丸囲み数字は一部の機種で文字化けになるので、ここでは[1][2]の表示をします。
目次
第47回気象予報士試験 一般知識問1
(a)は『正』
高層大気では、夏半球と冬半球と言う言葉で分けられるように、高度20km~60kmの領域では温度分布に明確な傾斜があります。
問題図では、左側が高温で右側が低温です。
この状態で、暖かい左側が夏半球、右側を冬半球と言います。
問題の図は1月ですから、南半球が夏半球なので左側、北半球が冬だから右側になります。
[A]の位置は左側なので夏半球である南であり南緯80°すなわち南極から10°なので、20°以内ですから「正」になります。
なお、高度60kmから上の層では温度勾配が逆になっています。
これについては、一般気象学【第2版】253ページをご覧ください。
(b)は『誤』
高温の理由は、オゾン層による紫外線吸収のためなので、断熱昇温ではありませんから「誤」です。
(c)は『誤』
図を見ると60km~70kmくらいですね。
そもそも、対流圏界面、成層圏界面、中間圏界面は気温が折れ曲がる極大または極小を指します。
(c)の高さでは、温度変化ラインが折れていないので、界面ではありません。
成層圏界面はおよそ50kmなので「誤」です。
わたしの歌手デビュー作品である『高層大気の絵描き歌』で覚えてください。
(d)は『誤』
中間圏界面を指しています。
中間圏界面の気温が極小になる主な理由は、紫外線吸収による発熱の変化によるものであり、放射冷却ではないので「誤」です。
したがって、正解は[3]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問2
アボガドロの法則「同温・同圧の下で、同体積の気体は、その種類に関係なくすべて同数の分子を含む。」
容器Aと容器Bは、1000hPaで300Kだから同温・同圧です。
容器Aと容器Bには、同数の分子が含まれています。
分圧の比率も、同様に分子数とみなすことが出来ます。
簡単のために、1000個と仮定してみましょう。
容器Aは平均分子量が29の乾燥空気が1000個、
容器Bは平均分子量が29の乾燥空気が(1000-29)個、分子量が18の水蒸気が29個、
とみなすことができます。
軽い分子(水蒸気)が含まれている容器Bの方が軽いのは当然なので、選択肢は[4][5]に限られます。
上の図のように計算をすると、1%軽いことが分かります。
しかし、電卓無しでこの計算をする気にはなりませんね。
(試験会場で発狂しそうになります)
そこで、軽くなる量だけを計算してみましょう。
分子量の差×軽い分子数=(29-18)×29個=319
これは29.000の約1%なので、選択肢[4]を選ぶことが出来ます。
正解は[4]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問3
[相対湿度]
相対湿度の変化は、エマグラムで読み取るのが分かりやすいです。
1000hPaで気温27℃、露点温度14℃の空気を想定します。
この時の相対湿度は次のように計算されます。
27℃の等飽和混合比線の値は23g/kgですから、この空気は23gの水蒸気を含むことが出来ます。
露点温度が14℃の等飽和混合比線の値は10g/kgですから、実際には10gの水蒸気が存在しています。
1000hPaでの相対湿度は、10/23=43%です。
この空気塊を、断熱的に910hPaまで持ち上げます。
気温は、乾燥断熱線に沿って低下し、等飽和混合比は15g/kgとなり、含むことが出来る水蒸気量が少なくなります。
露点温度は、10gの等飽和混合比線に沿って低下し、水蒸気量は10gで変わりません。
910hPaでの相対湿度は、10/15=67%です。
すなわち、相対湿度が『増加する』ことが確認できました。
[水蒸気密度]
水蒸気密度は絶対湿度とも呼ばれ、g/m3で表します。
一定の体積中の水蒸気量(重さ)です。
水蒸気を含んだ空気塊を断熱的に持ち上げると、空気は減圧によって膨らみます。
体積膨張しても水蒸気量(重さ)は変化しませんから、比率は小さくなります。
すなわち、水蒸気密度が『減少する』ことが確認できました。
[比湿]
比湿は、空気塊の質量とその中の水蒸気の質量の比率で、単位ははg/kgです。
比湿=(水蒸気の質量)/(空気塊の質量)
=(水蒸気)/(乾燥空気+水蒸気)
空気塊を上空に上昇させたときに、乾燥空気も水蒸気も、それぞれの質量は変化しません。
すなわち、比湿が『一定である』ことが確認できました。
正解は[2]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問4
大気中の水平風と言えば、地衡風のことでしょう。
日本付近の地衡風と言えば、偏西風を想像すれば考えやすいと思います。
問題文から「左手の気圧が低い向きに立つ」とは、どちら向きか?
語呂合わせ呪文でこんな文を作っています。
『偏西風、右手に赤道温かい』
さらに『赤道は温かいから界面高い』に続きます。
結局、南側の気圧が高いことを意味しているのです。
気圧が低いのが左手側と言うことは、左手側は北。
つまり東向きに立っていることになります。
(a)は上図の通り「背面」になります。
(b)はコリオリの力が反対側に作用するので「では逆」になります。
(c)は悩むことなく「地衡風」を選んでください。
「静力学平衡」は、大気の圧力とは上層の空気の重さを支えている関係を表した状態を指します。
正解は[3]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問5
(a)は『誤』
氷粒子の質量が大きくなると落下速度が大きくなり、衝突機会が増加するので、単位時間あたりの質量増加量は増加します。
(b)は『誤』
氷粒子同士が付着して成長する速度は、高温ほど大きい。
高温といっても、氷粒子の話なので-5℃~0℃くらいのこと。
以下、一般気象学【第2版】98ページから抜粋
氷粒子の落下速度が違うと氷粒子同士が衝突し付着して氷粒子の質量が増加することがある。 氷粒子の落下速度はその形や大きさによって違う。 -15℃付近では樹枝状結晶が成長する温度なので、-10~-15℃で大きな雪片が観測される。付着し合う割合はまた温度による。温度が高くなるにつれ、その割合は増大する。殊に-5℃より高い温度では付着する確率が高く大きな雪片ができる。
(c)は『誤』
大気が湿ってるほど雨になりやすいのです。
語呂合わせ呪文『4度以下、湿度が高けりゃびしょ濡れで、乾燥してれば雪が降る。』を参照してください。
(d)は『正』
雲のなかの温度がどこも0℃より高く氷粒を含んでいない雲を「暖かい雲」と言います。
この暖かい雲から降る雨が「暖かい雨」(warm rain)です。
暖かい雨は熱帯地方に多く、日本付近の雨の多くは問題文通り「冷たい雨」です。
正解は[5]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問6
(a)は『誤』
アルゴンは赤外放射をあまり吸収しません。
地球からの長波放射を最も多く吸収している気体は水蒸気です。
(b)は『誤』
窓領域とは水蒸気等による吸収が少ない波長帯なので、問題文と逆です。
(c)は『誤』
雲頂高度が高くなるほど気温が低下します。
気温が低下すれば赤外放射は少なくなるので問題文は誤りです。
正解は[5]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問7
北半球における傾度風は、上図のような力のバランスになっています。
低気圧においては、傾度風の強さは気圧傾度力、またはコリオリ力と遠心力の和に比例します。
高気圧においては、傾度風の強さはコリオリ力、または気圧傾度力と遠心力の和に比例します。
すなわち、(c)のみが『正』で、(a)と(b)は『誤』です。
蛇足になりますが
(a)は『誤』
風速が同じであれば、半径が小さいAの遠心力が強くなりますから、同じではありません。
(c)は『正』
(b)は『誤』
(a)は『誤』より 遠心力A > 遠心力B
(c)は『正』より コリオリ力A=コリオリ力B
正確には『=』ではなく比例するなのですが、便宜的に等しくします。
コリオリ力A=気圧傾度力A+遠心力A
コリオリ力B=気圧傾度力B+遠心力B
だから、
気圧傾度力A+遠心力A=気圧傾度力B+遠心力B
(a)より 遠心力A > 遠心力B だから、
当然、気圧傾度力A < 気圧傾度力B となります。
だから、気圧傾度力Aが大きいとした選択肢(b)は『誤』です。
正解は[4]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問8
(a)は『正』
水蒸気の凝結による熱エネルギーの放出で発達する典型的な例が台風(熱帯低気圧)です。
温帯低気圧の主なエネルギー源は傾圧大気に伴う位置エネルギーですから、水蒸気の凝結がなくても発達します。
(b)は『誤』
温帯低気圧のエネルギー源となる傾圧不安定大気は、南北の温度差によって生じます。
等高度面だけではなく、等圧面で見ても南北の温度傾度はあります。
例えば、上の図は第45回実技2の図4から引用した、ある年の5月20日の850hPaの天気図ですが、低気圧中心の南北方向に温度傾度があることが分かります。
850hPa面は等圧面ですから「等圧面でみると温度傾度がほとんどない」の問題文は『誤』です。
(c)は『誤』
上図に示すように、高低気圧は2000kmを超える大規模です。
実際の天気図をイメージすれば分かりやすいでしょう。
下の図は2017年4月の天気図です。
関東の南東海上にある低気圧は、特別大きいというわけではありませんが、緯度10°間の距離1,111kmと比較してみると、1,000km以下の現象とは言えないことが分かると思います。
正解は[3]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問9
(a)は『正』
一般気象学【第2版】 217ページの下の方にこんな記載があります。
気団性雷雨と違い組織化されたマルチセル型雷雨は一般風の鉛直シアが強い時に発生する傾向がある。
(b)は『正』
一般気象学【第2版】 210ページの下段に次のような物語が書かれています。
そして上昇流の消滅が減衰期の始まりである。つまり下層の空気が上昇し水蒸気が凝結するさいに放出する凝結熱によって浮力が出でき上昇流を維持していたのに、いまや中層から下層にかけては下降流となったので、いわば糧道を絶たれ降水セルは死滅するしかないのである。こうして雲内はすべ下降流となり、残っていた雨粒も氷粒子も弱いシトシト雨として降るか空中で蒸発するかして、雲が消える。
(c)は『誤』
積乱雲の寿命は普通30分から60分です。
一般気象学【第2版】 208ページ中段より。
「10分から20分程度」という問題文は『誤』です
(d)は『誤』
問題文の前半の「下降流が上昇流を遮らない構造になっているため」というところが正しいです。
しかし後半の「個々の積乱雲の寿命が大幅に伸びる」わけではありません。
積乱雲のセルが世代交代を経ながらマルチセルとして長い寿命を維持しますが、個々の積乱雲の寿命が伸びるわけではありません。
正解は[2]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問10
(a)は『低緯度』
オゾンの生成量は、紫外線の強さと面積によって決まります。
低緯度地域と高緯度地域を比較してみましょう。
低緯度として赤道上空、高緯度は北極圏をイメージしてみます。
紫外線の強さすなわち太陽直射日光の強さは照射角が大きい赤道が強いし、面積も点である北極よりも地球の周りを一周してる赤道が大きいです。
だから、オゾンの生成量は低緯度の方が多いのです。
(b)は『ブリューワー・ドブソン循環』
成層圏下部で低緯度から極地方への風の流れは、ブリューワー・ドブソン循環です。
一般気象学【第2版】図9.4に着色したものです。
ハドレー循環は、赤道付近で上昇した空気が緯度30度付近まで北上(南半球では「南下」)した後、下降して地表付近を南下(南半球では「北上」)して赤道に戻る大気圏内の循環のことです。
(c)は『高緯度』
解説の必要もなく、(a)が決まれば、文脈から反対側であることが分かるはずです。
(d)は『フロン』
気象予報士の試験というよりも、一般常識ですね。
二酸化炭素はオゾン層を破壊しません。
正解は[1]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問11
(a)は『誤』
水蒸気の効果が小さいなんてとんでもない。
雲による長波吸収は、水蒸気の仕事です。
(b)は『誤』
濃度が高いので温室効果の総量は二酸化炭素が多いですが、同じ分子数でみるとメタンのほうが大きな効果を持っています。
(c)は『誤』
二酸化炭素の増減は、植物の光合成の量に左右されます。
北半球で植物の活動が活発になる夏に極小になり、春に極大となります。
図は、気象庁サイトより。
(d)は『正』
人間の活動が盛んな北半球の二酸化炭素濃度が高くなっています。
正解は[5]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問12
(a)は『正』
気象業務法第19条の「範囲」は「区域」を含みます。
(変更認可)第十九条 第十七条第一項の規定により許可を受けた者が同条第二項の予報業務の目的又は範囲を変更しようとするときは、気象庁長官の認可を受けなければならない。
(b)は『誤』
気象業務法第22条で「届け出」と定められていますので、「認可」の必要はありません。
(予報業務の休廃止)
第二十二条 第十七条の規定により許可を受けた者が予報業務の全部又は一部を休止し、又は廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。
(c)は『正』
気象業務法第41条で定める「報告事項」に含まれます。
(報告及び検査)
第四十一条 気象庁長官は、この法律の施行に必要な限度において、第十七条第一項若しくは第二十六条第一項の規定により許可を受けた者又は第七条第一項の船舶に対し、それらの行う気象業務に関し、報告させることができる。
正解は[2]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問13
(a)は『誤』
気象予報士の配置は専任なので、勝手な移動は出来ません。
届けを出せばOKです。
(b)は『誤』
このような規定はありません。
(c)は『正』
文章通りで正しいです。
正解は[4]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問14
(a)は『正』
「気象業務法第6条2ニ その成果を災害の防止に利用するための気象の観測」に該当します。
(b)は『正』
「気象業務法第6条2一 その成果を発表するための気象の観測」に該当します。
(c)は『正』
(d)は『正』
正解は[1]です。
第47回気象予報士試験 一般知識問15
(a)は『正』
気象業務法
第十五条6 第一項の通知を受けた日本放送協会の機関は、直ちにその通知された事項の放送をしなければならない。
(b)は『正』
災害対策基本法
第五十五条 都道府県知事は、法令の規定により、気象庁その他の国の機関から災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、又は自ら災害に関する警報をしたときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき措置について、関係指定地方行政機関の長、指定地方公共機関、市町村長その他の関係者に対し、必要な通知又は要請をするものとする。
(c)は『正』
災害対策基本法
第六十条 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる。
正解は[1]です。