第46回気象予報士試験 実技2 問2

第46回気象予報士試験 実技2 問2(1)

この問題は戸惑いますよね。
低気圧が西に戻るという、特殊な状況を取り上げているので、難しいと思います。

図1で東に進むと言われた低気圧が、実は違っていたと言われて、じゃあその低気圧はどこに行ったのか?って。

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ひとつの画像に詰め込みすぎたかな。

12時間後の低気圧はどこにいいるのか?
北海道方面の低気圧は違うと問題文で指摘されているので、沿海州の低気圧しかありませんね。

状況が良く分からないとしても、ともかくこの低気圧に着目して答えます。

中心位置:
北緯は、北緯40°と北緯50°の4:6の位置なので、「北緯44°」
東経は、東経130°と東経150°を7:3の位置だから、「東経137°」
正確に定規で測ってみると「東経136°」の方が正しいようです。
(解答例では、どちらも正解になっています)

中心気圧:1000hPaから2本内側なので、「992hPa」

移動方向:赤い矢印の方向だから、「西北西」

速さ:赤い矢印の長さは、緯度10°間(600海里)の1/6なので距離にして100海里。
これを12時間で移動したのだから、
100海里/12時間=8.3ノット
5ノット刻みにすると「10ノット」

12時間後から24時間後までの移動と盛衰:
これも難しいですね。

24時間後の図6中を見ても、該当しそうな低気圧が見当たりません。
さぁ、困りました。
ここでヒントになるのが、500hPaの正渦度極大域なのです。

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初期時刻では、地上低気圧中心のほぼ真上に+240×106/sの正渦度極大域が存在しています。

12時間後の図5においては、+352×106/sの正渦度極大域と地上低気圧が連動している様子が伺えます。

24時間後の図6では、南下した+266×106/sの正渦度極大域付近に地上低気圧がありません。

消滅したのかもしれません。
あるいは、低気圧として存在していても4hPaより弱いのかもしれません。
地上天気図の等圧線は4hPa刻みで描かれるので、仮に下図のように4hPaより弱い低気圧が存在しても図示されません。

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例えば、図6中に2hPa刻みの等圧線を仮に書き加えてみると、等圧線間隔が広い北緯42°東経138°付近に、下図のような小さな低気圧が示されるかもしれません。

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このように推察していくと、選択肢は「カ:南へ進み衰弱する」を選ぶことになります。

第46回気象予報士試験 実技2 問2(2)

これはまた、非常に微細な問題ですね。
図を拡大して示せば、このようになります。

j46k2q02z05

前1時間の移動方向:上の図から判断して「西北西」

後12時間の移動方向:上の図から判断して「南東」

速さ:青い矢印の長さが、私のプリント実測で8.5mm、緯度10°間(600海里)が31.5mmだから、162海里になります。
162海里を12時間で移動したのだから、162/12=13.5なので「14ノット」になりました。

しかし、模範解答を見ると正解は「12ノット」になっています。

気象業務支援センター発行の「問題と正解」を取り寄せて手順を確認したところ、考え方は間違っていないようです。
何度か測定を繰り返しましたが、私のプリントでは13ノットまでしか短縮できませんでした。

実際の試験会場で配布された問題用紙が基準なのでなんとも言えません。
しかし、低気圧の『L』の字のどの部分を基準にするかで、1ノットの狂いを生じます。

採点基準で許容範囲を設定しているとは思いますが、この問題で1ノット刻みの解答を求めるのは、酷なような気がします。

第46回気象予報士試験 実技2 問2(3)

丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。

[1]南北の風の特徴

気圧の谷は下の図の赤い線で示したように、等圧線が鋭角に曲がっている部分です。

さらに、北側と南側のおよその守備範囲を青と赤でマーキングしました。
これより多少広くても構いません。

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見たママを忠実に再現してみましょう。

風向:北側では北~北北東
南側では西北西~西南西

風速:北側では30~45ノットと強い
南側では15~20ノットと弱い

とりあえず解答文を書いてみたら
「気圧の谷の北側では北~北北東の風で風速が30~45ノットと南側より強く、南側では西北西~西南西の風で風速は15~20ノットと北側より弱い。」(69字)

なんでもかんでも書けばよいというものではありません、いくらなんでも長すぎですね。
少し削減します。

「気圧の谷の北側では風向は北~北北東で風速30~45ノットと強く、南側では西寄りの風で北側よりも風速は弱い。」(53字)
まぁだ8字多いが、どう削ったら良いものか。

わからん!
このまま、字余りで解答にします。

正解は
「気圧の谷の北側では北または北東の風、南側では西寄りの風が予想され、風速は北側の方が強い。」(44字)

なるほどねぇ。

風速値を書けとは指定されていないんですね。
北側と南側を比較して風速の特徴を⇒「風速は北側の方が強い」
となるわけですね。

もうひとつ大事なことがあります。
正解の文章には重要なキーワードがありますが、気が付きましたか。

それは『予想され』です。

問題文をよく読むと、『予想される地上風』の特徴を述べよとなっているので、『予想される』という意味を含ませるべきです。
これって、案外重要なポイントですよ。

よくある間違いですが、予想天気図を見ているのに『風速は5ノットだった』なんて過去形で書いてはいけません

予想天気図の本質をまったく理解していないと判断されて、点数がもらえないでしょう。
これはしばしばあるので、よく覚えておいてください。

[2]500hPaの気圧の谷との関係

図6上に、地上の気圧の谷を赤い線で、500hPaの気圧の谷を緑の線で描いてみました。

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ここでの問題文の指定は、『比較して位置関係を述べよ』ですね。

『500hPa面の気圧の谷は、地上の気圧の谷の南側に位置している。』(32字)
としました。

模範解答は
『500hPa面の気圧の谷は、地上の気圧の谷の南側に予想される。』(31字)

m108019
ほらほら、今、注意したばかりだろう。

過去形じゃないからまだマシかもしれないけど、

予想天気図だから、予想だと示さなくちゃいかんのだよ。

[3]850hPa面の気温分布と鉛直流の分布

地上の気圧の谷は等圧線の鋭角な曲線で、500hPa面の気圧の谷は等高度線の鋭角な曲線で見当をつけてラインを定めましたが、850hPa面の気圧の谷を定める基準線がありません。

さて、どうしましょうか。

地上の気圧の谷のラインが分かっています。
500hPa面の気圧の谷のラインが分かっています。

問題文(3)[2]により、『この気圧の谷は上空に連なる立体構造をしている』と宣言されていますから、850hPa面の気圧の谷は、地上と500hPa面の間にあるといえます。

すると、こんな位置関係が明らかになりますね。

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この紫色のラインを850hPa面の気圧の谷として、以下の解析をします。

気温分布の特徴:20字で

等温線を堺にして、暖色・寒色のイメージで塗り分けてみました。

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実際の試験会場で、ここまで丁寧塗り分ける必要はありません。
気圧の谷のラインと重なっているのは、-15℃の等温線ですから、このラインの確認だけでも十分でしょう。

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「気圧の谷の北側では南側よりも気温が高い。」(20字)
前問の注意を受けて「予想される」を入れたかったのですが、文字数の制限が厳しいのでやめました。

模範解答は
「気圧の谷の北側は高温、南側は低温である。」(20字)

「予想される」の文言がありませんが、それはいいようですね。
表現は違いますが、内容は同じだと判断して良いでしょう。

鉛直流分布の特徴:25字で

縦線のハッチングのエリアが上昇流域です。
上昇流域を赤色で、下降流域をグリーンで色分けしました。

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前問とまったく同じパターンですね。

高温が上昇流域、低温が下降流域に置き換わるので文字数が4文字増えるということかな。

「気圧の谷の北側は上昇流域、南側は下降流域である。」(24字)

非常に珍しいことに、模範解答とまったく同じでした。

[4]気圧の谷が東経140℃と交差する緯度

25日21時、あるいは26日21時と指定されたときに、どの図を見たら良いか瞬間的に判断できません。

わたしが以前から提案していることですが、試験の最初に問題用紙の隅に時刻をメモしておく方法を再度お勧めします。

今回の問題については、こんなメモです。

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このメモをみれば、25日21時は12時間後予想図、26日21時は36時間後予想図であることがひと目で分かります。

25日21時(12時間後)は図5(中)を見ます。

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気圧の谷は青いラインなので、東経140°tの交点は赤丸部分ですから
25日21時:北緯「45°」となります。

同様に26日21時(36時間後)は図7(中)を見ます。

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気圧の谷は青いラインなので、東経140°tの交点は赤丸部分ですから
26日21時:北緯「37°」となります。

第46回気象予報士試験 実技2 問2(4)

丸囲み数字は、機種によっては文字化けするので[1][2]を使います。

『場』の概念として、「その場の状況を忠実に文字で表現する」ことをわたしは提案していますが、今回の問題は若干様子が違います。

それは、『特徴を、図7と比較して』と指定されていることです。

単純に写真で写したような場の表現だけではなく、図7からの変化や動きを加味しなければなりません。
それだけ、難度の高い問題と言えます。

最初に、図8上の朝鮮半島北部の500hPa面のトラフを確認しておきましょう。

j46k2q02z24

図7上のトラフが南下して、図8下に移動して、このような位置関係になります。

トラフに関連する下層の状況であれば、一般的にトラフの南東部に着目することになります。

[1]850hPa温度場(図8下)20字で

j46k2q02z22

等温線を比較してみると、九州北部から四国を通る-9℃等温線の形の変化に気づきます。
どうやらこれが着目点のようです。

さて、これを20字でどう表現するか、難問です。

「トラフ南東部で等温線が北に凸になる。」(18字)

模範解答は、
「朝鮮半島東岸で等温線が北に凸になる。」(18字)

そうか、場所を示す言葉が思いつかなかったんですよ。
九州北部ってのもどうかなと思って。

[2]700hPa鉛直流場(図8下)

j46k2q02z23

上昇流域に赤色で着色しました。

さて、この変化をどう表現しますかねぇ。

「日本海の西半分がほぼ上昇流域になる。」(18字)

どう書いたら良いのか見当がつかずに、こんな表現にしましたが、模範解答は
「日本海西部に上昇流域が進んでくる。」(17字)

『集中する』なら分かるが、『進んでくる』なんて表現は、絶対に思いつかない。
すごく難しいです。

[3]降水分布(図8中)

j46k2q02z21

さて、これも困りましたねぇ。

どこに着目したら良いのか、さっぱり見当がつきません。

わけも分からず書いた答えがこれ
「日本列島を覆っていた降水域が分散する。」(19字)

模範解答は、
「日本海西部に新たな降水域が出現する。」(18字)

北上大の解答は口から出任せだから間違っているのは仕方ないとしても、新たな降水域ってどこだろう?

実は、下図の赤丸の部分なんです。

j46k2q02z25

上昇流域と重ねて考えると分かるのかもしれませんが、これは難しいですね。

模範解答

j46k2q02ans

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コメント

  1. 古久根 敦 より:

    北上大さん,お疲れ様です.

    一つだけ,皆さんにも.

    私が予報士試験対策時にしばらく使ってしまっていた,実は間違った表現についてです(^0^;)

    +240×106/sの正渦度極大域,ものすごく違和感を感じる表現なのですが,どう思われますか?

    私も対策時の初期の頃に間違って「極大域」と思わず解答していたことがあります(^0^;)

    「極大域」というものは存在しないと思います.問題の一つの着眼としては,正渦度極大値が示される場所か,もしくは正渦度域として広がっている領域のどちらかのはずです.

    「極大」はピンポイントなこと,「域」は範囲という広がりの分布.

    ちなみに,この問題で,支援センターでも正渦度域に着眼した解説になっていますが,最盛期から衰弱期へと向かう低気圧において,鉛直方向に上層と地上の気圧の谷の軸が直立することが前提条件ですので,要注意です.低気圧のライフサイクルの判断や,立体構造が完全に把握できていないと,危険な判断材料になります.

    なので,私の復習の手引きでは判断材料としてあえて除外しました.

    これをライフサイクルや立体構造を意識しないで,そのまま受け入れてしまうと,発生期や発達期までも,正渦度極大値を地上低気圧の位置の手がかりにしてしまう可能性もあり,結構危険な判断です(^0^;) もちろん,予報士試験レベルでも,特に発達期での気圧の谷の軸の傾きは頻出なので間違えないとは思います.あくまで上層のトラフを解析する時の判断材料として正渦度極大値は利用しますが.

    問題では,このこともあるのか,私の復習の手引きでも紹介した,低気圧周辺の気圧の谷か,下層の乾燥空気の流入状況で判断するのが最も無難な判断だと思っています.

    なぜ,この問題で,あえて16方位などの方向をダイレクトには問わず,「選択肢」にしていて,しかも4方位という形で問われたのか,とても意味深い出題だと思います.

    • 北上大 より:

      古久根さん、コメントありがとうございます。

      正直に言うと、渦度極大域の表現に対してわたしも違和感を覚えました。
      極大値はあるけど、極大域って?
      地形図でいうと、山の『山頂部分』を言いたいのですが、うまい表現が思いつきません。

      ご指摘のように、支援センターの「問題と正解」では、渦度極大域を使っているので、流用させていただいた次第です。

      これは、予報士の試験にしてはかなりレベルの高い難解な問題に感じます。
      おそらくわたしが受験したら、落第でした。

      わたしの理解を超える問題なので、ここでは、支援センターの解説を準用したままにしておきます。
      解説、ありがとうございました。



      古久根さんから指摘されて、気象庁の資料で「渦度極大域」の表現があるのかちょっと調べてみたら、あることはあるようです。

      「予報作業における渦位の利用について」
      http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/19/chapter3.pdf



      また、第40回実技1問2(3)でこんな問題がありました。

      次に関する特徴を、地上じょう乱からみた相対位置を含めて、25字程度で述べよ。
      [3]500hPaの正渦度極大域との位置関係

      解答例
      [3]地上じょう乱と同じ位置に正渦度極大域がある。

      正式な出題として使われている用語なので、これは慣れるしかないようですね。

      • 古久根 敦 より:

        北上大さん,ありがとうございます!

        実は,私が試験対策していたとき,正渦度極大域という言葉を使って解答したら,先輩予報士さんである先生から「正渦度極大域という用語はふさわしくない.正渦度域となっていて極大も見られる」というような表現にしなさいと指導されました.

        とはいえ,北上大さんのおっしゃるとおり,現業でも正渦度極大域という言葉が使われていますが,予報士試験では,正渦度極大値,正渦度移流域,正渦度域という用語を使うようにオススメしています.でも,このあたり統一されてないんですよねぇ,試験でも(^0^;)