おろしの原理はダルマ落とし

バニラさんからの質問です。

第42回専門問15のオホーツク海高気圧についてです。
「強風の要因として~(c)低温で逆転層がある」とありますが、逆転層がある事で強風が吹く理由がどうしてもわからず、
そのメカニズムを教えてほしいです。
逆転層がある事で霧や層雲が発生するのは理解したのですが…


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最初にこの問題をご覧ください。
第42回学科、専門知識、問15です。

s42kq15

この問題の(c)ですが、正解は
[1]または[3]の「低温で逆転層が」です。

低温で逆転層があると何故強風が吹くのでしょうか。

実は、この問題は、「オホーツク海高気圧が低温で逆転層がある」という条件だけで強風が吹くわけではないのです。

その前の一文
『山形県から新潟県にかけての一部地域で「だし」と呼ばれる地域的な強風が吹くことがある。』
を受けているのです。

つまり、単純に強風が吹くのではなく、「だし」と関連する理由を考えなければなりません。

「だし」とか「おろし」は冬季に山から吹き下ろす冷たい風のことです。
全国各地にありますが「六甲おろし」や「筑波おろし」などが有名ですね。

さて、『おろし』は、大気が安定であることが発生要件になっており、不安定な大気では発生しにくいのです。

その理由を考えてみましょう。

『ダルマ落とし』の原理とは

20161123a

ダルマ落としの下のコマを瞬間的に叩き出すと、上に乗っているダルマたちは、下層がないことに気づきます。

すると、重力に引っ張られて、ストンと下に落ちます。

これが、ダルマ落としですね。

安定層では『ダルマ落とし』が再現される

20161123b

安定な大気の下層を素早く取り除くと、上層の安定な空気塊は下層がないことに気づきます。

冬の冷たい空気は重いので、重力に引っぱられてストンと落ちます。

この原理は、ダルマ落としと同じです。

不安定な大気では『ダルマ落とし』が再現されにくい

20161123c

不安定な大気の内部は、気温の配列がばらばらで上昇流が発生しやすくなっています。

不安定な大気の下層を素早く取り除くと、上層の不安定な空気塊は下層がないことに気づきます。
(ここまでは、安定な大気と同じです)

不安定な大気の中には、上昇気流を発生する連中が混在しているので、ストンとは落ちません。
下層がなくなったけど「ま、いいか」などと、じわじわと周囲と混ざりながら少しずつ低下します。

不安定な大気では『ダルマ落とし』現象が再現されにくいのです。

大気の下層を取り除くのは山を超えるとき

大気の下層を取り除くといいましたが、自然界でこの現象が起きるのは、風の流れに乗って大気が山を超えるときです。

20161123d

上の図では、左から右に向かって大気が流れています。

安定な大気が流れに乗って山を超えました。

すると、山の高さより低い部分の大気がなくなっています。
実際には、大気がなくなるわけではなく、下層には山麓の温暖な空気があります。

北方から流れてきた上層の空気は冷たいので、山麓の温かい空気よりも重いのす。
すると、ダルマ落としのようにストンと落ちます。

斜面に落ちれば風になる

20161122d

ストンと落ちると書きましたが、実際には、山を超えたところは斜面になっています。

冷たい空気が、斜面に落ちてくれば、斜面に沿って雪崩のように冷たい風が流れ、山裾では強風が吹きます。

これが、「おろし」や「だし」の発生原理です。

要素をまとめてみると

大気が安定であること

不安定な大気では、上昇流など内部の流れが乱れているので、ストンと落ちません。

流れてくる大気の気温が山麓の空気よりも冷たいこと。

冷たい空気塊は比重が大きく、山麓の空気よりも重いので、重力に引っ張られて落下します。
上層の空気塊が温かい場合は、比重が小さいので一気に落下せずに山麓の空気と徐々に混ざっていきます。

山を越えたら急斜面になっていること

重力で落下する力を地上の風に変えるためには、地形が急斜面になっていることが必要です。

これだけの知識を持って、上の問15を見直してみると、
「湿潤で不安定で」
が排除されるのは、一目で判断できますね。
不安定な条件では「だし」がはっせいしにくいので。

また、逆転層は極めて安定な大気の構造です。
しかも低温であることが「おろし」の条件ですから、
「低温で逆転層が」
が正解であることが確認できました。

以上は、非常に概念的な解説ですから、専門家から見ると不備もあるでしょう。
きちんと調べたい方は、専門の研究がたくさん報告されているので、独自に調べてください。


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「気象庁」および一般財団法人「気象業務支援センター」とは関係ありません。
記事中で使用している問題文は、一般財団法人「気象業務支援センター」に届けて了解を頂いております。

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コメント

  1. Yoshiken より:

    この問題、問題集に載っており勉強開始後、比較的早い時期に出会いました。
    当時は面食らったものです。

    「おろし」と「フェーン」は同じ原理で起きますが、どちらも水分を全部山頂で
    落とせば、下降時は乾燥断熱減率で空気塊の温度は上昇します。
    フェーンの場合、下層では、空気塊の温度は周辺の空気より高温になりますが、
    それにも関わらず空気塊が下降し続けるのは、空気塊が周辺の空気より乾燥
    しているからなのでしょうか。(乾燥空気は湿潤空気より密度が大きい)

    一般に大気そのものが乾燥断熱減率で減少・・・なんてことは現実的に
    ないでしょうし。

    今更ですがこの記事をみてそんなことを考え込んでしまいました。