第40回気象予報士試験 実技1 問2


第40回気象予報士試験 実技1 問2(1)


 丸囲み数字は機種によって文字化けするので、代わりに[1][2]の表示を使います。
問題文による日時の指定が多いので、『最初に日付をメモしよう』が活用できる最適な問題だ。

最初にこんなおまじないの数字を欄外に書いておけば、無用な混乱を避けられる。

0 25日 21じ
12  26日 9
24  〃 21
36 27日 9
48 21

「低気圧の位置を描いて線で結べ」と言う問題なので、指定された、図1、図3、図4、図5、図6を縦に並べて、各々の低気圧中心を順に結んでみるとこうなる。

j40k121a

 上から、初期時刻(0hr)、12hr後、24hr後、36hr後、48hr後の図である。

順番に線で結んだ最後の図が一番下で、解答図になるはずだ。
ただし、一番の下の図に、日時を書き加えなければならない。
中心位置の書き写しを間違えなければ、簡単な問題だ。


26日の9時、つまり12時間後の図を再現するとこうなる。

j40k121a2

 まず、進行方向だが、東西方向の線が水平ではなく、右に傾いているので、勘違いしないように注意が必要だ。

グリーンのラインで東西と南北を示したので、「東北東」であることがすぐに分かるだろう。

次は、速度だが、距離の基準になるのは、緯度線間の距離である。

緯度10度間の距離は、600海里と定義されて要るから、これから前12時間の距離を求めよう。

私のプリント上の実測の長さを測定したところ、青い線で示した600海里が27.8mmで、ピンクの線で示した前12時間の移動距離が16.5mmだった。
比例計算で、前12時間の移動距離が360海里となったので、速度(ノット)に変換するために12で割ると
360/12=30ノットとなる。
模範解答では、測定誤差を考慮して、35ノットでも正解にしている。

同じく、27日9時、つまり36時間後の図を示す。

j40k121a3

上と同じことなので説明は省略するが、図中に記載しているので、分かるだろう。

進行方向は、「北北東」で、速度は、550/12=46ノットなので、5ノット単位に丸めると、正解は「45ノット」になる。

誤差を考慮して50ノットでも正解にしているようだ。

こんな簡単な比例計算だけど、過去に計算ミスで苦い経験をしている私は、何度も検算をして思いの他時間をかけてしまった。

算出の手法は瞬時に理解したのだが、手計算が不安なためすごく時間がかかった。

なぜ計算機の使用を認めないのだろうか? 不思議だ。

気象業務支援センターから発行された「問題と正解」によると、『25ノットが1日で緯度線10度を移動する』ことを基準に計算していた。

これを使うと 23.3*2/25.5*25=46ノットと同じ答えが出るが、計算が多少は楽だろうか?


第40気象予報士試験 実技1 問2(2)


[1]  丸囲み数字はパソコンの機種によって文字化けするので、代わりに[1]の表示を使います。
初期時刻(図2上)と26日21時(図4上)のトラフと地上低気圧の位置を並べてみた。
j40k122c
指定された項目を調べてみる。
・トラフの深まり→深くなる
・移動→東に移動する
・地上低気圧との位置関係→地上低気圧の北西側から真西に変わった。
これらをまとめて、低気圧の発達への寄与を50字で表現する。
「初期時刻よりもトラフは深まりながら東進し、地上低気圧の西側に接近して、低気圧発達に寄与する。」(46字)
模範解答は「トラフは浅まりながら速い速度で東進し,地上の低気圧中心を追い越して 低気圧の発達への寄与はなくなる。」(49 字)
となっている。
え、まったく逆だ。 何で?

21770

低気圧は明らかに発達しているのだから、受験生としては、どうしても発達に寄与する材料を探すわよねぇ。
その心理の逆を突いたとても意地悪な問題だわ。
でもね、問題文をよく読んでみて。
『黄海北部から華中にのびるトラフ』と書いてあるでしょう。
『黄海北部』と『華中』をグリーンのマークで教えてあげるから、その近くのトラフを探してみたらいかが?

j40k122e


そういうことか? と天気図を見直してみたら、
j40k122d
これか!
こんな小さなトラフは、最初から目に付かないし、どこに行ったか分からないさ、ははは。
と、笑ってもいられないんだなぁ。
[2]
上の[1]で概要を書いてしまったので、ここで何を書けばよいのか分からなくなってしまった。
正解を見てから書けば、そういうことかと簡単なことで、私の上の文章を少しアレンジすればよいだけだ。
すなわち「低気圧の北西にあるトラフが深まりながら東進して低気圧に近づき、西に位置することにより発達に寄与する。」(50字)

模範解答はこうだった。
「初期時刻に華北にあるトラフが深まりながら後ろから接近し,この低気圧と結びついて発達に寄与する。」(47 字)
だいたい、言いたいことは同じだと思うが、実際の試験ではこうは書けなかったなぁ。

21768

北上大さんったら、先の[1]でミスったから、[2]との整合性が取れなくて、何を書いたか覚えていないって言っていたわ。
こんなことじゃ、ダメね。
また、不合格だわ。


第40回気象予報士試験 実技1 問2(3)


まず、問題文の説明に沿って、図5(下)から判断して小さな低気圧の位置を探してみよう。
強い低気圧の南西部が膨らんで、気圧が低いことを示しているので、じょう乱の位置は赤で×印をつけた辺りだろう。
j40k1231a
以下の問題は、想定したじょう乱の位置からの視点で書くことになる。
[1] 丸囲み数字はパソコンの機種によって文字化けするので[1]の表示を使います。
「852hPaの相当温位と風の分布」を35文字でだから、図9の左下(T=36)を見ればよい。

j40k1231b

  • 相当温位で特徴的なのは、高相当温位領域が、じょう乱の南側から東へと回り込んでいることだ。(ピンクのライン)
  • 風で特徴的なのは、じょう乱の南側で強い西風が吹き東側に回りこんでいることかな。(グリーンのライン)

これを、35字で表してみた。
「じょう乱の南から東に強風が吹き、高相当温位領域が南から東へ回り込んでいる。」(37字)でどうだろうか。
模範解答は「じょう乱付近で相当温位が高く,南側では50 ノット以上の風が吹いている。」(35字)だった。

なるほどねぇ、オレンジ色の線に着目すれば、じょう乱のある領域の相当温位が高いといえるなぁ。
ここの状態を、「暖気核を持っている」というそうだ。

[2]
「700hPaの鉛直流と湿数の分布」を40文字でだから、鉛直流は図8(下)を湿数は図8(上)を見ればよい。

j40k123d

 右図にグリーンで示したように、じょう乱を中心に、鉛直流が負数、つまり上昇流域であることが分かる。

j40k123c

 湿数については、じょう乱を中心にした領域が、湿数が3℃以下の湿潤領域になっている。

これを、40字で表現してみた。
「じょう乱の中心付近は、鉛直流は上昇流域であり、湿数分布は3℃以下の湿潤領域である。」(41字)

模範解答は「北西側に強い上昇流,南東側に下降流があり,北西側から南側に湿潤域がある。」(36 字)だった。
ぜんぜんダメじゃん。

模範解答を検証するために、図8上下を拡大したのが下の図だ。
まず、鉛直流の図ではこうなっている。

j40k1231c

グリーンに着色した部分が、上昇流領域であり、白い部分は下降流になる。
模範解答の文章「北西側に強い上昇流,南東側に下降流があり」の通りだなぁ。

続いて、湿数分布についてはこちら。

j40k1232a

 湿潤領域は、水色の着色をした。

模範解答の文章「北西側から南側に湿潤域がある」と書いている。
この文章に従うなら、じょう乱の位置が、白色の領域(釧路付近)に重なっていなければならないが、図5(下)の等圧線の読み取りから、そこまで求めるのは無理だろうと思うよ。

図8のざっくりした天気図から、ここまでミクロな読み取りを要求するように、試験方針が変わったのだろうか。
そうだとしたら、次回以降の対策を考え直さなければならない。
これまでの試験では、ミクロにこだわるよりもむしろ、マクロな状況把握を要求してきたように思うのだが。

[3]
「500hPaの正渦度極大域との位置関係」を25文字で、ということなので、図5(上)を参照する。

j40k1233a

正渦度の極大域は、青丸で囲んだ+272×10-6/sであるが、じょう乱との位置関係をどう表現するか。
25字なので簡潔な表現になるはずだ。
「じょう乱直近の東側に正渦度極大域がある。」(20字)と書いてみたがどうだろうか。
模範解答は「地上じょう乱と同じ位置に正渦度極大域がある。」(22 字)だった。

想定じょう乱位置の僅かな違いで、解答が変わってしまう。

これは無理だわ。

[4]
「500hPaの温度場と谷との位置関係」を20字とのことなので、図8(上)を参照する。

j40k1234a

「温度場の谷」とは、聞きなれない言葉だが、気圧の谷と同様に、気温が低いところと考えると、右図のブルーの線と、グリーンの線が目に着いた。

20字で位置関係を説明しろと言うことだから、極めて簡潔な表現になるはずだ。
ブルーの線は遠すぎるので、グリーンの線を対象に書いてみたら、こうなった。
「じょう乱の南西側に気温の谷がある。」(17字)
ところが、模範解答はこうだった。「地上じょう乱の西に温度場の谷がある。」(18 字)
おそらく、ブルーの線で描いたトラフを指している言葉だろうな。

21770

この問題、問2(3)は、じょう乱の想定位置ですべてが決まってしまうわね。
少しでもずれていたら、[2][3]では誤った答えを導いてしまうのよ。
北上大さんによる想定位置よりも、正解は少し南側だったようだわ。
j40k1233b
距離にしたら、100kmくらいかしら、こんなに細かいところを突く問題は、ちょっと経験がないわ。
気象予報士の問題レベルが厳しくなったと言うことかしら。


第40回気象予報士試験 実技1 問2(4)


この問題はまったく分からなかった。

正解位置の「北緯43 東経137 」が、指定された3枚の天気図でどのような場所なのかを確認しておこう。

26日の21時だから、初期時刻から24時間後のことである。

3枚の天気図の北緯43度、東経137度に青い×印をつけた。
それぞれの特徴を読み取ってみると、なるほど、解答に結びつくヒントが隠されていることが分かる。
j40k124
・左の地上天気図では、等圧線が左に膨らんでいるので、この付近の気圧が低いことが伺える。
・中央の鉛直速度では、上昇流の極大域があり、活発な対流活動が伺える。
・右の等相当温位線の膨らみは僅かだが、低気圧性の風の循環が明瞭である。

以上のことから、じょう乱(小さな低気圧)の存在が示唆されている。
でもなぁ、なかなかここまでは読み取れないし、これまでの実技試験では、求められていなかったミクロな分析だと思う。


第40回気象予報士試験 実技1 問2(5)


[1][2][3]は、次の図で判断することになる。

j40k125a

[1]は文脈から相当温位の数値が入るようだが、候補としては、315Kか318K、321Kの3本の線がある。315Kは、高知県をまたいでいるので、除外するとして、「318K」かな。でも、「当該地域に流入する」というのだから、まだ手前にある「321K」かも知れない。悩ましい。

[2]の風速は、グリーンの丸で囲んだ旗印が一番強いので、風速「50ノット」でよい。(ここだけ自信を持って)

[3]は風向を求めているようだ。 高知県付近の風向は、概ね「南西」と言ってよいだろう。

果たして正解は、[1]はこれから高知に入ろうとしている『321K』だった。
う~ん、やっぱりそうだったか。
[2]は問題なく『50ノット』でよかった。
[3]『南西』だった。

[4][5]は、次の図で判断する。

j40k125b

風速と風向を求められている。
宮城県にかかっている風に限れば、グリーンの丸で印をつけた、「55ノット」で「西北西」だが、青森の東から北海道南にかけて風速70ノットの西風があるが、これをチェックするんだろうか。

正解は、宮城県付近の『55ノット』『西北西』だった。
でも、ちょっと悩んじゃうようね。

[6][7][8]は、次の図だ。
それにしても、細かいところを突いてくるので、拡大図ばかりだ。

j40k125c

奥羽山脈は、図中に水色のラインで示した辺りで、そこに吹いている風は、グリーンの矢印で示したとおりだ。
[6]は風下側の「□□流」と聞いているので「下降流」だ。
[7]の風上側は、「上昇流」しかない。
[8]は何だろう?
南風なら「フェーン現象」と答えるところだが、何も思いつかなかった。
正解は、素直に[6]「下降流」[7]「上昇流」だった。
[8]は、「山越え気流」だそうだ。
俗に「おろし」と呼んでいる現象だが、恥ずかしながら私にとっては、はじめて聞く用語なので、対応しようがなかった。

[9][10][11][12]は、こちらの図で考える。

j40k125d

[9]は最大風速を求めている。 グリーンでマークしたのが風記号だが、『65ノット』を示しているので簡単だし、正解だった。だ。

[10]の気温は紛らわしい問題だ。
胆振地方付近には、3本の等温線が通っている。 -6℃、-9℃、-12℃だ。
-12℃は少し外れていると見てよいだろう。

-6℃と-9℃は両方とも胆振地方にかかっていると思える。
どちらを答えたらよいのか分からない。

どちらかといえば、-6℃の方が、掛かりが大きいので、-6℃を解答にしよう。
案の定、正解は『-6℃』だったが、この状況で-9℃を不正解とするほどの違いがあるのだろうか?

[11][12]は、災害情報を求めているようだ。
発達した低気圧が北東に移動して、近くに小さな低気圧がある11月末の北海道南岸で、なにを警戒するか。
850hPaで65ノットの風だから、地上でも強風に警戒する必要があるだろう。で、[11]は「強風」とする。
[12]は、「強い降雪」への修飾語のようだが、何だろう。
「ものすごく」とか「猛烈に」とかを思いついたが、たぶん違うだろう。
結局分からなかった。

正解は[11]は、『暴風』だったが、「強風」では点数がもらえないのだろうか? ワカラン!
[12]は、『湿った』強い降雪だった。
850hPaで‐6℃なら、地上気温は0℃以上になりそうだ。だから湿った雪ということか。
う~ん、奥が深いなぁ。


第40回気象予報士試験 実技1 問2 模範解答


模範解答は以下の通り
問2
(1)〔11 点〕
j40k1q1t21
26 日9 時の前12 時間  方向:東北東 速さ:30(35) ノット
27 日9 時の前12 時間  方向:北北東 速さ:45(50) ノット
(2)〔12 点〕
[1]トラフは浅まりながら速い速度で東進し,地上の低気圧中心を追い越して 低気圧の発達への寄与はなくなる。(49 字)
[2]初期時刻に華北にあるトラフが深まりながら後ろから接近し,この低気圧と結びついて発達に寄与する。(47 字)
(3)〔13 点〕
[1]じょう乱付近で相当温位が高く,南側では50 ノット以上の風が吹いている。(35 字)
[2]北西側に強い上昇流,南東側に下降流があり,北西側から南側に湿潤域がある。(36 字)
[3]地上じょう乱と同じ位置に正渦度極大域がある。(22 字)
[4]地上じょう乱の西に温度場の谷がある。(18 字)
(4)〔2 点〕 北緯43 ° 東経137 °
(5)〔12 点〕

[1]321K  [2]50 ノット  [3]南西  [4]55 ノット  [5]西北西  [6]下降  [7]上昇  [8]山越え気流  [9]65 ノット  [10]-6℃  [11]暴風  [12]湿った

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