を問われる問題になります。
理解度をきちんと把握するために、まずは、自分で実際に文字数を合わせた文章を書いてから、模範解答を見てください。
解答欄: A:____ B:____ C:____
相対湿度が降水の型に与える影響:___________(20字程度)
理由:_________________(40字程度)
「実技試験は国語の試験」と言われているそうですから、限られた時間の中で、規定の文字数で、正しく表現する力、 これは大事ですよ。
模範解答
気象業務支援センターによる模範解答:
問4(1)〔3点〕 A:雪 B:みぞれ C:雨
(2)〔6点〕 相対湿度が降水の型に与える影響:相対湿度が低いほど雪になりやすい。(17字)
理由:相対湿度が低いほど昇華による雪片表面の冷却効果が大きく,融解しにくくなるため。(39字)
他に、第32回一般問6(d)でも出題されている。