第43回気象予報士試験 実技1 問2(1)
丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。
[1]は寒冷前線を描く問題です。
前線解析の基本は次のようなことでしたね。
- 等相当温位線集中帯の南縁付近
- 地上等圧線がV字に折れているところ
- 地上風の水平シア(南西風と北西風の境目)
- 気温分布が急変しているところ
- 降水分布が多いところ
参考にするように指示された図が3枚あります。
1枚ずつ検証してみましょう。
図6下は24時間後の予想地上天気図です。
この地上天気図からは、等圧線がくさび状に曲がっていることと、風の水平シアから判断して、青色の点線辺りを通りそうだと推定できます。
しかし、閉塞点がどのへんのかは、はっきりとは分かりません。
次は、図9上ですが、この図で着目するのは、700hPaの湿数分布です。
北緯30°東経138°付近から北北東に伸びている湿数の傾度が大きい帯がありますがこれが寒冷前線の兆候です。
この南縁付近、つまり湿潤網かけ部分との境界領域が前線帯です。
該当する部分に青い線を引いてみましたが、図6下の地上天気図の解析と矛盾しません。
しかし、これだけでは、まだ閉塞点を決定する事はできません。
続いて、図12下の850hPa 等相当温位線の分布図です。
前線解析の本命である、「等相当温位線の南縁付近」が与えられたので、ほぼこれで間違いありません。
閉塞点付近の風のシア、および、図6下、図9上との解析結果とも齟齬が見られないので、この青い線を解答用紙に転写すれば良い。
また、閉塞点の形から判断して、温暖型閉塞前線の特徴を示していますが、与えられた閉塞前線と温暖前線の形から温暖型になるのはあきらかだし、4月の気候であれば、温暖型で問題ありません。
[2]は特徴的な温度分布を述べる問題です。
まず500hPaについて見てみましょう。
下の図は、図9上の低気圧の中心付近を通る温度分布に着したものです。
低気圧中心の特徴的な分布といえば、『W』の記号がついて、-24℃の丸があることですね。
この丸は、周囲の気温よりも高い空気が、離れ小島のように固まっていることを示しています。
閉塞した低気圧の中心付近には、孤立した暖気核や乾燥域ができるのが特徴なので、この様子を、25字で表現すればよいのです。
北上大の答えと模範解答は、次の通り。
「周囲から孤立した-24℃の暖気核が形成されている。」(25字)
「-24℃の閉じた等温線で示された暖気核がある。」(23字)
表現が多少異なるけれども、重要なキーワード「暖気核」が入っているので、点数はもらえるでしょう。
続いて、850hPa の気温分布です。
こちらも、低気圧の中心付近の気温分布が分かりやすいように色分けしてみました。
この図の特徴は、-3℃の等温線が低気圧の中心付近で、大きく曲がっていることです。
これは、-3℃以下の寒気が低気圧中心の南側から東に回りこんでいます。
このまま寒気が進むと、東から北側に昇り、大気圧の中心付近に暖気が取り残されて、500hPaと同じように閉じた等温線が描かれることになります。
これも、閉塞した温帯低気圧の中心付近でしばしば観察されるようなので、これを25字で表現すればよいのです。
北上大の答えと、模範解答をならべて示します。
「-3℃以下の寒気が南側から前面に回りこんでいる。」(24字)
「-3℃のくびれた等温線で示された高温域がある。」(23字)
さぁて、これは点数をもらえるでしょうかねぇ。
高温域に着目すれば、模範解答のようになりますが、「くびれた当温線」とは、具体性に欠ける表現だなぁ。
上の分布図を見て、どんな風に表現するのか、文学的な問題です。
北上大の解答は、0点ではないと思いますが、どのくらいの点数がもらえるかは分かりません。
[3]36時間後の地名を書く問題です。
上に書いたように、36時間後には、850hPaでも、閉じた等温線の高温領域になりました
その様子が、この図です。
ピンクに着色した『W』の円形領域が、問題の部分です。
さて、「地名で答えよ」いう問題ですが、ここの地名はなんというのでしょうか。
『オホーツク海』には達していないし、『太平洋』とも言えないし。
そこで北上大は閃いた。
図1の横にわざとらしく地名が書いてある。
ひょっとしたら、これを答えさせたいのではないかと考えた。
そして書いた答えは、ジャ~~ン「日高地方」とした。
模範解答は「北海道の南東海上」だって。
こんなのを、地名って言うのかなぁ、ブーブー!
末尾のMAPさんからのコメントをご覧ください。『北海道の南東海上』は
日本および日本の周辺を個別的に表す地名として
気象庁が公開している正式な名称でした。
2015/07/11追記
第43回気象予報士試験 実技1 問2(2)
[1]は低気圧の中心を読み取る問題です。
単純作業なので、等圧線の本数を数え間違えなければ、簡単な問題です。
まず、図6下の24時間後は、下図のように北緯40°線に達しています。
中心位置は間違いようがありませんが、中心気圧の読み取りを慎重にしないと、あとで苦虫を噛み潰すことになります。
中心付近を拡大してみましょう。
『L』の文字を囲んでいる小さな丸の等圧線を見逃さないように注意してくださいね。
続いて、図7下の36時間後です。
低気圧が2つ出来ていますので、2つとも確実に描いてくださいね。
この気圧の読み取りは、間違える要素は少ないでしょう。
最後に、図8の48時間後です。
ここでは、中心気圧の読み取りで、1000hPaから数えてみましょう。
図上で数えてみると、中心の等圧線は9本目になります。
だから、1000hPaから、4×9=36hPaを引いて、964hPaとなります。
中心に近い表示である『976』や『984』から数えても良いのですが、1000からのほうが引き算の間違いがないので、わたしはしばしばこの方法を使います。
(素人のやり方です、熟練者はこんなことはやりません)
こうして、場所と中心気圧と時刻を描き入れたのが下の図です。
この図に、進行を示す線を描き入れるのですが、間違いませんよね。
このようになります。
36時間後の2つの低気圧を結んだ人はいないでしょうね。
同時刻ですから、それはありえませんよ。
可能性を考えるとしたら上図の緑の線ですが、この線が成立すると、36時間後に上発生した低気圧が瞬間的に消えてしまったことになります。
そんなことはありえないので、青い線2本で解答になります。
[2]は、文章問題ですね。
「地名を示して40字で答えよ」ということなので、地名を確認してみましょう。
良く分からないけど、こんな感じかななぁ。
地名はこれでヨシとして、「消長の状況」については、24時間後の気圧が最も低いので、この時が勢力が最大と見て良い。
その後、36時間後には弱まる。
さてこれを、40字で表すのだが、こう書いてみた。下の青字が模範解答です。
「その後、勢力を発達させながら東北に進み、日本海中部で最大勢力となり、北海道南東部で消滅する。」(46字)
やや字余りだなぁ。
どこかを削るなら、日本海中部はなくても良いか、
そしたら24時間後を入れないと、いつが最大勢力なのか分からないな。
というわけで、次のように修正しました。
「その後、発達しながら東北に進み24時間後に最大勢力となり、北海道南東部で消滅する。」(41字)
「東北東進し、24時間後に最盛期となり、36時間後に襟裳岬付近に達した後消滅する。」(40字)
模範解答と比べて違うところがいくつかありますね。
- 東北に進み ⇔ 東北東進
- 最大勢力 ⇔ 最盛期
- 北海道南東部 ⇔ 襟裳岬付近
- 時間無記載 ⇔ 36時間後に
これで、どうなんだろう?
「東北東進」かぁ。
北東よりも東に傾いているとは思ったんだが、迷って「北東」にしてしまった。
だけど、分度器を当てて角度を測ってみたら中間くらいです。
「東北に進む」を間違いにされたら困るなぁ。
「最大勢力」と「最盛期」は、まぁ良いんじゃないかな。
『襟裳岬』は必須要件かなぁ? うーん、書いたほうが良いだろうな。
でも、思いつかなかった。
36時間後に消滅と、時間を書かなかったのは減点かなぁ。
でも、こんな文学的な表現が気象予報士の試験なのだろうか。
国語のテストじゃん、これじゃ。
[3]はトラフと地上低気圧の位置関係を書く問題です。
図を見る前から予想できるのが、次の2つですね。
- 発達中はトラフが西側
- 最盛期で鉛直に重なる
これを調べましょう。
まず、12時間、24時間、36時間の図を並べてみた。
図から明らかなように、12時間後では、地上低気圧中心よりも、トラフが西側にある。
24時間と36時間では、両者がほぼ一致している。
この様子を、55字で表現すればよい。
これは、比較的簡単だと思う。
「12時間後には、500hPaのトラフが地上低気圧よりも西側に位置しているが、24時間後以降は両者が鉛直上にほぼ一致する。」(60字)
5字ほど長いので、詰める。
整理した北上大の答えと模範解答を並べる。
「12時間後には500hPaトラフが地上低気圧の西側に位置するが、24時間後以降は両者が鉛直上にほぼ一致する。」(54字)
「地上低気圧は、12時間後には500hPaトラフの東側に位置するが、24~36時間後にはその直下に位置する。」(53字)
どうだろう。
わたしは「トラフ」を主語にしたが、模範解答は「地上低気圧」を主語にした。
説明している状況は、ほとんど同じなので、一定の点数は確保できるでしょう。
動画解説もご覧ください。
模範解答
⇒次は 『第43回実技1問3』