第40回 気象予報士試験 実技2 問3(1)
指定された条件の領域を図示すると、下図のグリーンの部分になる。
この領域の南西側の特徴
・地表付近で西~西南西の風
・高度と共に反時計回りに風向が変化しているので寒気移流
・相当温位は低い
この領域の北東側の特徴
・地表の風は南よりである
・高度による風向変化が少ないので温度移流は弱い
・相当温位は高い
南西側で寒気移流が見られるし相当温位が低いので、南西側が寒域で、北東側が暖域の「寒冷前線」の断面であろう。
とすると、「寒冷前線の△△△」とは、何だろう。
図を見て感じるのは、寒冷前線面そのものの断面図である。
「寒冷前線の」に続く言葉としたら、何だろう、思い浮かぶのは「寒冷前線の前面」、「寒冷前線の後面」、「寒冷前線の断面」くらいだ。
この場合の図に、前面、後面はそぐわないので、「寒冷前線の断面」にしておこう。
正解は、「寒冷前線の転移層」だった。
ん、『転移層』ってなんだぁ?
技術評論者の「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト <学科一般知識編>」には次のように書いてある。
前線帯は、水平方向に数百km程度の幅を持っており、ここでは温度・露点温度・風向が大きく変化します。
前線帯の暖気側に位置する面を前線面といい、前線面が地上と接するラインを前線といいます。
文章だけでは、なんだか良く分からないが、他の文献なども調べた結果、次の図のようなことらしい。
上の図は、寒冷前線面の断面図である。
暖気と寒気の境目が「前線面」だが、厳密に見れば、暖気と寒気が混ざり合った境界層が出来ている。
この境界層のことを、「前線帯」という。
厳密な意味での前線面とは、境界層と暖気の接触面であり、寒気との境界面ではない。
鉛直断面で見たときに、前線帯つまり境界層のことを、「転移層」という。
なるほど、そういう名前なら、「寒冷前線の境界層」という模範解答で納得できる。
第40回 気象予報士試験 実技2 問3(2)
下図の水色の部分の相当温位の分布の特徴を簡潔に答える問題だ。
一目で気がつくことは、
・X側の相当温位が高い
・X近辺では変化が緩やかで、Zに近づくと低下率が大きい。
これを簡潔に書いて「X側の相当温位が高く、Z付近で傾度が大きい」とした。
模範解答は「X側に行くほど相当温位が高い」と、そっけない。
簡潔に答えるとは、この程度で良いということのようだ。
おそらく、Z位置が温暖前線で、ZからY方向に温暖前線面がある。
第40回 気象予報士試験 実技2 問3(3)
問題のTの部分だけを抽出して並べてみた。
高度に伴って、風が順転(時計回り)している部分を薄いピンクで、反転(反時計回り)している部分を薄いブルーでマークした。
温度風の関係によって、赤い部分が暖気移流、青い部分が寒気移流なので、解答は、
(a)=「イ:寒気移流」
(b)=「ア:暖気移流」
(c)=「イ:寒気移流」
(d)=「ア:暖気移流」 である。
第40回 気象予報士試験 実技2 問3(4)
(a)~(d)のそれぞれの時間帯は、問題文から、初期時刻の12、24、36、48時間後にあたる。
それぞれの前線位置を確認しておこう。
問3(1)で、(c)は寒冷前線であることが明らかになったので、ここでは、寒冷前線に着目する。
初期時刻から、48時間後までの寒冷前線想定位置を青い線で書き込んだ図がこれだ。
12時間後の天気図がないので、予想して水色で記入した。
36時間と48時間後は、X-Yのラインに寒冷前線がかかっている。
問3(1)で、(c)は寒冷前線が入っているので、36時間か48時間である。
問3(2)で、(d)は、X側の相当温位が高いので、寒冷前線通過前であると判断する。
問3(3)で、(a)(c)が寒気移流なので、Tの位置は寒冷前線の後面である。
(b)(d)が暖気移流なので、寒冷前線通過前である。
以上の考察によって
(b)(d)が寒冷前線通過前の12hrか24hrで、
(a)(c)が通過後の36hrか48hrであることがわかった。
(b)(d)のどちらが先か。
相当温位が低い領域が徐々に北東に移動しているので、(b)が先、(d)が後であろう。
(a)(c)がどちらが先か。
寒冷前線の転移層が、(a)ではT位置あたりだが、(c)では北海道に移動しているので、(a)が先、(c)が後である。整理して全体を並べると、「(b)→(d)→(a)→(c)」の順である。
この通りで正解だった。
第40回 気象予報士試験 実技2 問3 模範解答
模範解答は以下の通り
問3
(1)〔2点〕 寒冷前線の転移層
(2)〔2点〕 X側に行くほど相当温位が高い
(3)〔4点〕 (a) イ (b) ア (c) イ (d) ア
(4)〔3点〕 (b) →(d) →(a) →(c)