線状降水帯6つの条件

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  • このトピックには11件の返信、1人の参加者があり、最後にすずきにより5年、 10ヶ月前に更新されました。
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    • #8821
      門前小僧
      ゲスト

       気象記念日でもあるきょう(6/1)の「短期予報解説資料」の2項-3に「線状降水帯発生の6条件が揃う時間帯があるため、対流雲が組織化して線状化すると・・・」との記述がありました。
      「線状降水帯発生の6条件」なんて初めて聞いたなと思い、少しだけ調べて見ました。検索でヒットした気象研究所の加藤輝之氏の論文によると、
      1)鉛直シアー:ストームに相対的なヘリシティ(SREH)≧100 m2/s2
      2)対流発生:DLFC(500m 高度)< 1000 m
      3)水蒸気供給:FLWV(500m 高度)≧ 150 g/m2/s
      4)上空の湿度: RH(500hPa と 700hPa) ≧ 60%
      5)上昇流域: W(700hPa, 400km 平均) ≧ 0 m/s
      6)対流発達: EL(500m 高度)≧ 3000 m
       の6つのようです。

       ひとくくりにして平たく言うと「鉛直シアーが大きくて、対流発生高度が低くて、水蒸気フラックスが大きくて、上空がとても湿ってて、上昇流が発生していて、対流は空高くまで達している」ということです・・・ね。

       それぞれの数値的な条件を詳しく、というかザッとみるだけでも、どれがひとつでも「そりゃ、大雨になるよね」というレベルだと思いますが、この6つが揃うとなれば、本当に災害レベルの大雨になるということは、ひよっこ予報士の私でも想像がつきます。
       線状降水帯の恐ろしさは、4年前の広島豪雨や去年の九州北部豪雨でも見せつけられています。その「6条件」がいま、南西諸島付近で揃わんとしてるようです。降水帯が島からずれることを祈ります。

       そして、この6条件は、試験対策にも覚えておくといいと思います。それぞれの条件の数値は予報士試験では覚える必要はないと思いますが、項目の意味することを理解すれば、線状降水帯に限らず、どれもが大雨につながる条件として、学科一般や実技対策につながると思います。

    • #8822
      とうり
      ゲスト

      門前小僧様、ありがたいです。次のトピックで本日出す予定でした。この夏の、必須の問題と考えていましたから。整理していただき、感謝しています。かの地は、今や、国道から見ると、頑丈な要塞に見えます。「線状降水帯」必須課題。

    • #8823
      とうり
      ゲスト

      門前小僧様、当地でその線状降水帯とバックビルディング現象を経験したものには衝撃。また同時に、翌日、現場で、突然現れた人物の語る言葉にもまた衝撃。その方は気象予報士と語り、現象を説明。それは私をそのような人物になりたいという動機を与えてくれました。その方は、2017年、「九州・四国地方の地形に起因する下層湿潤空気の流入効果」について、論文を書いています。そこでは、地形的要因の観点から、「周防半島~広島県西部の沿岸部の山地斜面の地形」と「九州四国地方の地形による下層暖湿空気の流入効果」を結論しています。論文では、数値予報プロダクツや線状降水帯の計算などもあって、理解しやすいものになっています。WEBで読むことが可能です。

    • #8825
      古久根 敦
      ゲスト

      ブラボー!!!
      ・・・上から目線ではありません.素直な感想.

      線状降水帯発生の6条件,細かく見ると,難しい匂いがプンプンしますが,気象予報士試験で出題されるとしたら,どんな出題のされ方をするんだろう?

      ということを想像してみるのも悪くないかも.

    • #8828
      とうり
      ゲスト

      門前小僧様、加藤氏の、2015年の論文(WEB上にあります)では、4つの条件を明確にしています。線状降水帯発生要因としての鉛直シアーと上空の湿度について。広島の大雨{2014)にみると、数時間ほぼ同じ場所に降水域が留まって、積算降水量分布が線状の降水域として認識。統計的に集中豪雨事例が調べられて、その形成過程が4つに分類、上空の相対湿度と積乱雲の発達高度の関係が温位ー高さ曲線で検討されています。結構ややこしく、どのような条件で大気の成層状態が安定、不安定となるのか、説明は複雑。そのほかに、鉛直シアーを解析するのに、「SREH」という指標を導入。これを計算させられたら、さらに困難を極めます。さらに、大気状態の条件も検討。エマグラムから計算されます。数値予報モデルによって、提起された4つの条件を検討する。それに、500m高度の相当温位や水蒸気フラックス量の検討を、この時点では示唆。加藤氏は、6つの条件を提案することになったようです。古久根様、どのような実技の問題が実施されるのでしょうか、よろしくお願いします。

    • #8829
      古久根 敦
      ゲスト

      とうりさん,こんにちは.

      以下の資料もとても丁寧に解説しています.予報士試験レベルは超えますが,意欲・関心があれば読んでみてもいいかも.

      量的予報技術資料(予報技術研修テキスト)第21巻(平成27年度)
      第2章:メソ気象の理解から大雨の予測について ~線状降水帯発生条件の再考察~
      https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/yohkens.html

      さて,6条件に絡めて,どのように予報士試験の実技で出題するか?私は試験作成者ではないですから,私が試験作成者だったら,という主観になってしまいますのでご了承を(^0^;)

      人に教えるという20年間の経験から,問題にするならば,着眼力・分析力・考察力を求める出題にし,事例を知っていれば有利だという状況が生まれる出題にはしません.

      線状降水帯の事例は全体から見れば少ないわけで,線状降水帯そのものをテーマにした事例は取り扱いづらいです.線状降水帯自体,ニュースでも取り上げられるほど関心の高い現象なので,知っている知っていないの差が出やすく,試験として公平性を保ちづらくなります.

      上記の資料で言えば,2015年9月1日の事例は出したい気持ちに駆られます(^0^;) なぜかというと,線状降水帯6条件がそろっているにもかかわらず,顕著な現象としては顕在化しなかったからです.6条件はあくまで目安であって,6条件がそろえば必ず線状降水帯が起きるという固定観念になってしまわないよう喚起する目的もあります.なので,6条件はそろっていないかもしれないけれど,6条件を目で見て確認し解析できる力があるかどうかを試す出題にしたいです.これであれば,出題事例の数は一気に増えます.

      さて,6条件はすべて指標化されています.指標化されたものが計算可能ならば,人間が出る幕はありません.コンピュータに計算させ,6条件を満たす場所がわかるように分布図を書いてもらって,発生可能性・発生時・解消時というように色分けすれば,人間はそれに基づいて判断できます.実際気象庁で導れているのではないでしょうか.なので,指標そのものを計算させるような問題は出しません.考え方や着眼の仕方などを出題して,指標の意味するところを問います.

      条件1であれば,ある2層の風向の違いを問うでしょう.それが降水域の形状とどういう関係にあるかを問うのもあります.水蒸気画像を取り出して暗域から風向を推定させ,下層の風との違いを問うという方法もあるでしょう.

      条件2であれば,自由対流高度をエマグラムから求める問題が基本.2の条件は自由対流高度まで到達できれば浮力によって上昇できるけれど,その自由対流高度までどうやったら到達できるかが問題なので,そのしやすさを指標化したもの.

      条件3であれば,500m高度の相当温位・気温図を出して,第44回実技2のように水蒸気フラックスを求めさせたり比較させたりします.第44回では850hPa面でしたが,これでは高すぎるので,500mです.500m面は目新しさもある程度あるので格好の題材です.

      条件4は,なかなか理解しづらい条件です.予報士試験では不安定性を考える時,対流不安定であれば,下層湿潤・上層乾燥で,相当温位の鉛直分布で言えば,上層ほど相当温位が低くなっていると思うでしょう.条件4は500hPaと700hPaで湿度60%以上,つまりある程度湿っていないといけないよと言っています.なんだか矛盾していますが,この条件はあくまで線状降水帯の発生条件なので,降水域が線状に集中することを考えなければなりません.たしかに対流不安定(上層乾燥・下層湿潤)だし現象が現れるきっかけになりうるけれど,線状降水帯ではそれではないと言っています.この条件は線状降水帯を作るくらいだから,上空は湿潤でないと,上昇してきた空気が水蒸気になってしまいかねません.多くの雨粒を作り出すことを抑制しちゃいます.この条件4についてはしゅるっと上空の湿潤域の分布を聞く程度でしょうか.

      条件5は,700hPa上昇流域の分布を問います.過去問にもありますが,上昇流の鉛直速度を計算させてもいいですが,計算させるのが本質ではないので,上昇流域になっている原因を別の角度で問う問題にします.上昇流が生まれる原因にはいくつかありますよね.オメガ方程式でもいいです.

      条件6は,雲底高度と雲頂高度をエマグラムや,別の資料で推定させる問題にします.

      以上が出題として考えたいことの例ですが.上記はあくまである時刻のスナップショットになっているので.予想図と絡めて,その状況の推移(さらに悪くなるのか,解消するのかなど)を出題したり,予想されているのであれば,防災事項に絡める問題を出題したり,予想時刻において実際に起きた実況データ(アメダス観測値など)を使って,降水の持続性と高まりなどを出題したり,関連事項はいろんな角度で出題できます.

      ともかく,線状降水帯6条件を知っているよというレベルではなく,6条件の意味を本当に理解しているか,6条件を実際の予想で使えるか,ということを出題したいです.

      以上,古久根の私見でした...上記のように出題される保証はないのでご了承を(^0^;)

    • #8830
      門前小僧
      ゲスト

      とおり様
      古久根様

       とおり様がお読みになったのは恐らく、平成26年度の気象庁予報技術研修テキストの第6章「線状降水帯発生要因としての鉛直シアーと上空の湿度について」という論文ですね。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/20/chapter6.pdf

       私が見たのは、古久根様が揚げている、まさにそれです。27年度の研修テキストの第2章「メソ気象の理解から大雨の予測について ~線状降水帯発生条件の再考察~」です。
      http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/21/chapter2.pdf その中に、「4条件」に加えて、「上昇流域」「対流発達」の条件を加えて「6条件とする」旨のことが述べられています。まだ全然、読み込んでいませんが、私も既に難しい臭いに埋もれています・・・。

       線状降水帯が試験に出されるとしたら。
      古久根様のように理論的な考察もなく、単なる想像(妄想に近い)ですが、ざっくりと・・・。
       実技なら、レーダーエコー図を示し、「図では○○に帯状の強いエコー域が観測されている。これを何というか」的な設問で「線状降水帯」というワードを答えさせた上でさらに、700hPa鉛直流域図や850hPa風向風速・相当温位図、当該地点のエマグラム等を示して「前問の強いエコー領域が形成された理由を、これらの図から50字程度で述べよ」という感じでしょうか。具体的な数値までは問われないと思いますが・・・。

       学科で出題されるなら、「線状降水帯が形成される要因として述べた次の文の(a)~(d)について、正誤の組み合わせとして正しいものを下記の1~5から1つ選べ」という設問で、選択肢に「(a)線状降水帯が形成される領域では、対流が3000m以上の高さまで発達している」「(b)・・・」という雰囲気だと想像します。

       線状降水帯は、近年の防災上の最重要事項の一つだと思いますので、予報士試験には何らかの形で取り入れられても不思議ではないと考えます。しかし、古久根さんのご意見のように、まだ「知ってる人と知らない人」が多い事象なのは事実。「ゲリラ豪雨」「爆弾低気圧」ほどの知名度はないですよね。
       でも、だからこそ、気象予報士という気象のスペシャリストを目指す人にとっては、先んじて知るべき範疇ではないかと思うのです。1月の49回試験で「特別警報」についての設問があり、話題になりましたが、個人的には「遅いのでは」と感じています。

       もっとも、実技で出題するには「事例」が必要ですから、そうなると「普遍的な線状降水帯事例」がまだまだ足りない、という事情はあるのかも知れませんね。

    • #8831
      とうり
      ゲスト

      古久根様、ありがとうございます。「500m高度の相当温位・気温図を出して,第44回実技2(引用者注、平成27年第1回)のように水蒸気フラックス」の計算、そうですか、850hPaは高すぎるのですか、500m面、新鮮です。条件4は、いまのところ、私には、難しい箇所「500hPaと700hPaで湿度60%以上,つまりある程度湿っていないといけない」、図ではどのようになるのか、想像中です。線状降水帯の発生条件の大気の成層状態は不安定か、安定か、も。条件6は,「雲底高度と雲頂高度」、これは解析しやすそうです。門前小僧様、「実技なら、レーダーエコー図(略)で「線状降水帯」というワードを答えさせる。さらに、土壌雨量指数や流域雨量指数などが図で出されるかもしれません。いずれにしても、しっかりと、過去問で力を磨きます。お二人の方のアドバイス、感謝いたします。

    • #8867
      古久根 敦
      ゲスト

      皆さん,こんばんは.

      某テレビ局さんでも現在呼びかけられている線状降水帯.

      この線状降水帯をキーワードにツイッター検索してみたところ,あらためて線状降水帯という用語の幅広さを感じました.

      気象予報士試験で問われるかはともかくとして(いや,もっと出題してほしい!),線状降水帯にはいろいろな種類があって,その中でも「集中豪雨」をもたらす種類がいくつかに限られてきます.

      古い参考書ではスコールライン型は載っていると思いますが,それ以外も含め,しっかりと整理・理解しておくといいと思います.

      線状降水帯発生の6条件の意味するところを理解しつつ,そもそも線状降水帯には種類やもたらす現象に違いがあることをしっかりと理解しておきましょう.予報士試験レベルの専門的には,線状降水帯=4年前の広島豪雨時の型,という理解では不十分になりますので要注意です.

      現在予想される事項などについては気象業務法に抵触するため自重させていただきます。申し訳ございません(^0^;)

    • #10612
      すずき
      ゲスト

      急に書き込みすみません。先日の第51回の試験の一般の問9で次のような問題がありました。

       日本の梅雨期には、バックビルディング型の帯状降水域が現れ、狭い地域に長時間にわたる強い降水をもたらすことがある。これは、(a)帯状降水域を構成する個々の降水セルが長寿命でほとんど動かない(/a)ためである。このような降水域の多くは、(b)一般風の風向が高度にかかわらずほぼ一定の場合に見られる(/b)。バックビルディング型の帯状降水域では、降水域内の降水セルに対して(c)一般風の風下側に新しい降水セルが形成され(/c)、(d)降水域は一般風の風向に対して垂直な走向をもつ(/d)。
      1 (a)のみ正しい
      2 (b)のみ正しい
      3 (c)のみ正しい
      4 (d)のみ正しい
      5 すべて誤り

      とある予報士の先生がネット上で「下層風と中層風の向きが同じときに発生します」と書いて、(b)は正しく2が正解だと書いています。(a)(c)(d)については、いずれも誤りであるとの根拠を書き出した上で「【参考】瀬古弘「線状降水帯の形状と構造 -気流解析の勧め」(21ページ目)」と参考資料を提示してくださってます。

      この先生は受講生以外の問い合わせには応じないらしいです。参考資料を読んでもよく分からず、なぜ(b)が正しいか分かる方いらっしゃったら教えていただけませんか。

      長文すみません。

    • #10676
      門前小僧
      ゲスト

      このトピを作った門前小僧です。
      反応が遅くなって、すいません。すずきさま、初めまして。

      まず、「とある予報士先生」の解答が「誤り」でしたね。気象業務支援センターから解答が公表されましたが、一般・問9の正解は「(5)全て誤り」でした。

      すずきさまの書き込みを読んで、私も「そんなはずは・・・」とは思ったのですが、(b)は誤りであることの根拠を明確に説明できず、まずはオフィシャルの模範解答の開示を待っておりました。

       私こと、気象学者でもなければ、気象庁や気象会社の関係者でもない素人気象予報士であることを前置きした上で、(b)が誤りである根拠を説明してみます。
       「高度にかかわらず風向が同じ」という条件だけでは、バックビルディング現象は起きません。「風向が同じでも、風速が違う(垂直シアがある)」ならば、バックビルディングは起き得ます。
       バックビルディング現象は、降水セル(積乱雲)の冷気外出流が、下層の一般風と収束して、新たな降水セルを発生させて、”世代交代”を繰り返して、集中豪雨となることです(参考:TeamSABOTEN「拝啓予報官X様#102」)。つまり、冷気を流出させたセル(親セル)が、そのまま同じ場所に居座っていては、新たなセル(子セル)は形成されず、世代交代は起きません。親セルが、さっさと先に行く(風向が同じでも、上層の風速が速い)か、右にでも左にでも避ける(上層の風向が違う)かしてくれることで、そこに子セルが発生し、同じような場所で降水が持続する形になります。その様子を上空から見ると、ある場所で雲がわき起こり、上層の風下に向かって雲が帯状(線状)に伸びるように見えるので線状降水帯と呼ばれるのは、ご存じの通りです。
       (b)は、つまり、バックビルディング現象の発生の必要条件である「鉛直シア」の説明に足りていないのです。先述のように「風向が同じでも、風速が違う」ならば、必要条件を満たすことになります。
       従って、(b)は「誤り」であり、「とある予報士の先生」の解答自体が「誤り」ということになります。

      ・・・説明になりましたでしょうか。

    • #10691
      すずき
      ゲスト

      ご返信、ありがとうございます。解説、よく分かりました。結果的に変なお問い合わせになってしまい、すみませんでしま。

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