温位エマグラムの読み方が分かりますか。

温位エマグラムって、あまり馴染みがありませんが、大気の安定度を観察するのに適した指標です。

通常のエマグラムは横軸が気温ですが、温位エマグラムは横軸が温位になっています、

例えばこんな実践的な問題があります。


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第39回専門知識 問9

s39kq09z01

見慣れないグラフなので、どう判断したら良いか分からない人も多いことでしょう。

でも、有益なグラフなので、今後出題頻度が増えるかもしれませんよ。

温位エマグラムの意味合いを知るヒントにするために、まず、この問題を解いてみてください。

第37回一般知識 問3

i37kq03z01

温位エマグラムの基本概念の確認です。

最初の選択は、鉛直方向に温位が変化しないのは「乾燥断熱線」か「湿潤断熱線」かを考えます。

乾燥空気を断熱的に持ち上げたときに乾燥断熱線に沿って動きますが、このときに温位は保存されます。
だから、温位が変化しない(直立)なのは、乾燥断熱線です。

これで、選択肢[2]と[4]が消えました。 [1][2][3][4][5]

次に、湿潤断熱線が、右に傾いているか、左に傾いているかの選択です。
実際のエマグラム用紙を思い出してください。

20141225d

乾燥断熱線よりも湿潤断熱戦の気温減率が小さいので、右側に位置しますね。

すると、湿潤断熱線が左に傾いている選択肢[1]は『誤』あることが分かります。
[1][2][3][4][5]

選択肢[3][5]のどちらかを選ぶことになります。

上の、色付き図でも分かるように
絶対安定領域は、湿潤断熱線より右に傾いており
絶対不安定領域は、乾燥断熱線より左に傾いています。

すると正解は選択肢[3]になります。


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温位線の意味

大気の温位は通常は安定な状態にあるものです。

なぜなら、不安定な状態は対流活動によって是正されるからです。

特に、上層においては安定な状態が多いので、温位線は自然に右に傾いているものです。

  • 温位が左に傾いている状態:
    大気が不安定な状態を意味しており、降水が予想されます。
  • 温位が鉛直である状態:
    中立で、条件付き不安定な状態を示しています。
    降水の可能性も否定できません。
  • 温位が右に傾いている状態:
    傾き角度が大きいほど安定で、降水はないでしょう。
  • 温位線が急激に右に折れている状態:
    極めて安定な層であり、前線に伴う逆転層や沈降性の逆転層の可能性があります。

相当温位線の意味

相当温位は水蒸気の潜熱エネルギーを含んだ数値です。

  • 温位線に近いとき:
    水蒸気量が少なく乾燥している状態です。
    温位と相当温位が近いのは、水蒸気量が少ないときです。
    水蒸気量が多くなれば相当温位の値は大きくなりますからね。
  • 温位線から離れているとき:
    水蒸気量が多く湿潤な状態です。
    空気が湿潤なときには、相当温位は水蒸気の潜熱エネルギーを持っているので温位よりも数値が大きくなりますから、グラフの上では温位線から右側に離れます。
  • 相当温位線が右に傾いている状態:
    大気が安定な状態です。
  • 相当温位線が鉛直である状態:
    大気の状態は不安定な要素が強いです。
  • 相当温位線が左に傾いている状態:
    対流不安定を引き起こす状態です。

飽和相当温位線の意味

飽和相当温位は、通常耳にすることはありませんね。

飽和した状態の相当温位を計算した結果で、その大気が含有できる水蒸気量を示します。

s39kq09z06

温位線から離れていれば、含有できる水蒸気量が多い、大気が暖かい状態です。
逆に、温位線に近ければ含有できる水蒸気量が少ない、つまり大気が冷たい状態です。

相互の位置関係の意味

実際の大気が飽和していれば、相当温位線と飽和相当温位線が一致して重なります。
飽和しているので、相対湿度100%です。

実際の大気が乾燥していれば、相当温位線は飽和相当温位線から離れます。
相当温位線と温位線が重なっていれば、水蒸気がゼロ、つまり相対湿度0%です。

s39kq09z07

相当温位線との離れ具合で、大気の湿潤-乾燥状態を示します。
ちょっと乱暴な表現ですが、相当温位線の位置は、相対湿度計のような意味合いになります。

s39kq09z08

目盛間隔については検証していないので、中央にあっても相対湿度が50%かどうかは分かりません。

通常のエマグラムの状態曲線には、露点温度を表示して乾燥度合いを観察しますが、その代わりの役割と思っても良いかもしれません。

図の解析をしましょう

(ア)の解析

s39kq09z02

全層に渡って温位線と飽和相当温位線が近いので、大気がかなり冷たい状態です。

700hPa付近に急激な変化をする安定層があるので、前線面の存在が考えられます。

700hPa より下層で、温位線、相当温位線ともに鉛直に近く立ち上がっているので、大気の安定性は小さく降水も考えられます。

(イ)の解析

s39kq09z03

最初に目につくのは、750hPa付近の急激な変化です。
これは、沈降性の逆転層で観られる特徴的なグラフで、逆転層付近で一気に乾燥しています。

逆転層から上は、概ね乾燥しています。

逆転層から下の層は、温位線と飽和相当温位線が近いので水蒸気量が多くやや湿っているので、雲があるかもしれません。
また、温位線が安定な傾きなので降水はない模様です。

(ウ)の解析

s39kq09z04

720hPa付近から下では、相当温位線が大きく左に傾いているので、対流不安定の状態です。

現在は乾燥していますが飽和水蒸気量が大きいので、上昇流が発生すると途端に雷雨が発生する可能性があります。

(エ)の解析

s39kq09z05

下層の温位線と飽和相当温位線が大きく離れているので、含有する水蒸気量が多い暖かい大気です。

全層に渡って、相当温位線と飽和相当温位線が絡み合っているので飽和しているようです。

高温多湿の空気塊、いわゆるな暖湿な空気と判断でき、大雨を降らせる状況かもしれません。

判定はどうなる

(a)の判定

『観測地点は強い寒気が流入している領域にあり、周辺では雪やみぞれが観測されている。』

『雪が降るほど気温が低い』ので、(ア)の可能性が高く、逆に暖湿空気の(エ)は該当しません。

★この解釈は間違いです★

『寒気が流入している』ということは、寒冷前線の北側かもしれないと予想できます。
もしそうなら、上空に前線面が、前線性の安定層として存在しているはずです。

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(ア)を見てみましょう。

700hPaに前線性の安定層があり、全体に気温が低い。

安定層の下層では、温位線が鉛直に立っているのでやや不安定で降水の可能性が考えられます。

雪かみぞれが降っているとくれば、(ア)しか考えられませんね。

上記の解説は、わたしがネタ本を見ながら書いたのですが、どうやら解釈が間違っているようです。

解答は (a)=(ア)で変わりませんが、(ア)の状況解釈が違います

過去問の解説に『復習の手引』を提供してくださっている気象予報士の古久根さんからメールで貴重なアドバイスを頂いたので以下に要点を記載します。

内容を拝見すると、論理的な整合性があり、古久根さんの解釈が正しいと思います。
アドバイスありがとうございました。
(印刷されているからと言って、ネタ本が必ずしも当てになるとは限らないなぁ)

(ア)の温位エマグラムを見ると,寒冷前線ではなく、明らかに冬季の日本海側(例えば,輪島)のものに見えます.

なぜか?

温位・相当温位・飽和相当温位が鉛直方向に直立している場合,特に下層ですが,最も可能性を考えてほしいのは「対流」です。

対流し,上下方向に大気がかき回されて,よく混合されるから,温位などで鉛直方向に同じ性質の大気が生まれるわけです。

温位エマグラムで言えば,鉛直方向に直立するという状況です.

(ア)の状況を作り出せる,日本付近で知られている現象は「冬季日本海におけるベナール型対流」です。
いわゆる、筋状雲の要因です。

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大陸からの寒気流入が強い中で,下層にだけ日本海という相対的に暖かい海面からの熱伝導が大気に向かって生じます。

熱を供給された大気は徐々に暖まり,上の層(正確には700hPa付近)との間の温度差を大きくさせます。

一方,上層からの寒気下降によって,断熱昇温した空気と下層との間に逆転層を作り出します。

多くの事例では650~750hPa付近に作られます。
これによって,海面から逆転層の間がフタをされた鍋のような状態になり,鍋の上と下で温度差が大きくなって,ベナール型対流が生じます。

ベナール型対流によって現象としては筋状雲という形で見えてきますが,もっと大事なのは,この対流によって,逆転層より下層の大気が混合されているということです.対流によって大気をかき混ぜているわけです。

かき混ぜられたら,逆転層より下層の大気は均質,つまり温位も相当温位も同じ大気になります。

こうして,鉛直方向に直立した状況になります。

ということで,(ア)の解説を寒冷前線を理由にするのは間違いだと思うのです。

!!!大切なこと!!!

温位エマグラムで鉛直方向に直立している層を見つけたら,まずは対流を考えなさい!

以下の論文でも,温位エマグラムが見られますので,参考情報として

「冬期の日本海上の安定層の特徴」山岸米二郎
http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1980/1980_05_0321.pdf

図3.1,図3.2が要注目です!

20170111b

画像出典;山岸米二郎「冬期の日本海上の安定層の特徴」

(ア)の温位エマグラムとそっくりですね

ちなみにですが,上記のような冬季日本海によく見られる温位エマグラムは,大気境界層(一般的には高度2kmより下層)でも日々見られたりします。

一般気象学の図6.24,大気境界層,特に混合層の温位分布が物語っています。
だから混合層なんですけどね。

20170111a

画像出典:一般気象学【第2版】図6.24

対流(上下方向の大気の混合)によって,綺麗な温位エマグラムの直立が見られる,結構なポイントです!

そうそう,対流雲とかで,対流=上昇流と思っている人もいると思いますが,全くの間違いで,対流は上昇流と下降流の両方によって大気を上下方向にかき回すことを言います.

ということで、解答は (a)=(ア)で変わりませんが、(ア)の温位エマグラムは、寒冷前線ではなく冬の日本海側の事象であると訂正します。

(b)の判定

『観測地点の北側には梅雨前線があり、周辺では強い降水が観測されている。』

『梅雨前線の南側』であれば、上空に前線面がないので、逆転層がある(イ)は除外されます。

残るのは(ウ)か(エ)ですが、暖湿空気で激しい雨ならば、全層が飽和している(エ)ですね。

(c)の判定

『観測地点はオホーツク海高気圧の南側にあり、周辺は概ね曇っている。』

オホーツク海高気圧の特徴の一つとして、しばしば大気の下層が低温で逆転層があることです。

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明瞭な逆転層があるのは(イ)です。

上層が乾燥しているので、オホーツク海高気圧の気層として矛盾しません。

正解は

  • (a)=(ア)
  • (b)=(エ)
  • (c)=(イ)

ですから、

正解は [2](ア)(エ)(イ)です。


『気象予報士受験者応援団』は気象予報士北上大が個人で運営しているサイトです。
「気象庁」および一般財団法人「気象業務支援センター」とは関係ありません。
記事中で使用している問題文は、一般財団法人「気象業務支援センター」に届けて了解を頂いております。

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コメント

  1. おかじま より:

    この解説、見逃しておりました。
    疑問がほぼ解消されました。ありがとうございます。
    温位とか相当温位は、実生活での感覚がない概念なのでピンと来ないのですが、
    こういう実気候とリンクして覚えると、一気に理解が進みます。
    あと1ヶ月、頑張ります。

    • 北上大 より:

      おかじまさん、こんにちは。

      お役に立てたようでうれしく思います。
      飽和相当温位なんてあまり聞かない言葉ですから、戸惑いますよね。
      特性を概念として覚えておけば、応用も利きやすいと思います。

      ぜひ合格目指して突き進んでください。

  2. おかじま より:

    いつも拝読して、勉強させて頂いています。
    先般は「ほぼ疑問解消」と申したものの、やはりスッと落ちない疑問について、質問させて下さい。
    「温位は乾燥断熱において保存される」のですが、39回・問9のように、実際の大気では、上空に行くほど温位が高くなっています。普通に乾燥断熱的な大気状態であれば、実際でも鉛直になりそうですが、実際はそうではなく、解説でも「鉛直では降水の可能性も」とあるように、不安定要素が多い状態と受け取れます。
    これは、どう解釈したらよいのでしょうか。実際の大気で、上空に行くほど温位が高くなる要因を教えていただけますでしょうか。(個人的に、温位についてはなかなか概念がつかみ切れていません)。

    • 北上大 より:

      おかじまさん、こんにちは。

      何かひとつ気になることがあると、他のことが手につかなくなりますよね。
      その気持ち、分かります。

      さて、
      >実際の大気で、上空に行くほど温位が高くなる要因を教えていただけますでしょうか。

      この質問にお答えしましょう。
      一言で言えば、重い空気が沈んで軽い空気が浮く現象です。

      まず、実際の対流圏の空気の温位分布を確認しておきましょう。
      一般気象学【第2版】55ページの図3.6をご覧ください。
      null
      赤道から北極まで、地表面から対流圏界面までの温位分布が示されています。
      分布の形の違いはありますが、どの緯度でも上空の温位が大きくなっています。

      温位が高いと言うことは、断熱的に同じ高度に持ってくれば暖かい、つまり軽い空気なのです。

      地球表面に、いろいろな温位の空気が均一に混合されているとしましょう。
      しばらく静置して観察するとどうなるでしょうか。

      重い空気が下の方に沈んで、軽い空気が上の方に浮いてくることは想像できますよね。
      重い空気とは温位が低い空気です。
      軽い空気とは温位が高い空気です。

      空気は重さ(比重)の違いにより、温められて温位が高くなった空気は上昇するものです。
      これが、上空に行くほど温位が高くなる理由です。

      実際には、太陽による加熱と地球の自転という外乱が加わっていろいろな変化が生じますが、上空の温位が高いのは空気の基本的な性質なのです。

  3. おかじま より:

    北上大さま、ありがとうございます。
    「なるほど」と思わず、口にしてしまいました。
    言われてみれば、確かに当たり前のことですね。
    私も、「大気の状態」と「上昇する空気塊」との場合がごっちゃになっていました。
    「温位」に悩まされることもかなり少なくなりそうです。
    あと約2週間、追い込みます。重ねて、ありがとうございました、