目次
第53回気象予報士試験 一般知識 問1
正解は④です。
(a)は『誤』
問1の(a)でいきなり難しい問題でしたね。
『対流圏上層では気圧が低いのだから、空気の密度は小さいに決まっているだろう』と、単純な認識でこの問題を『誤』と判断した人がいたかもしれませんね。
結果オーライですが、気温が絡んでいるので理屈はもうちょっと計算を要します。
気体の状態方程式 p=ρRT から ρ=p/RT と表すことが出来ます。
大雑把な計算ですが、水蒸気分圧を無視して
・地表付近(気圧1000hPa 気温27℃)とすると
ρ=1000/300R ρ=3.3/R
・圏界面付近(気圧100hPa 気温-53℃)とすると
ρ=100/220R ρ=0.45/R
7倍も違うことになります。
(Rは定数なので、大小関係の比較には影響しません)
実際の標準大気の密度表をみると
・1000hPaで1.225 kg/m3(気温15.0℃)
・120hPaで0.194 kg/m3(気温-56.5℃)
・103hPaで0.166 kg/m3(気温-56.5℃)
ですから、大小関係の比較としては、それほど外れてはいません。
きちんと計算をすれば、空気の密度が一定でないことが確認できます。
もし仮に
・1000hPaで1.225 kg/m3(気温15.0℃)の密度が一定のまま
・100hPaまで上昇したするとすると
100hPaでの気温は、-243℃になってしまいますが、そんなことはありえません。
(b)は『正』
気圧が500hPaで一定であれば、p=ρRT から気温Tが高ければ、ρが小さいことになります。
熱帯域の方が気温が高いですから、空気の密度が『熱帯域の方が極域よりも小さい傾向がある』は、正しい文章です。
(c)は『誤』
大気下層は気温が高いので飽和水蒸気圧が大きく、ρvも大気下層で大きくなるのは、問題文の前半のとおりです。
しかし、飽和水蒸気圧が高いと言っても30℃で42.4hPaであり、地上の気圧1000hPaに対して極めて小さいので、水蒸気の密度が空気の密度より大きくなることはありません。
第53回気象予報士試験 一般知識 問2
正解は③です。
(a)は『誤』
通常の条件だけを考えると正しいような印象を持ちますが、1000hPaより気圧が高い条件では、温位よりも気温が高くなります。
例えば下のエマグラム(下関)では、地上気温は11℃、地上気圧が約1030hPaです。1000hPaの気温つまり温位は282K(9℃)ですね。
だから、温位よりも気温のほうが高くなった例です。
高気圧条件下では1040hPa 程度は自然界でも実際にあるし、『どのような気圧』を広く解釈して、高気圧室を作ればいくらでも気圧は高められます。
(b)は『正』
含有している水蒸気の潜熱を放出した結果が相当温位になりますから、湿潤空気の温位は相当温位よりも低くなります。
(c)は『正』
乾燥空気が断熱的に上昇するとは、エマグラム上では乾燥断熱線(等温位線)にそって上昇することなので、温位は変わりません。
(d)は『正』
飽和した空気塊が水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとは、エマグラム上では湿潤断熱線に沿って上昇することです。
乾燥断熱線(等温位線)よりも湿潤断熱線の傾きが大きいので、上昇に伴って温位が高くなることになります。
第53回気象予報士試験 一般知識 問3
正解は①です。
(a)は『1月』
中層大気では、夏半球と冬半球と言うように、北極から南極にかけて一方が高温で他方が低温の温度分布になります。
温度風の関係で北半球では高温側を右手に見て地衡風が吹きます。
北半球で西風なので南側が高温領域、つまり南半球が夏半球になります。
と言うことは、7月ではなく1月ですね。
(b)は『高温』
東風の左手側は南極側ですね。
南半球では高温側を左手に見て吹きますから、つまり、南極側ほど高温になります。
(c)は『オゾンの・・・』
高度20〜60kmでは、オゾンによる太陽紫外線の吸収で大気が加熱されます。
夏半球の極域にに向かうほど入射する太陽エネルギーが多く成層圏オゾンによる紫外線吸収に伴う加熱量も大きい。
第53回気象予報士試験 一般知識 問4
正解は②です。
ミー散乱は白い雲、レイリー散乱は青い空と夕焼け。
(a)は『小さい』
レイリー散乱は、電磁波の波長よりも粒子が小さいときに発生します。
これは理屈と言うよりも、知識として覚えていないと分かりませんね。
(b)は『短い』
レイリー散乱の強さは、波長の4乗に反比例します。
だから、波長が短い青色は、波長が長い赤い色よりも散乱が強いのです。
(c)は『空気分子・・・』
ここは、迷わず空気分子です。
雲粒は粒径が大きいのでミー散乱になります。
第53回気象予報士試験 一般知識 問5
正解は⑤です。
『PC<PB<PA』
1、空気の重さが気圧です。
2、暖かい空気は軽い、冷たい空気は重い。
ということは、
3、暖かい空気は気圧が低く、冷たい空気は気圧が高い。
だから、地上から1000mまでの平均気温が高い順に並べれば、気圧が低い順番になるのです。
一目で、地点A(低温)、地点B(中間)、地点C(高温)が分かります。
これを、高温、中間、低温の順番に並べると ⑤『PC<PB<PA』が正解になります。
第53回気象予報士試験 一般知識 問6
正解は⑤です。
(a)は『誤』
一般に化学物質が溶けた水に対する飽和水蒸気圧は純
[一般気象学 第2版補訂版 P84-P85]
(b)は『誤』
違いますね。
最初にエーロゾルの表面が濡れることによって核が形成されて、雲粒に発達します。
純粋な水が先に水滴を作ることはありません。
(c)は『誤』
凝結過程だけでは、1時間程度の急速に雨粒までの大きさには成長できません。
凝結過程で成長した雲粒が落下速度の違いで衝突して成長する『併合過程』で大きな雨粒に成長します。
第53回気象予報士試験 一般知識 問7
正解は③です。
(a)は『正』
地衡風は等圧線に沿って吹くので、等圧線の走向は東西方向になります。
(b)は『誤』
北半球では、コリオリ力は右に曲がる方向に作用しますから、西風の場合は北から南に向かって働きます。
(c)は『誤』
コリオリ力(Co)は、次式で表されます。
Co=fV
・fはコリオリパラメータ
・ Vは地衡風の速度
コリオリパラメータは
f=2Ωsinφです。
・ Ω:地球の角速度
・ φ:緯度
北緯30°をa地点、北緯45°をb地点とすると
・ fa=2Ωsin30°=2(1/2)Ω=Ω
・ fb=2Ωsin45°=2(1/√2)Ω=1.4Ω
水平気圧傾度と空気の密度がそれぞれ等しいとするなら、気圧傾度力は等しくなり、気圧傾度力に対応するコリオリ力も等しくなります。
a地点とb地点のコリオリ力が等しいので
・ faVa=fbVb
ここでfaとfbとを数値に置き換えると
・ ΩVa=1.4ΩVb
両辺をΩで割ってΩを消去すると
・ Va=1.4Vb
となり、a地点(北緯30°)の地衡風がb地点(北緯45°)よりも大きくなるのです。
ですから、北緯30°の風速が小さいとする(c)は『誤』となります。
第53回気象予報士試験 一般知識 問8
正解は①です。
(a)は『マルチセル型』
スーパーセルと言うと、全体が大きな渦を形成する巨大な積乱雲ですが、この図では小さな積乱雲(個々の降水セル)の集合体なので『マルチセル型』です。
(b)は『中層』
降水セル(積乱雲)の大きな流れ方向は、中層の風にながされて決まります。
(c)は『下層』
(b)『中層』とセットになっているので、自動的に『下層』になります。
新しい積乱雲を 発生させる風です。
(e)は『南端』
順番を逆にして(e)から説明したほうが分かりやすいので、(e)『南端』です。
南南東の下層雲と成熟した積乱雲からの寒気が収束して新しい積乱雲が発生するので、発生する場所は南端になります。
(d)は『北端』
(e)の解説の流れから、消滅するのは『北端』になります。
第53回気象予報士試験 一般知識 問9
正解は④です。
『-0.9℃/h』
この問題は、計算は簡単ですが、+/-の符号を間違える可能性がありますね。
風速5m/sは時速にすると、18km/hです。
40km間の気温差が2℃ですから、
気温の時間変化率は、2℃/40km×18km/h=0.9℃/hに決まります。
すると、選択肢は②か④になりますが、どちらでしょうか。
低温側の空気が高温側に移動するので、例えば地点Cに着目すると、気温20℃が約2.2時間後に18℃に低下します。
つまり、気温変化率はマイナスですから、正解は④-0.9℃/hなのです。
第53回気象予報士試験 一般知識 問10
正解は④です。
(a)は『誤』
気象データを見るまでもなく、比熱の大きさを考えたら、大気が蓄積できる熱エネルギーが海洋より大きいはずがありません。
(b)は『誤』
この問題は、データを知らないと答えられないかもしれませんが、常識的に考えて、海面水温と地上気温の格差が10倍の速さで広がるとは考えにくいですよね。
だから、当てずっぽうでも『誤』と答えられると思います。
実際には、
地上気温の上昇率が『0.74℃/100年』に対して、
海面水温の上昇率は『0.55℃/100年』だから
僅かに海面水温の上昇率が低いけれども、1/10ではありません。
(c)は『正』
これは文章通りです。
影響力が大きいのは、グリーンランドや南極の氷床・氷河の融解で、海水の熱膨張も寄与しています。
1961年から2003年にかけては1年あたり1.8±0.5mmの割合で上昇しており、その原因は地球温暖化による海水の熱膨張及び山岳氷河や南極・グリーンランドの氷床の融解であると考えられている。
第53回気象予報士試験 一般知識 問11
正解は③です。
(a)は『6〜8月』
赤道を挟むハドレー循環に着目して、上昇流が北半球にあるかか南半球にあるかを読み取ると、どちらが夏であるかを判断することが出来ます。
図をみると北半球の北緯15°付近が上昇流の中心になっていますから、北半球が夏であると判断できるので、選択肢は『6〜8月』を選ぶのが妥当です。
(b)は『間接循環』
循環Pはフェレル循環です。
低温側で上昇して高温側で下降する『間接循環』になります。
(c)は『負』
点Qは南緯15°の地表面です。
東風の成分を含んだ貿易風が吹いているので、西風成分とすれば『負』になります。
南半球なのでコリオリ力は進行方向に向かって左側に作用するので、赤道方向に向かう風は左方向に曲げられるので、東風の成分が加えられます。
第53回気象予報士試験 一般知識 問12
正解は②です。
気象業務法施行規則 第12条
第十二条の二 法第十七条第一項の規定により許可を受けた者は、予報業務を行つた場合は、事業所ごとに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を二年間保存しなければならない。
(a)は『正』
第12条の2 第1号に『予報事項の内容及び発表の時刻』と明記されています。
(b)は『正』
第12条の2 第2号に『現象の予想を行つた気象予報士の氏名』と明記されています。
(c)は『誤』
気象庁の警報事項の利用者への伝達については、『伝達の状況』だけで、伝達した者の氏名は求めていません。
(d)は『誤』
3年間保存ではありません。
記録の保存期間は2年間と定めています。
第53回気象予報士試験 一般知識 問13
正解は⑤です。
(a)は『誤』
『承認』ではなく『登録』です。
気象業務法第24条の20
第二十四条の二十 気象予報士となる資格を有する者が気象予報士となるには、気象庁長官の登録を受けなければならない。
(b)は『誤』
気象庁長官に届け出るのは気象予報士本人ではなく、予報業務の許可を受けようとする者(気象会社等)です。
気象業務法施行規則第10条
2 前項の申請書には、次に掲げる書類(地震動、火山現象及び津波の予報の業務に係る申請にあつては、第二号に掲げる書類を除く。)を添付しなければならない。
一 事業所ごとの次に掲げる事項に関する予報業務計画書
(中略)
二 事業所ごとに置かれる気象予報士の氏名及び登録番号を記載した書類
(以下略)
(c)は『誤』
気象予報士に行わせなければならない業務は『現象の予想』のみであり、『天気予報の解説』については、何の規定もありません。
気象業務法第19条の3
第十九条の三 第十七条の規定により許可を受けた者は、当該予報業務のうち現象の予想については、気象予報士に行わせなければならない。
第53回気象予報士試験 一般知識 問14
正解は②です。
(a)は『正』
次の条文通りです。
気象業務法第13条
(b)は『正』
次の条文通りです。
気象業務法第13条第2項
(c)は『正』
次の条文通りです。
気象業務法第14条の2
(d)は『誤』
『することができる』ではなく『しなければならない』なので『誤』です。
気象業務法第14条
第53回気象予報士試験 一般知識 問15
正解は②です。
災害対策基本法第54条
(a)は『遅滞なく』
上の条文通りです。
(b)は『警察官』
上の条文通りです。
そもそも、予報士試験に『消防職員』が出題されることはないので、選択肢は②か④に限定されます、
(c)は『地域防災計画』
上の条文通りです。
(d)は『気象庁』
上の条文通りです。
(b)で『警察官』を選択した時点で『気象庁』は決まってしまいますね。
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