丸囲み数字は一部の機種で文字化けになるので、ここでは[1][2]の表示をします。
目次
第48回気象予報士試験 専門知識問1
第1問から、いきなり難しい問題です。
実践だったら、あとに回したくなる難しさです。
まず、特徴的な『C』を処理しましょう。
『A』と『B』は雨が降ったり止んだりがはっきりしませんが、『C』は低気圧にともなう前線の帯状降水帯にあり、連続的な降水ありと判断できます。
連続的に降水が続いていいるので、ウインドプロファイラのデータが上層まできれいに表示されているはずです。
(ウインドプロファイラでは。晴れて湿度が低い空間の情報はしばしば欠落しますから)こういう目で見ると『C』に該当するのは『ア』しか考えられません。
『A』と『B』が、『イ』と『ウ』のどちらに該当するかという問題です。
『A』のレーダー解析図を見ると、14時・16時・18時が、晴・雨・晴の様に見えます。
ウインドプロファイラの観測高度が、晴れ=低高度、雨=高高度の傾向があるので、『A』には『ウ』が該当するような印象を受けますが、『イ』のようでもあり、はっきりしません。
与えられたウインドプロファイラの図には、降水粒子の鉛直速度が表示されていません。
つまり、『風の情報だけで判断しなさい』という問いかけのようです。
風の情報に注目してみると、地上から2kmまでの風の動きが、『イ』と『ウ』でまったく違います。
『イ』では、東の風が16時くらいから北東の風に変わる変化がありました。
『ウ』では、南の風が18時くらいに南東から東の風に変わりました。
16時と18時に、風のシアラインが通過したのです。
シアラインの通過と言えば、気圧の谷とか前線とか低気圧とかの擾乱が関係しているのが普通です。
問題の中から擾乱を探してみましょう。
『地上気圧6時間予想図』の中に、『L』マークの低気圧がありますね。
太平洋上の低気圧は関係ありませんが、山梨・長野県境付近にある低気圧です。
水戸付近の『A』と熊谷付近の『B』の距離は、大雑把な見当で100km程度です。
『B』と低気圧中心との距離も同じくらいなので、100km程度です。
この低気圧が東進して、BとAを通過するのはいつ頃かを推測してみましょう。
一般的な低気圧の東進速度を仮定して20ノットとしてみましょう。
20ノットは時速37キロですから、100km進むのにおよそ3時間かかります。
この図は、15時の図なので、低気圧が『B』を通過するのは18時頃、『A』を通過するのは21時頃と見込まれます。
低気圧の移動速度が、10ノットなら『B』点は6時間後の21時、『A』が翌日になり、
低気圧の移動速度が、30ノットなら『B』の通過は17時、『A』の通過は19時頃になります。
つまり整理すると、低気圧の東進移動速度が常識的な10~30ノットであれば、
『B』の低気圧通過は17時~21時
『A』の低気圧通過は19時~翌日
になります。
ウインドプロファイラの時系列から、シアラインの通過時刻を読み取ると、上の図で示したように16時と18時の2点です2箇所です。
16時はどれにも該当しませんが、『ウ』の18時が『B』と合致しますね。
そういうわけで、『B』⇒『ウ』で『A』⇒『イ』となります。
仮に『イ』の16時の変化を『B』点の低気圧通過とすると、低気圧の移動速度が時速100キロになってしまうので現実的ではありません。
正解は[4]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問2
この問題では、(b)が難解です。
でもね、(a)と(c)が『誤』であることは、すぐに分かります。
(a)と(c)が『誤』であれば、選択肢は自動的に[5]に決まるので(b)が分からなくても正解が得られるのです。
(a)は『誤』
領域『ア』ではレーダーに近づく成分が強い風が吹いていますから、レーダーから遠ざかる成分である南西の風は吹きません。
レーダーに近づく成分の風の判断方法:
レーダーを中心とする円を描いて、観測点で接戦を引きます。
その接線の外側から観測点に向かう風はレーダーに近づく成分を有しています。
逆に、接線の内側から観測点に向かう風は、レーダーから遠ざかる成分を有しています。
(b)は『正』
この問題はどうにも納得がいきません。
『どの高度においても水平方向に一様に風が吹いていると仮定したとき』こんなレーダーチャートが得られるはずがありません。
何を言いたいかというと、『水平方向に一様に』の意味が曖昧です。
『一様に』は『まったく同じ』とも解釈できます。
そしたら、風の速度も同じと解釈できるので、こんなチャートは出来ません。
好意的に解釈すれば、この『一様に』は、『風向が同じ』を意味しているのでしょう。
水平方向の風向が同じと解釈すれば、こんな図が描けます。
つまり、50km地点の風速が大きいので、高さ方向に風のシアがあることになリ、(b)は『正』になります。
こんないい加減な問題なんかやってられるかとへそを曲げて(b)を判断しなくても、(a)と(c)で選択肢[5]が決まるから、関係ないんですけどね。
(c)は『誤』
レーダーに近づく風が、レーダーの頭を超えた途端に遠ざかる風に変わるので、レーダーの真上である領域『イ』では、色が変わるのが当然なのです。
正解は[5]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問3
レーダーの異常伝搬については、気象庁サイトに詳しく説明されています。
・異常伝搬に伴うエコー
気象レーダーの発する電波は、通常なら直進して山岳などの上空を通過しますが、大気の屈折率の分布状態に応じて電波が曲げられ、(a)通常の伝搬経路から大きく外れることがあります。この現象を「異常伝搬」と呼びます。送信電波が曲げられて地表面や地表の構造物などに当たって反射すると、降水がないところに強いエコーが現れる場合があります。この現象は電波を用いた観測の特性上避けられないもので、データの品質管理において(b)完全に取り除くことはできません。
大気の屈折率は気温や湿度などにより決まります。異常伝搬は、気温が高度とともに急増するなど(c)屈折率が高さ方向に大きく変化する場合に発生します。具体的な気象条件として、(d)高気圧内の下降気流や夜間の放射冷却、海陸風による温度の異なる空気の移流などが挙げられます。また海上は地形の起伏がない分、異常伝搬の原因となる大気構造を安定して形成しやすいといった特徴があります。
この解説の該当箇所にマーカーでラインを引いたので、正誤の判断ができるはずです。
(a)は『正』
(b)は『誤』
(c)は『誤』
(d)は『正』
正解は[2]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問4
(a)は『誤』
鉛直p速度とは、上昇流か下降流の強さを意味しますが、状況によって簡単に変わってしまうので保存されません。
でも、どこからこんな発想が出たのか不思議です。
(b)は『誤』
トラフを追いかけるときに正渦度の極大値を目印にすることで、実技試験ではお馴染みのはずです。渦度は、(a)で言うところの保存量とみなすことができます。
渦度は、北半球では反時計回りで正、南半球では時計回りなので『負』になります。
(c)は『正』
湿数は気温と露点温度の温度差です。
湿数がゼロとは気温と露点温度が同じなので、飽和している状態、つまり相対湿度は100%です。
正解は[5]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問5
(a)は『誤』
第一推定値には、前回の予報値が用いられます。
気候値ではありません。
気候値ってのは、平年値(過去30年間の平均値)のことよ。
日々激しく変化する数値予報の初期値として、平年値なんか使うはずがないでしょう。
子供だって分かる話だわ、これは。
(b)は『正』
実際の観測値は種々のトラブルがあるので、そのまま使えないケースも多いのが現実です。
観測値は、品質管理処理によって異常値を取り除きます。
観測値と第一推定値の差(D値)の差に応じてエラーチェックを行います。
周囲の状況を考慮した上で、基準値よりも差が大きい場合は、除去されます。
(c)は『誤』
客観解析の手法によって、全体的なバランスを考慮して初期値が作成されます。
(b)の理屈と同じで、格子点上の測定値であっても、バランス優先の初期値が与えられますから、観測値が格子点の解析値になるとは限りません。
正解は[3]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問6
なかなか微妙な問題です。
A、B、Cの順に見ていきましょう。
図中の赤いラインは、等相当温位線集中帯の南縁を示しており、寒冷前線位置を示していると見て良いと思います。
[A]は『ウ』
Aは、静岡から紀伊半島南端にかけて赤い色の線状降水帯があり、『ア』か『ウ』が該当しそうです。
四国の南縁付近から九州南部にかけてのラインが降水帯と合致しているので『ウ』を選びます。
実は『ア』は、下に書いた[B]の特徴にぴったりなので先に選んでしまいまして、『ウ』は残り物なのです。
[B]は『ア』
Bは、愛知から静岡にかけて強降水域が集中しています。
『ア』のこの領域を見ると、風向が大きく変わり低気圧の存在を伺わせます。
九州、四国には降水が見られず、北西~西風なので、寒冷前線が通過して寒域に入っているものと推測できます。
『ア』のラインは、これらの推測と矛盾しません。
[C]は『イ』
Cは、線状降水帯の湾曲が大きく、『イ』の寒冷前線ラインと合致しています。
また『イ』では、前線が東北地方にまで伸びており、青森の西の日本海に旋回流の中心が観測できます。
この付近に低気圧があり、青森~北海道に雨をもたらしています。
この低気圧から北海道に閉塞前線が伸びているとも読み取れます。
正解は[4]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問7
これは、ほとんど悩む要素が存在しないサービス問題ですね。
こんなところでミスをしてはいけません。
降水確率と同じ感じです。
降水確率が95%だとしても
- 強い雨が降る(降水強度が強い)わけではありません
- 何回も雨が降る(降水回数が多い)わけではありません
- 雨が振り続ける(降水継続時間が長い)わけではありません。
これと同じことです。
[a]は『誤』
雷の発生確率は、強度には関係ありません。
[b]は『誤』
雷の発生確率は、回数には関係ありません。
[c]は『誤』
雷の発生確率は、継続時間には関係ありません。
正解は[5]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問8
[a]は『正』
問題文通りで、ひまわり8号は世界でもトップクラスの観測センサーAHI(Advanced Himawari Imager)を搭載しており、火山の噴煙も鮮明に見ることができます。
[b]は『誤』
可視バンドの分解能は0.5~1km、赤外バンドで2kmです。
[c]は『正』
問題文通りです。
正解は[2]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問9
[a]は『誤』
積乱雲が大規模に発生する前の下層から中層の大気は、非常に湿った状態であるため、気温減率が乾燥断熱減率より大きくなることはありません。
つまり、絶対不安定にはなりません。
[b]は『正』
問題文通り、積乱雲の寿命は30分~1時間程度です。
[c]は『正』
風の鉛直シアーが強いことで、上昇流と下降流の位置がズレるためにぶつかり合うことがないので、長時間に渡って積乱雲が成長を続けます。
[d]は『正』
[a]と対比する形になりますが、対流不安定の状態では積乱雲が発達しやすいす。
正解は[1]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問10
[a]は『誤』
気象庁、国土交通省、地方自治体の雨量計のデータ、ウインドプロファイラ、ラジオゾンデ、Xバンドレーダーなどを活用して、補正を行っています。
[b]は『正』
問題文通りです。
[d]は『誤』
高解像降水ナウキャストでは、地表付近の風、気温、水蒸気量から積乱雲の発生を推定する手法を採用しています。
また、微弱なレーダーエコーが交差するときに積乱雲の発生を予測する手法も併用しています。
正解は[3]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問11
[a]は『正』
これは台風の定番問題です。
『台風の真上に必ず暖気核』と覚えておいてください。
下図は、台風断面の気温偏差分布図です。(実は台風ではなくハリケーンです ^_^;)
[b]は『誤』
発達した台風は300hPaより高くまで成長しますから、300hPaで常に時計回りの風とは言えません。
上の図でも、300hPa付近はまだ暖気核の下に位置しており上昇流域だと思われます。
[c]は『正』
気象予報士の古久根さんが復習の手引き「第44回気象予報士試験一般」に分かりやすい図を提示しています。(現在は公開されていません)
正解は[1]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問12
(a)は『誤』
(b)は『正』
気候区が違う地域を有する予報区では、府県予報区を細分して予報をする場合があります。
東京(都心/離島)、青森(津軽/下北)、福島(中通り/会津)、鹿児島(鹿児島/奄美)など。
(c)は『正』
上の石川県と福島県の2つの表にも示しているように、信頼度はA、B、Cの三段階に分けて表示しています。
正解は[3]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問13
(a)は『誤』
警報や注意報の発表や解除は,原則として5 時,11 時,17 時の天気予報の発表時
刻にあわせて実施することがあらかじめ定められている。
こんな定めはありません。
時刻にかかわらず、ある基準値を超えると予想するときに発表します。
(b)は『誤』
警報や注意報は,いくつかの市町村をまとめた地域を対象に発表されており,市
町村それぞれは対象になっていない。
基本的に、市町村ごとに基準値を定めています。
(c)は『誤』
警報や注意報は,⾵速や指数等その基準の対象となる要素が,あらかじめ設定され
た基準値を超えたことが確認されてから発表される。
超えることが予想されるときに発表されます。
(d)は『誤』
警報や注意報の基準値は⼀つの府県予報区内では基本的に同じである。府県予報
区内に複数の発表区域が設定されているのは,激しい現象が局地的に発⽣すること
があるためである。
一つの府県予報区内では同じではなく、市町村ごとに異なっています。
正解は[5]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問14
(a)は『誤』
台⾵の中⼼位置(予報円),中⼼気圧,最⼤⾵速,最⼤瞬間⾵速,暴⾵警戒域が含まれている。
台風の予報は、3日先までは詳しく強度予報を含みますが、5日先までの予報は、予報円だけにとどめています。
(b)は『正』
4日以降に勢力が弱まるとか温帯低気圧に変わるとか、台風でなくなる予想の場合は、台風予報は行わないことがあります。
(c)は『正』
まだ台風になっていない、いわゆる「台風の卵」が24時間以内に台風に発達して概ね300km以内の日本近海に近づく予想の場合に、「発達する熱帯低気圧に関する情報」が発表されます。
(d)は『誤』
「⼤きさ」は暴⾵域(⾵速25m/s 以上の⾵が吹いているか,吹く可能性がある範囲)
の半径で,「強さ」は最⼤⾵速で,階級を区分している。
強⾵域(⾵速15m/s 以上の⾵が吹いているか,吹く可能性がある範囲)
正解は[4]です。
第48回気象予報士試験 専門知識問15
(a)は『東』
(b)は『不活発』
(c)は『弱まる』
エルニーニョ/ラニーニャについては、気象庁のサイトで学習してください。
正解は[1]です。