実は、過冷却雲中に生成した氷粒子は水滴の凝結過程による成長と比べるとずっと速く成長することを説明しようとする「語呂合わせ呪文」です。
氷粒子の成長が速い理由は、0℃以下の温度では、氷面に対する飽和水蒸気圧は、水面に対するものより低いことによります。
氷面に対する飽和水蒸気圧が低い(小さい)ということは、過飽和度が大きくて(人口密度が高いので)水蒸気にとっては居心地が悪いわけです。
そこで、氷晶に向かって拡散していき氷晶に直接くっついて(昇華凝結して)氷晶を成長させます。
そんな様子を、水蒸気を主人公にして表現したのが、上の図です。
ここでは、もっと大胆に擬人化してみましょう。
水蒸気は女の子、氷晶は男性、飽和水蒸気圧は抱きしめる力に見立てます。
女の子は、「水もしたたるいい男」が気になっています。
だけど、小さな飽和水蒸気圧でギュッと抱きしめてくれる、「愛する人」に引かれて、その胸に飛び込んでいくのです。
ここで、愛する人とアイス(ICE)をかけていることに気が付いてくださいね。
こんな様子を、表現するとこうなります。
「水もしたたるいい男、それよりも、ギュッと抱きしめてくれる愛する人よ」
ちょっと長くて字余りなので、短縮します。
「水よりも、ギュッと抱きしめ愛する人よ」
すばらしい、ロマンス・ストーリーが出来上がりました。
主人公の女の子(水蒸気)は、小さい飽和水蒸気圧で抱きしめてくれる愛する人(アイス=氷晶)に飛び込んでいくのです。
こうして氷と水蒸気は、水よりも速く成長して、美しい雪の結晶へと変身してゆくのです。
無骨なあられにはなりませんよ。
用語解説
水=水滴、水面、水もしたたるいい男
ギュッと抱きしめ=飽和水蒸気圧が低い(小さい)、過飽和度が高い
愛する人=アイス、氷、氷晶、氷粒
実は、このテーマに関連する問題は非常に出題頻度が高くて、最近の例では、
一般知識の 第33回問5、第34回問5、第35回問2、第36回問4、第37回問5、第38回問4に連続して出題されています。
第39回、第40回には出ていないので、次回には必ず出ると予想しています。
確実に覚えておいてください。
キーワードを並べておきましょう。
過冷却雲中、過飽和、飽和水蒸気圧、氷晶で小さく水面で大きい、氷晶の成長が速い、昇華凝結
第33回一般知識問5です。
(a)は「水」ですね。
(b)は過飽和でギュッと抱きしめるのだから愛する人つまり「氷」です。
ここまでで選択肢[4][5]が消えました。
(c)は氷晶の成長につながる「過冷却雲中から氷晶」ですから[3]が消えました。
(d)は「凍結」しか選べません。
(e)は「あられ」です。
雪片とあられの違いに関する記事を、「みんなの質問箱」に掲載していますので、参照してください。
第36回一般知識問4ですが、氷の方が成長が速いので、(c)の設問が「誤」であることはすぐ分かりますね。
すると、選択肢[1][3][5]が消えてしまいます。
[2][5]だけが残り、 (b)の設問は「誤」に決まってしまうので、(a)だけの正誤問題になります。
(a)は水溶性が大きい方が作用が大きいので「誤」ですから、正解は[5]「誤・誤・誤」となります。
このように、自信がある設問があれば、他の設問が消えてしまうことがあります。
(b)はちょっと難しいのですが、悩む必要がなくなりました。