第50回気象予報士試験 実技2 問2

第50回気象予報士試験 実技2 問2(1)

初期時刻が4月2日21時ですから、最初に問題用紙の余白にこんな風に書いて、日付が確認できるようにメモしておきましょう

00 4/2 21
12 4/3 09
24 4/3 21
36 4/4 09
48 4/4 21

①低気圧中心の予想位置
図6、7、8、9の地上気圧配置図から、低気圧中心を読み取って解答図に転写すれば、解答図が導かれます。

コンパスで転写してもよいし、緯度経度から読み取ってX印をつけても良いでしょう。
この問題では、大きくずれていなければ大丈夫です。

なお、低気圧の中心位置は、低気圧文字L中心位置です

②穴埋め問題

(a)移動した距離は約『500』海里
緯度10°間は600海里と定義されているので、これを基準に長さを測れば移動距離が計算できます。
ただし、高緯度になると若干縮小されるので、同じ緯度領域で計算する必要があります。
図1に解答図の移動距離を転写すると下図のようになります。

わたしのプリンタ出力では、北緯20°~30°間の長さは34mmで、低気圧の移動距離は28mmでした。
600海里/34mmx28mm=494海里
50海里単位で解答するので、500海里になります。

プリンタの出力は実際の試験問題とは違っていると思いますので、皆さんそれぞれの環境で実際に測定してくださいね。

(b)平均の速さ『20』ノット
ノットの単位位は[海里/hr]ですから、(a)の答えである500海里を24時間でわれば良いのです。
500海里/24hr=20.8ノット
5の倍数で答えるので20ノットになります。

(c)低気圧の移動の速さ『遅く』なります。
①の解答図で判断すれば一目瞭然ですね。
今後の24時間の距離が短くなっています。
 
(d)3月9日9時以降、低気圧の移動方向は『北北東』に変化

(e)3日21時以降は移動の速さが『速く』なる

(f)平均の移動の速さは約『30』ノット
3日21時から4日21時までの移動距離を測定して24で割れば平均速度が計算できます。

わたしのプリントで、北緯30°~40°の長さが30mmでした。
24時間の移動距離が38mmなので
600海里/30mmx38mm=760海里
760海里/24hr=31.7ノット
5ノット単位で答えるので、解答は30ノットになります。

③トラフ位置の解析
トラフの解析は、500hPa面の等高度線と渦度の分布に基づいて判断します。
特に注目すべきは、低気圧性の曲率と正渦度の極大域です。

問題は、00時間と24時間のトラフですが、12時間と36時間も一緒に見てみましょう。
トラフの位置はこんな感じです。
位置を見失わないように秋田(北緯40°東経140°)にマーキングラインを入れています。

上の図のラインを解答用紙に転載すれば解答になります。

2日21時のトラフ位置について、模範解答と合成したところ下図のようになっていました。

赤い線が模範解答です。

わたしの解答は、トラフが負渦度をまたいでいますが、そんなことはありえない現象のようで、模範解答では正渦度域の端で止めています。

解答用紙には細かいグリッドがないので、正否の判断にはあまり影響しないと思いますが、考え方としてトラフは負渦度域をまたがないとおぼえておきましょう。

nyanmonightさんのコメントによって、2020年8月13日追記

『3日9時以降、低気圧の移動方向は北北東に変化し、3日21時以降は移動の速さが速くなる』の要因となる500hPa面のトラフ低気圧との関連時間的変化を35字で。

500hPa面のトラフと低気圧の位置関係を取り出して図にしてみました。

トラフと低気圧を結んだ直線がだんだん短くなっていることが分かりますね。

温帯低気圧が発達する条件のひとつが、上層の気圧の谷(トラフ)と地上低気圧中心を結んだ線が高度と共に西に傾いていることです。
上の図を見ると、2日21時にはトラフと低気圧が遠く離れていますが、時間経過と共に徐々に近づき3日21時にはトラフと低気圧が連携して気圧の谷の軸が西に傾いた関係になっています。
4日9時にはその関係がさらに明確になっています。
このようなことを35字にまとめれば良いのですが、作文が難しいですね。

書くべき項目はこんなことかな。

  • 500hPa面のトラフと低気圧の距離が近づくこと
  • トラフが低気圧の西側にあること
  • 最終的にトラフと低気圧が合体すること

さて、35字にまとめると
『500hPa面のトラフが低気圧の西側から近づいて低気圧と連携する。』(33字)

模範解答は
『低気圧は中国東北区から深まりながら南下するトラフと次第に結びつく。』(33字)

言わんとすることは大体同じなのですが、最大の違いは『深まりながら』が入っているか否か。
深まりながらは当然分かっているのですが、『500hPa面のトラフ低気圧との関連時間的変化』に『深まりながら』を入れるべきなのかの判断が間違ったということでしょうか。

⑤寒冷前線に対応する等温線『9』

寒冷前線解析の指標になるのは通常次のようなところです

  • 等相当温位集中帯の南縁付近
  • 等温線集中帯の南縁付近
  • 上昇流極大域分布
  • 地上低気圧等高線の湾曲部分
  • 地上天気図の降水域
  • 風向の分布の変化ライン

この問題では、850hPaの等温線700hPaの鉛直流に着目してと指定されています。
図9右下を見てすぐに気づくのは、等温線の混み具合と上昇流の極大値ですね。

図示するとこんな具合になります。

この様子を50字で表します。
しかし気象予報士の試験で50字というのはずいぶん長いですね。

北上大の答え
『9℃等温線の北西側では等温線の間隔が南東側よりも密であり、9℃等温線に沿って上昇流極大域が分布している。』(52字)

模範解答は
『9℃の等温線に沿って上昇流の極大点が連なり,その北西側で等温線の間隔が相対的に狭く予想されている。』(49 字)

50字の文章がまったく同じなどありえないので、この程度の出来で良いのではないでしょうか。

第50回気象予報士試験 実技2 問2(2)

①トラフTと日本海西部にある低気圧との位置関係の変化を60字で

3日21時日本海西部のA位置(北緯40°東経131°)にある低気圧が東に10ノットで進んでいます。
このままの速度で東に進めば、12時間後には赤い丸で示したA’辺りの位置に移動する計算です。

12時間後の3日9時の予想図では、BとB’と2つの低気圧があります。
移動速度と方向から判断して、Bを選択します。
B’の位置はA位置から離れすぎているので12時間の移動では無理があるように思います。

さらに12時間後の3日21時にもCとC’の2つの低気圧が予想されていますが、ここは迷わずCですね。
仮に3日9時でB’を選んだらここではC’になりますが、B位置からC’にワープすることは出来ません。

次の12時間後の4日9時にも、DとD’の2つの低気圧があります。
日本の南から北上した低気圧の動きなどから判断して、C位置からD’まで動くのは不自然ですから、Dの位置だと判断しました。

低気圧の位置が決まったら、先のトラフの図と合体させてみます。

この図の状況を60字で説明すればよいですが、どう書くかなぁ。

トラフTは、2日21時には低気圧の北西に遠く離れているが、徐々に南下して3日21時には低気圧の西側に近づき、さらに近づく。』(62字)

模範解答は
トラフTは,2日21時には低気圧の北西側に遠く離れているが,次第に接近し,4日9時には低気圧のすぐ西側に達する。』(56字)

4日9時の状態を問われているのだから、4日9時の言葉を入れるべきだったのかもしれません。

②850hPaの気温に着目した前線であれば、等温線集中体の南縁と見るべきです。
3日21時から4日21時までの前線に赤いラインを付けてみました。

前線の気温が徐々に低下しています。
4日21時の赤いラインは、北海道付近では「南南西-北北東」に見えます。

16方位で答えよとの指定ですが、北とも言い切れず、北と北北東の中間ですよね。

模範解答は『南-北』でしたが、『南南西-北北東』でも正解の扱いになると思いますよ。
8方位で答えよなら『南-北』です。

模範解答

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