温度場の表現について

はじめに フォーラム めざてん掲示板1 温度場の表現について

  • このトピックには11件の返信、1人の参加者があり、最後にYoshikenにより7年、 3ヶ月前に更新されました。
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    • #6099
      ワラビ
      ゲスト

      実技試験にて、温度場についての記述が
      良く求められますが、このタイプの
      問題は、暖気移流絡みで「等温線が北側に凸である」
      (第43回実技2、第46回実技2)と
      高度場絡みで「温度場の谷が、高度場の谷の前面にある」
      (第42回実技1)のパターンが多いような気がします。
      このような問題には、資料を見たまま素直に解答
      するのが鉄則ですが、基本的に降水が予想される
      場合は、この2パターンが顕著な現象なのでしょうか?
      温度場の表現が難しく感じています。

    • #6100
      Yoshiken
      ゲスト

      ワラビさん

      こんにちは。第46回で予報士になった駆け出し(&ペーパー)予報士です。
      このあとベタランの先輩予報士方が登場されることを期待しつつ、私からは
      一般的なことを書きたいと思います。
      まず、「場」については予報士受験者なら誰でも苦労する壁であり私も難儀しました。
      「場」についてはこの掲示板でしっかり解説されておりますので、そのURLを
      最下段に載せておきます。もし、まだ目を通されていないようでしたらぜひご一読
      ください。

      「場」については予報士が着目しなければならない現象(大雑把に言うと降水)に
      寄与することに着目するのが王道です。
      一例を挙げますと、上層トラフの接近と温帯低気圧の発生・発達を関連させる場合、
      それは上層トラフの前面で起こるため、その前面に着目するのが優先事項・・・という
      ことです。第46回の問題も新たな低気圧の発生を示唆する状況を問うていると思います。

      >「温度場の谷が、高度場の谷の前面にある」(第42回実技1)

      もうひとつ。低気圧の発達過程では、高度場の谷の後ろに温度場の谷があることが普通です。
      ここでは、予報士受験者にとっては見慣れない状況になっているので、そういう受験者にとって
      変わった状況の場合は「変わった状況」を書かせる場合が多いと思います。

      基本的には、じょう乱のライフサイクルに応じた典型的な状況を書けばよいと思います。
      台風の発達過程では暖気核の存在や円形の対流雲について記述します。
      一方、温低化過程を辿っている台風の場合は円形の崩れや、寒気の移流の存在を記述させます。
      私がとある模擬試験で温低化台風の温度場の特徴を書いたとき、「暖気核が崩れ東西で温度傾度が
      発生した」というような解答をしましたが、「寒気が移流」ということを書かないとダメだと
      言われました。
      注目すべきじょう乱のライフサイクルと関連付けて着目点を考えると精度のよい解答が可能になる
      かと思います。

      最後に。冒頭でも書きましたが「場」については以下もお読みください。
      そのうえで問題数で慣れるしかないと思います。

      ぜひ頑張ってください!

      「場」について
      http://kishoyohoshi.com/forums/topic/%e3%80%8c%e5%a0%b4%e3%80%8d%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6

    • #6102
      古久根 敦
      ゲスト

      ワラビさん,こんばんは.

      温度場の記述は結構答えにくい問題が多く,私も試験対策時に困ったことの一つです.

      ただし,幸い,大学では電気工学を専攻していたので,「場」というモノが何かを素直に気象に応用すればいいということに帰着したら,しっかりと解答できるようになっていきました.(電気工学では電場や磁場という概念があります.磁石をおけば,周りに影響を与え(=磁場),例えば鉄は磁石に引きつけられます)

      掲示板にあるように,場というのは静止画という一面もありますが,場の本質を捉えていません(すいません(^0^;)

      場とは,何かの物理量(例えば,気温,気圧,風,高度,渦度,鉛直流など)が連続的に周りに影響を与えている状況そのもののことを言います.もしくは,それらによって何かが影響を受けている状況のことを言います.

      気象予報士試験で「○○場の特徴を答えよ」という問題があったら,○○が何かに影響を与えているんだな,もしくは影響を受けているんだなとイメージして,「影響」は何かを考えると答えやすくなります.

      「等温線が北側に凸である」という温度場は,凸になっている領域が同緯度で見た場合に周辺よりも高温であるということと同じです.これはその領域が低圧部になることに影響を与えます.もしくは,低気圧の発生にも影響を与えます.そして気圧場が「低圧部になっている」となれば,周りからの空気の流入が強まって収束度合いを強め,上昇流を強化することに影響を与えていきます.

      「温度場の谷が、高度場の谷の前面にある」という温度場の特徴は,温度場の谷と高度場の谷の位置関係によって,寒気移流・暖気移流の強まりに影響を与えます.発達する低気圧では,高度場の谷が温度場の谷よりも先行していることによって寒気移流と暖気移流が強まります.また,上層の高度場や温度場と,下層の温度場との関係を問われたら,大気安定性への影響を考えることもあります.

      いずれにしても,温度場は降水に直接影響を与えるわけではありません!降水をもたらすだけの水蒸気量がどうなのかを考えないと降水を考えられません.

      以下は,個別の問題に対する解説ですが,多少難しいかも(^0^;)

      第46回実技2の問2(4)で「朝鮮半島東岸で等温線が北に凸になる」とありますが,これは図8の地上気圧48時間後予想で朝鮮半島東岸に低圧部(Lマーク,もしくは等圧線形状が袋状)があることにも関係していますが,トラフが近づいてきたら温度という要素はどう影響を受けたり与えたりしますか?ということを問われた問題です.つまり温度場のことです.「等温線が北に凸」に変わっていくという状況がある中でトラフが接近しているのですから,上昇流の強まりを警戒します.正確にはトラフ接近による正の渦度移流によっても上昇流は強化されます.その状況下で低圧部に渦が発生すれば,低気圧発生につながります.ちなみに,この問題では暖気移流によって北に凸になったというのは間違いです.図8の850hPaの朝鮮半島東岸付近の矢羽はすべて寒気移流です.また,この問題では48時間後予想までですが.28日には日本海に低気圧が解析され,北陸地方が影響を受けました.

      第43回実技2では、温度場は低気圧と関係があります.低気圧に影響与えているのが「等温線が北に凸」だからです.

      この2つの問題については,等温線が北に凸という表現になっていますが,あまり難しく考えず,「同緯度で周りよりも高温になっている」という表現でも点数もらえると思います.温度場の特徴が暖気核であれば,「周りよりも高温域となっている閉じた等温線がある」でも全然OKです.北に凸を言い換えて,「温度場の尾根となっている」でもいいのです.「・・・」で答えたことが何かに影響を与えることを説明できる記述であればいいわけです.

      第42回実技1では,地上に高気圧があります.温度場が高度場よりも先行しているので,地上の高気圧に影響を与えています.先に寒気が下層にいる中で高気圧となり,下層の高気圧性循環の南縁付近で暖湿気が流入しやすく,その後に上層の気圧の谷が近づくことで上層寒気,大気不安定となり,降水につながる可能性があります.温帯低気圧の発達には影響はしませんが,こういう影響の与え方もあるということで高度場と温度場の関係を問われたのだと思います.

      表現自体も大切ですが,まずは,○○場の特徴を聞かれたら,自分が解答したことが.問題で指定されているだろう現象や状況(上層トラフ,低気圧・低圧部,暖気核の消滅などなど)への影響の与え方や受け方を説明できているかを意識してみてくださいね.減点される解答は大抵論理が飛躍していたり,説明不足であったりします.

      • #6105
        北上大
        キーマスター

        さすがは古久根さんですね。
        ちょー難しいけど、これほど「場」の本質的な概念を分かりやすく表現した資料を見たことがありません。

        ぜひ、本文に掲載させてください。
        オネガイシマス m(_ _)m

        • #6111
          古久根 敦
          ゲスト

          北上大さん,お疲れ様です.

          いえいえ,私も間違えることありますし.小難しい細かいことを言ってしまうこともありますので,さらなるわかりやすさ,よろしくお願いいたします!

          場と言えば,書こうと思ってたけど,躊躇したことがありました(^0^;)

          リスペクトしたい素敵な人が放つオーラ.その人の魅力がありすぎて,その人が自然に放っているオーラによって,周りの人がどんどんその人に魅きつけられていく.これ,素敵な人が放つオーラという「場」です.
          素敵な人が放つオーラという場が,周りの人に影響を与え,その素敵な人に周りの人が近づいていくという影響.

          私の趣味でもあるお花のマクロ写真撮影.花は私を魅きつけるという「場」をもっています.物理的には説明はつかないけれど,花が本来もっている魅力度みたいな物理量があって,その物理量が周りに連続的に影響を与え続け,そうして,私みたいな人が魅きつけられていく.立派な「場」です.

          「場」というのは,気象とか物理とかでとやかく言われる,うるさくて厄介な難物ですが,身近なところにも,「場」はあるよっていうご紹介でした(^.^)

    • #6106
      ワラビ
      ゲスト

      こんにちは。Yoshikenさん。
      コメントを頂きましてありがとうございます。
      また、試験時の解答表現のアドバイスまで頂きありがとう
      ございました。
      何とか、第47回試験にて合格できるように
      頑張ります。

    • #6107
      ワラビ
      ゲスト

      こんにちは。古久根さん。
      詳細なコメントを頂きましてありがとうございます。
      古久根さんの解説を見て、今まであやふやだった
      考えがクリアになり、とても勉強になりました。
      ありがとうございました。
      何とか第47回試験にて合格できるよう頑張ります。

    • #6116
      古久根 敦
      ゲスト

      Yoshikenさん,こんにちは.

      「じょう乱のライフサイクルに応じた典型的な状況」について記述,気象予報士試験では,典型的な擾乱を扱うことがほとんどですから,これで「まずは」OKですね!擾乱に影響を与えている,もしくは受けている○○という気象要素(物理量)は何か?これを○○場の特徴と言っています.

      補足すると,擾乱のライフサイクルだけではなく,例えば,台風の進路について.基本場の特徴である高気圧性循環(太平洋高気圧,もしくは500hPa高度線など)が「場」の特徴になります.この場があるからこそ,台風の進路をおおむね予測できたりします.ライフサイクルだけが場が与える影響ではないということ.ちなみに,台風の進路については.基本場は時々刻々変化していくので,予測精度を上げるのはめちゃくちゃ難しくなります.

      ※気象予報士になってから学んでください的な補足:台風事例では特にですが,専門書などを読むと,よく「基本場」もしくは「一般流」に従って,というような解説文を目にします.基本場とは擾乱を抜きにした平常的な場.擾乱は基本場としてガッツリ構えているところで「偏差」を生じさせた奴のこと.基本場の何かの要因が影響させて,基本場に変化を与えてしまい,もともとの基本場の特徴から突出した状況(偏差)が生まれ,それが天気図などで可視化されてきたモノ,これが擾乱です.擾乱がなければこうだったのになぁと思う状況そのものが基本場です.

      さらに補足しますと・・・

      >私がとある模擬試験で温低化台風の温度場の特徴を書いたとき、「暖気核が崩れ東西で温度傾度が発生した」というような解答をしましたが、「寒気が移流」ということを書かないとダメだと言われました。

      たしかに私が採点者だとしたら点数は上げられないです(^0^;)

      なぜか?

      温低化が進む台風を題材にしたとき,暖気核が崩れ東西で温度傾度が発生したこと自体は温低化の定義の一つであって,温低化に影響を与えていることに関する記述になっていないからです.

      温低化を進めることに影響を与えているのは何かを問われているのです.なぜ暖気核が崩れたのか?そして,なぜ温度傾度が発生したのか?

      その理由を温度が影響を与えるという観点から考えなさいという意図に答えていないのです.

      第46回実技1では,西側から回り込む寒気移流によって暖気核構造が崩れていく事例でした.問3(4)○3が温度場に対する答えです.西側に寒気移流があるという温度場が温低圧に影響を与えています.一方,東側は温度場に対する答えではありません.また,問3(4)○2は温度分布の特徴を聞いただけであって,温低化に対して影響を与えている温度場の特徴ではありませんから,温度場について問われている問題ではありません.温低化そのものの特徴(定義に近い)です.

      ※これも気象予報士試験レベルを超える補足です(^0^;):○○場の特徴を書くときに,動きは書いてはだめという人もいますが,おそらく場という概念を理解できていないと思われます.非常に専門的なのですが,場の特徴を見る時,オイラー表現(ある地点の1点の変化を見る)とラグランジュ表現(動くモノに着目しその動きを追跡する)があります.寒気移流は「移流」という動きを表現していますが,オイラー表現です.ある1点で温度移流量がどうかということを見た表現だからです.正渦度域が東進してくる場となれば,ラグランジュ表現です.変化を知りたいので,場の変化に特徴があると考え,その変化が何かに影響を与えると説明できれば,正渦度域が東進してくる場という答え方も場合によって正解になります.

      しかし,場の概念って難しいっす(^0^;) 世の中には,「場」そのものをどう記述すればいいかなどを研究する「場の理論」という分野(非常に抽象的)がありますから,ここまでくると,超人です(^0^;)

      • #6117
        電球
        ゲスト

        古久根様、いつも詳しい解説をありがとうございます。
        今回のトピックス、非常に興味深く拝見しております。
        拙者も「場」については同じような勘違いと思い込み
        をしていたんだなあ・・・と痛感しました。

        > 場の特徴を見る時,オイラー表現(ある地点の1点の変化を見る)と
        > ラグランジュ表現(動くモノに着目しその動きを追跡する)があります.
        > 寒気移流は「移流」という動きを表現していますが,オイラー表現です.
        > ある1点で温度移流量がどうかということを見た表現だからです.
        > 正渦度域が東進してくる場となれば,ラグランジュ表現です.

        オイラー表現(≒微分法)とラグランジュ表現(≒追跡法)の仕分けで
        温度場の特徴で「寒気移流」と書く理由が、かなりスッキリしました。
        (数値計算ではラグランジュも微分してるのでしょうが・・・)
        また、これまで500hPa高層天気図・解析図をザックリと
        「大気中層平均」とみていましたが「基本場」の特徴を読み取るように、
        ということなのですね。目からうろこが5枚くらい、です。

    • #6118
      Yoshiken
      ゲスト

      古久根さん

      色々と補足、解説等ありがとうございます。
      ただただ「お~」と感心するばかりです。
      「場」というものがよくわかりました。
      私も電気工学の専攻であり電気絡みの会社に
      いながら、「電場」、「磁場」も大雑把に
      考えていました。恥ずかしい限りです。

      さて、関連で質問をさせてください。

      後半の第42回実技1のところです。
      日本海の降水について考えさせる問題、ずっとこの
      問題の出題意図がわかりませんでした。その理由は
      よくわかりました。

      「温度場が高度場よりも先行している
      ので,~中略~,降水につながる可能性が
      あります.」

      という部分です。

      そもそも、この日本海の小さい高気圧は東に
      位置する下層寒気層により形成されたもので
      しょうか。それとも別の要因(この時刻以前の
      総観規模のナニかとか・・・)なのでしょうか。

      500hPaの高度場の谷の先に温度場の谷が
      あるということは、この層の寒気層が
      東に、それよりも暖かい空気が西に
      位置することと思われますが、この
      2つの空気がどういう挙動をしているのか
      いまいちピンときません。(暖気が西から
      寒気の上に乗り上げ??)

      「その後に上層の気圧の谷が近づく
      ことで上層寒気・・」の「上層」
      とは、500hPaより上という
      解釈でよろしいのでしょうか。
      勝手な想像ですが、問題の
      図7上を見ると沿海州の「L」の
      字あたりから南西~西南西方向に
      何となくトラフがあるような気も
      するのですが・・・。

      話は戻りますが、
      「下層の高気圧性循環の南縁付近で
      暖湿気が流入・・・」とありますが、
      南縁の地上付近では概ね東風であり、
      何となく暖気が入りやすいという
      イメージがわきません。850hPaを
      見ると南西からの気流があるかな、と
      わかりますが、このことをさしている
      のでしょうか。

      細かい、というより理解不足の面が
      強いことによる質問ですが、教えて
      ください。

    • #6119
      古久根 敦
      ゲスト

      Yoshikenさん

      第42回実技1の問2(1)の弱い降水域の要因や大気の流れを知るためには,問題文にもある「700hPa湿潤域」がどうやって作られたかに帰着すると考えられます.やや乱暴ではありますが,イメージとしては,オホーツク海高気圧の影響で関東地方が曇天になることに類似しています.私がこの問題を解いたとき,あれ?地味に北高型のパターンが問われている?と感じました.

      下記URLでこの状況をプチ解説してみました.まずはイメージしていただけますか?

      https://www.evernote.com/shard/s34/sh/24955483-beee-4512-a829-b012a274e8d0/970af8157b282522

      私の解説が乱暴で申し訳ございません.ざっくりと南縁と言いましたが,高気圧の特に南西縁付近で,というのが正しいです.

    • #6121
      Yoshiken
      ゲスト

      古久根さん

      わざわざ図入りでご説明いただきありがとうございます。

      この図をみて思ったこと・・・。
      寒気が降水域の北西の上空から、北側を経由し、北東方向から
      地上に達している(らせん状に・・・)、ということなので
      しょうかね。らせん自体はキツくないと思いますが敢えて
      「らせん」と書きました。

      こんな解釈で合っているのかヒヤヒヤ・・・・・。

      本当にいつも懇切丁寧にご説明ありがとうございます。

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